出版社内容情報
カモノハシ―この鳥とも獣とも魚ともつかない生物をもしもカントが見ていたら? 『記号論』から20年余,ネコ,ウマ,椅子など日常の事物を素材に,数々の思考実験を繰り広げながら,人間の認識メカニズムに挑む.(全2冊)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
5
本書はまず「最も不自然な、常識が決して提起することのない問題」と言われてきたessere(伊:存在)に関わる形而上学的な根本問題を提示する。確かに、存在とは何かと問う以前に「ある」essereを、問う者から分離して対象化するのは不可能だ。著者は、そこに循環論法を見出して存在論を捉え直すハイデガーと異なり、認識論の側で未知を前にした論証として記号論的に「ある」へと挑む。すると、記号論の創始者パースが熟読したカントのカテゴリー論の背後に、未知なるものの論証を発展させてきた中世のスコラ哲学が浮かび上がってくる。2019/01/24