出版社内容情報
自死遺族の「その後」をタブー視する国――。自死はなぜ、日本社会において忌み嫌われるのか。国際的動向を取り入れ、自死と向き合う。
内容説明
日本が“自殺大国”と言われるようになって久しい。その一方で、自死遺族の「その後」はタブー視され続けてきた。自死はなぜ、日本社会においてここまで隠され、遠ざけられるのか。あらゆる取材によって、その社会的背景が見えてきた。国内に加え、国際的動向も取り入れた渾身のルポルタージュ。
目次
第1章 高額補償が追い込む遺族たち
第2章 自死遺族が「人」としていられる場所
第3章 自死を科学する国になれるか
第4章 耳を傾け、「生きる」を選ばせる社会へ
あとがき―オーストラリア国際シンポジウムを振り返って
著者等紹介
杉山春[スギヤマハル]
1958年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。雑誌編集者を経て、ルポライター。著書に、『ネグレクト 育児放棄―真奈ちゃんはなぜ死んだか』(小学館、第11回小学館ノンフィクション大賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆう。
36
僕は知人を二人自死でなくしています。そして僕自身も希死念慮が強い人間でした。だからこの本は読むのが辛かった。自死に対するスティグマはあると思います。人の死すら自己責任にする社会が存在すると思います。それで残された者は苦しみます。自死した人は死へを追いやられます。だから僕は自死は社会的に殺された人という感覚を持っています。この本の中で不登校対策が学校への登校をゴールにしているが登校した人で自死があることも指摘されていました。自分の仕事のことを深く考えさせられました。誰もが繋がり生きやすい社会を築きたいです。2018/05/02
ちさと
27
遺族の抱える自責の思いや他者からのスティグマへの恥の気持ちの仕組みの解明から始まり、自死の決行に至る心理、自殺予防のための介入ポイントなど、網羅的に知識を提供しています。日本で最も自殺率が高かったのは高度経済成長時代。逆に戦時中など人を殺すのに忙しい時には自殺率は下がっている。所属感の重要性をいまいちど見直すべきだと感じた。余談ですが「自死はいけない」といった論理的判断は、無数の例外や但し書きを考えなければいけないという気持ちも、個人的にはまだ残る。2019/01/19
ひろか
12
良い本です。杉山さんにはもっと深めていってほしいです。2017/08/07
うがり
8
人は生きたいと思うし、死にたいと思う。その人自身が思うそういう気持ちは否定されない方がいい。しかし周りがそれに無知であると、その人やその家族、友達を追いつめていくことになる。そうならないように僕たちはせめて知ることが必要となってくる。他者からのスティグマが遺族を苦しめていくことや自死からの支援など知らないことがたくさんあった。読めば読むほど難しいことであると思うが、根本的に支えられなくても、ちょっとでも苦しんでる(苦しんだ)人が息を吸いやすい世界になれるようにしたいな。2019/08/22
イチイ
5
自死は追い詰められそれ以外の選択肢がなくなった結果として起こるものであり、自死念慮者への支援とは選択の自由を拡大するものだという視点から書かれたルポルタージュ。タブーやスティグマ、支援制度の不十分さなど自死の社会的側面を重視し自死遺族に求められる補償、自死遺族に対する否定的視点の存在、そしてそのような現状を変えるための当事者や研究者の活動を紹介している。近年、娯楽の対象となった心理的瑕疵物件が遺族に与える経済的、心理的負担を描いているのは重要だろう。ただし言及された文献の書誌情報がないのは重大な欠点。2018/09/14