出版社内容情報
悲劇の中宮建礼門院に仕えて人の世の浮き沈みを目のあたりにし,自らは華やかな平安末期の宮廷にあって平家の公達らとの恋に心を燃やした女流歌人の情感あふれる歌集.長文の詞書と歌とが一体となり,一種の歌物語とも歌日記ともなっている.他にこの集と共通する世界や人物を描いた『平家公達草紙』を三種集めて併せ収めた.
内容説明
悲劇の中宮建礼門院に仕えて人の世の浮き沈みを目のあたりにし、自らは華やかな平安末期の宮廷にあって平家の公達らとの恋に心を燃やした女流歌人の情感あふれる歌集。長文の詞書と歌が一体となり一種の歌物語とも歌日記ともなっている。他にこの集と共通する世界や人物を描いた『平家公達草紙』を三種集めて併せ収めた。
目次
建礼門院右京大夫集
平家公達草紙
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
276
研究者の見解は知らないのだが、私の直感では上巻と下巻の間に大きな断絶があるように思う。上巻は前半は承安4年(1174年)の正月(作者は17,8歳か)に起筆されており、全体に華やかで色彩に富む筆致となっている。また、そこにはまだ安泰であった時代の資盛との恋がほのめかされてもいる。一方の下巻は平家一門が滅ぼされ、さらにそのずっと後年、彼女の老齢の頃にかつての時代が回想されているのである。もちろん、この集を意味あるものにしているのは下巻であることは言うまでもない。中でも集中の白眉は、筆者が大原の寂光院に⇒2017/09/20
新地学@児童書病発動中
113
今年読んだ日本語の本の中では、これが一番良かった。日本語で書かれた最も美しい本の一つだと思う。私のように詩が好きな者にとっては、たまらない内容だった。平安から鎌倉への動乱の時代を生きた一人の女性の歌と、感慨が一つにまとめられた書。歌には透きとおるような美しさがある。ちょうど月明りに照らされた桜の花びらのような美しさだ。この世の儚さを痛いほど自覚しながら、それでもこの世の美しさを歌に詠まずにはいられないという作者の秘めた意志を感じた。多くの歌が収録されているのだが、圧巻は終盤の七夕の連作で、(続きます)2017/10/19
syaori
51
作者は高倉帝の中宮徳子(建礼門院)に仕えた人物で、本書は中宮への出仕から源平の争乱を経て、後年の後鳥羽院への再出仕までの「なにとなくわすれがたくおぼゆること」を綴ったもの。長い詞書が特徴で、歌物語のようにも随想のようにも読めるところがとても好き。中心となるのは平家の公達資盛との恋で、騒乱の渦中に恋人と親しい人々の死を経験し「とかく言ひても」「心もことばもおよばれず」という悲劇に直面した女性が、それを「さめやらぬ夢」として抱え、生き、この美しい作品に結晶させたことにいつもとても励まされるような思いがします。2020/03/30
双海(ふたみ)
13
「うつり香もおつる涙にすゝがれて かたみにすべき色だにもなし」2014/02/27
シンドバッド
4
一人の女性にとっての、平家の滅亡の意味をしるしている。 運命の変化を冒頭のことば、「夢ともまぼりろしとも」でいうが、正に現実そのもの。思い出に執着するあたりが、読みどころ。