岩波文庫
草迷宮

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  • サイズ 文庫判/ページ数 208p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003102749
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

幼な子の昔,亡き母が唄ってくれた手毬唄.耳底に残るあの懐かしい唄がもう一度聞きたい.母への憧憬を胸に唄を捜し求めて彷徨する青年がたどりついたのは,妖怪に護られた美女の棲む荒屋敷だった.毬つき唄を主軸に語りの時間・空間が重層して,鏡花ならではの物語の迷宮世界が顕現する. (解説 種村季弘)

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

新地学@児童書病発動中

123
この小説は主語と述語のはっきりしない文章で書かれており、読みにくい。作中の言葉は古めかしいものが多く、理解が難しい。物語の構造も入り組んでいて、注意深く読まないとプロットが掴めない。欠点を書き連ねてしまったが、それでもこの小説は読者を惹きつけてやまない。「草迷宮」という題が示す通り、迷宮の中に読者を引きずり込み、翻弄する。迷宮の中心にあるのは亡き母が歌う手毬歌だ。母と手毬歌という確固とした美しいイメージがこの小説を支配しており、読者を酩酊させる。言葉の力によりこの世ならざる美を召喚する鏡花の筆に痺れた。2017/12/01

ヴェネツィア

112
解説の種村季弘も指摘しているが、この物語は明らかに広島県三次市に伝わる『稲生物怪録』を典拠にしたものである。『稲生物怪録』は寛延年間(18世紀半ば)のもので、絵巻を含め何種類ものヴァージョンがある。『草迷宮』では、霞川のふもとの秋谷の旧別邸を舞台に、目撃者たる小次郎法師たちをも巻き込んで、様々な怪異が現出するが、その中心にいるのは旅の少年、明である。物語の最後に妖怪の頭領、悪左衛門(稲生では五郎左衛門)が登場するが、その後に妖艶なあやかしの美女の登場するところは原典にはなく、ここがまさに鏡花の真骨頂か。2013/02/16

Aya Murakami

92
図書館本 文語体で難しい。慣れるのに時間がかかるかもしれない。しかし世界観はきれいだなぁ。サトイモの葉っぱのお面の子供も無邪気な不気味さを演出していますし…。 2018/09/11

Willie the Wildcat

90
母の面影。年齢を重ねることで、少なからず美化。具現化の手掛かりは、手毬と童歌『とおりゃんせ』。子産石で授かり、大崩壊海岸の事故で喪失し、その怨念が鶴谷家の5つの葬礼となる。故の”秋谷明神の細道”、と強引に紐づけてみる。天から地への落し物、手毬。親子の縁と、母の心。兎が先導し、桔梗刈萱や萩女郎花などが手毬をつく件は、再会と別れの宴という感。思い浮かべた故郷の涅槃絵と、耳に流れる『とおりゃんせ』。風、緑、雲を感じる最後の場面は、”成仏”を暗喩か。2019/03/19

優希

76
豊饒で妖艶な世界が広がっていました。耳に残る母親の唄と憧憬で彷徨う青年が妖しの世界に足を踏み入れていく様子に胸が騒ぎました。主題にあるのは鞠つき唄であり、その唄の調べが余計妖しさと耽美の世界に浸らせてくれます。何層にも重なる語りと時間、そして空間が美しいです。夢が現に変わっていく色合いが幻想の色彩を帯びていき、言葉の海に浸り続けたいと思わされる作品でした。恐ろしい快楽の淫靡な世界に背筋を凍らせながらも酔い仕入れてしまう世界にただぼんやりさせられるばかりです。2014/08/25

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