内容説明
鬼才ポン・ジュノを読み解く一冊
映画『パラサイト 半地下の家族』で64年ぶりに仏カンヌ国際映画際パルムドールと米アカデミー賞ダブル受賞を達成した韓国人映画監督ポン・ジュノ。「第一次オタク世代」は、いかにして、「世界の名監督」へと変貌を遂げたのか?
『グエムル 漢江の怪物』『母なる証明』『殺人の追憶』などの作品、生い立ち、小説家で北朝鮮に渡った祖父・朴泰遠やデザイナーの父から受け継いだDNA、韓国映画産業の現在地など、さまざまな観点から活躍を読み解く。
目次
第1章 『パラサイト』の真実
第2章 ポン・ジュノの正体
第3章 ポン・ジュノのDNA
第4章 韓国映画産業の現在
補章 『パラサイト』備忘録
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おかむら
32
パラサイトのポンジュノ監督の研究本。映画論よりも監督のファミリーヒストリーが興味深い。母方の祖父が、戦前は日本に留学してモダニズム文学青年だったのが戦後北朝鮮に行って歴史小説家となる(越北作家というそう)。あと後半、パラサイトの配給会社、CJエンタテイメントの世界戦略の章がいちばん面白い。CJのシネコンはベトナムやトルコに進出しててシェアも4割とかなんとか。韓国の映画業界のこともっと知りたくなったわ。2020/07/28
柴多知彦@cinema365
1
著者は毎日新聞の元ソウル支局長。4章構成になっており、1章は『パラサイト』考察、2章はポン・ジュノの生い立ちとフィルモグラフィ。北朝鮮に亡命した小説家の祖父、パク・テウォンについて書かれた3章と、『パラサイト』を配給したCJエンタテインメントによる東アジアへの文化的侵略を語った4章は、知らない情報も多く、蒙を啓かれること大だった。 『殺人の追憶』の演出に今村昌平『復讐するは我にあり』を参考にしたとの指摘も初耳だったな。2020/10/16
dubstepwasted
1
ポン・ジュノを彼の文化的背景、人間関係、DNA、韓国のエンタメビジネス等から照射した本。ポン・ジュノの祖父パク・テウォンの二家族(ポン・ジュノに繋がる韓国の家族、越北してから作った北朝鮮の家族)という過去。アジアを中心に韓国の文化植民地を形成することを夢見るCJエンターテイメントの「文化帝国構想」。ポン・ジュノを支え導く夫人チョン・ソンヨンと資本家(韓国映画のゴッドマザー)ミッキー・リー。階段映画「下女」を継承しつつ「グエムル」の対となる作品として生まれた「パラサイト」、そこに描かれた貧困の虚構性、など。2020/08/02
光太郎
0
面白い2021/01/11
tekka
0
「2019年の閉塞状況にあって、半地下のキム一家が金持ちパク一家と同様な『夫婦、子供2人の核家族』であるという設定は、現実的な社会認識とはかなりの距離がある。それゆえに韓国の観客はポン・ジュノ作の『黒いおとぎ話』として、『パラサイト』を受け止めることができた。日本をはじめ外国の観客たちも、韓国という異国の素材をもとにした悲喜劇を余裕をもって鑑賞した。」2020/08/10