詩集 孔雀船

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  • サイズ 文庫判/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003103012
  • Cコード C0076

出版社内容情報

明治詩壇における「文庫派」の異彩伊良子清白の詩集『孔雀船』初版の覆刻である.白玉爛星の詩什長短十八篇,絢爛にして雄勁,ギリシャ芸術の作品にも比すべき独自の詩風をこの一巻に昇華する.このような清純なリリシズムとたぐいまれなフォルムの美と力とは,年を経ていよいよ新鮮である. (解説 中山省三郎)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

新地学@児童書病発動中

100
日本語の中にある美しさを最大限に引き出した詩集。非常にお勧め。定型のリズムが軽やかで、作者が胸に抱いている叙情が胸の中にすうっと染み込んでくる。ちょうど泉鏡花の小説を詩にした趣き。「蓆戸に/秋風吹いて/河添の旅籠屋さびし/哀れなる旅の男は/夕暮の空を眺めて/いと低く歌ひはじめぬ」「漂白」のこの冒頭の部分を読むと、日本人だったら旅情と感傷の両方が胸の中に湧き上がってくるのではないだろうか。一番好きな詩は「夏日孔雀賦」だった。孔雀のあの華麗な姿を描きながら、美の中にある儚さを表現して忘れがたい印象を残す。 2017/01/01

三柴ゆよし

18
刊行当時(明治39年)にあっても「古怪」と評されたほどの、これは堂々たるアナクロニズムである。極限まで彫琢された天上の言語によりうたわれるのは、漂白とそれにともなう懐郷の念にとどまらない。一部の詩、たとえば「旅行く人に」「月光日光」「鬼の語」……などにおいては、鬼哭啾々たる凄絶の美が生々しく立ち上がってくる。鬼は出るわ蛇は出るわ、ボードレールをすっ飛ばして、ほとんど李賀あたりを髣髴させる世界観である。個人的にはこれらの詩群のほうがタイプであり、上述した3篇に加えて、「夏日孔雀賦」が特に鮮烈な印象を残した。2021/02/24

スミス市松

15
冒頭の「漂泊」から引き込まれ、そのあと相次いで旅の詩が続いたせいか、どこか異国での旅の途上にあって詩を読んでいるかのようだった。次第に、かの地の孤独にあって母国語の音とリズムとシンボルが繰り出す風景を切実に欲する感覚を思い知った。抒情、幻想、展開、韻律。それらが絶妙の言語感覚に支えられ調和した極めて完成度の高い詩集。「この詩風たるや、人間すべての想像生活の展開に於て見られる普遍性ある必至のもので、この詩情に對する憧憬と要求は如何に世界と時代が變化しても永代不易である」という日夏耿之介の評価の通りである。2020/10/18

瓜坊

15
文語の音の心地好さ。色とりどりの映す世界の中で、モチーフは西洋的で官能と死を呼び起こすけれど、日本語の美しさに酔える。顔料は日本画の岩絵具でモローを描いたよう。五五調、七七調、七五調、五七調。それぞれで実験されているようで、リズムの違いはこうも風景と距離が違うのか。と思わされる。音読み漢語の割合は少なくてたまに遭遇するのがアクセント。「華燭賦」は唯一転調だらけで圧巻。七六・四六・五四・七四..万葉やら記紀歌謡の頃のリズムはこうだったかと想いを馳せさせる雄大な音調。「不開の間」にもあるが四音は締まって良い。2017/02/13

みどり

11
夏に鳥羽に訪れた時、江戸川乱歩館ついでに全く知らない”伊良子清白の家”にも立ち寄った。無造作に置かれたモスグリーンのハードカバーの本を開くと「おとめの胸にさき きざはしを のぼるか 諸扉 さと開く」というフレーズに目を奪われた。意味はわからなかった。一目見ただけなのに得体の知れない爽やかな後味を残され、結局家に帰ってこの本を調べることになる。伊良子清白の詩は限界まで磨き上げられた言葉で成されている気がする。端正なつくりで声に出すと気持ちいい。この本を読みながら寝落ちした夜は最高だった。すごくお気に入り。2017/01/25

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