出版社内容情報
閉塞感漂う日本社会をいかに改革するか.金融・財政・教育の全域を覆う官僚主導のシステムを撃砕し,公共性の回復により新しい質の豊かさを構想する本書は,未来へのほのかな光を求める人々に大きな励ましを与えよう.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
24
15年前の本。先生がお亡くなりになり、改めて先生の本を探してみた。表紙見返しによると、当時から何も日本のしくみは変わっていないことに愕然とする。相変わらず官僚主導だから。住民がゆたかな、人間的な生活をいとなむことを可能にしていた魅力的な町並みがいたるところでこわされてしまった(ⅵ頁)ことに先生は心を痛めていた。社会的共通資本は、一国ないし特定地域が、ゆたかな経済生活をいとなみ、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを可能にするような社会的装置(13頁)。 2014/10/07
おせきはん
5
経済成長の一方で公害、環境破壊、農業の衰退、学校教育などの問題が生じてきたことについて、官僚専権による制度づくりの点から論じています。現在も、本書が出版された1999年と同様の課題を抱えており、書かれている内容は古い話とは感じませんでした。格差問題について宇沢先生はどのようにお考えになられるのか、今となってはできませんが、お考えをお聞きしてみたいとも思いました。2016/04/26
Hiroki Nishizumi
3
書き下ろしとあったが、大部分はこれまでの著書のエッセンス。制度主義、成田空港、水俣病、コモンズ、学校教育、、、未読にあたろう。2017/04/06
Jun Kanno
1
官僚専権を超えて、という副タイトル通り痛烈な官僚批判を伴って、社会問題に対して官僚・省庁がどういう態度で処理してきたかを浮き彫りにする。エピローグで述べられているように、本書で紹介されていることは氷山の一角なのだと思うと、この腐敗が進んだ官僚国家にどこからメスが入れられるのか一瞬暗い気持ちになるが、シェアハウスやタイニーハウスなどの大量消費を良しとしないライフスタイルが若い人の間で普及していることが一縷の光に感じる。あとはマクロ視点で、大前研一氏が育てた道州制の動きが加速することを期待したい。2014/11/16