出版社内容情報
明治三十一年に発表された表題作は,『古今集』を和歌の聖典としてきた千年近い歴史がもつ価値観を転倒させた衝撃的な歌論であった.万葉の歌風を重んじ,現実写生の原理を究明した子規の歌論は,全篇に和歌改革への情熱が漲り,今なお我々を打つ.「あきまろに答ふ」「人々に答ふ」「曙覧の歌」「歌話」を併収. (解説 土屋文明)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
26
歌よみに与ふる書 「仰の如く近来和歌は一向に振ひ不申候。」 再び歌よみに与ふる書 「貫之は下手な歌よみにて「古今集」はくだらぬ集に有之候。」 三たび歌よみに与ふる書 「前略。歌よみの如く馬鹿な、のんきなものは、またと無之候。」 最初の一文だけ読んでいっても、抱腹絶倒。 解説を土屋文明が書いている。とても勉強になります。 関連文献を拝読したら、また読みます。今昔秀歌百撰http://researchmap.jp/jo98dmxoy-1787586/#_1787586にも正岡子規の詩と解説あります。2013/04/21
nao1
23
私が今まで読んだ著者のうち、悪口が上手なのは、内田百けんと、正岡子規^^正岡子規は韻文に精通しているだけあって、悪口のリズムが抜群です。百人一首にある「・・・初霜の置きまどはせる白菊の花」には「初霜が置いた位で白菊が見えなくなる気遣無之候。趣向嘘なれば趣も糸瓜も有之不申」とバッサリ(笑)。深い見識と愛がある悪口は読んでいて気持ちがよい。「古今集」がくだらぬと言われるとそんなにくだらないなら読んでみたいと思ったほど。「坂の上の雲」とあわせて読むと、子規が仲間を集めて歌論をかわしている姿が浮かぶようです。2016/01/18
双海(ふたみ)
15
腹が立って途中で放り出した本。2014/07/04
花乃雪音
12
歌よみへの指南書と思っていたら歌よみの常識に対する批判が主だった。歌よみにとっては常識であろう知識が不足している我が身には文中からその常識を読み取るしかなかった。歌人(本書でいう歌よみと思われる)の中には短歌が世界一優れた歌であると標榜する者がいるが俳句、漢詩、西洋の詩などに詳しくないのになぜ比較することができるのかという疑問というか皮肉が述べられている、これには高い汎用性を感じた。一方、数年前まで崇拝していた『古今集』および紀貫之を今そうではなくなったからとこき下ろすのはいただけなかった。2022/02/06
oz
11
初読。正岡子規(1867-1902)は古今集を範とする和歌世界から脱し近代短歌を確立させたとされる。本書の論点は、激動する現代社会を表現するためには、古来の和歌の韻律でなく、迫りたる調べを用いるべきであるということ。そのためには、雅語のみならず俗語や外来語を織り交ぜての作歌が推奨され、これらを体現する理論として写生が立ち現れた。また、万葉集の雀躍とした日本語の調べを範とした。万葉の日本語は優美さに加え、川の瀬音や木の葉の擦れ合う音を外来語(漢語)を導入してまで表さんとした力強い言語的営為でもあった。2016/09/16