内容説明
1989年のさまざまな革命、9.11の犠牲、イラク戦争、深まる中東の危機、そして、アメリカ共和国の没落――。現実が変化し事態が展開していくにつれて、ジャットは、時代の潮流に逆らって進み、彼の知力のすべてをもって、思想という船の向かう先を、異なる方向に向けるための戦いを繰り広げた。
本書は、飽くことなく事実と真実を追究した知識人、トニー・ジャットの魂の軌跡である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
風に吹かれて
18
「1989年のさまざまな革命、9.11の犠牲、イラク戦争、深まる中東の危機、そして、アメリカ共和国の没落」などに関わる28編の論稿を収める。トニー・ジャットは2010年逝去。『ニューヨーク・レヴュー・オブ・ブックス』誌などに寄稿。本書のエッセイのいくつかは書評を行いながらアメリカを中心に国際政治を論じている。批判的書評を行えるのは、それだけ人間にとって社会はどうあるべきかという問いを考え続けているからだろうし、それが論争を生み議論を深めることにもつながる。➡2019/12/20
スプリント
7
歴史学者のエッセイと書評をまとめた本です。一本一本は短いので要点が明確で読みやすいです。2019/07/07
人生ゴルディアス
7
イスラエルがその存立根拠にホロコーストを持ち出して正当化するのは、そうしなければ正当化できないくらいひどいことをパレスチナの人々にしているからだ、という言説を見たのだけど、もしかしてこの人だったのだろうか。本書は何かの専門的な本ではなく(あえて言えば国際政治?)、ウルトラ教養人による今は失われた上品なリベラルの言説集だ。左派はいつの間にか自分の「お気持ち」を「社会正義」と勘違いしポリコレ棒を振り回すお猿さんの集団になってしまった。本書は社会問題を「利益」ではなく「思想」で語っていた時代の残り火だ。2019/05/04
ジュン
7
このエッセイはトランプとBrexitに代表される、真実よりもフェイクが権威を振るう時代の処方箋ともいえる。その答えは「20世紀を思い出せ」だ。未来とは過去にある真実を探しだし、飽くことなく伝え続けることなのだろう。「イスラエル—代案」は実にタイムリーだ。先日にネタニヤフが勝利をするなか、15年以上前のエッセイでありながらその鋭さはむしろ増しているといえる。ボロボロに寸断された西岸との二国家案ではなく、一国家ニ国民案でしか不条理は解決できないように思える。2019/04/11
yooou
6
☆☆☆☆★ 時代背景や指示された事態がわからないところが多々あり難しいかったけれども読み通すことができました。しかし残念なのはジャッドが考える正しい方向とは真逆な向きに世の中が突き進んでいることだ2023/09/22