廃墟に咲く花

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  • サイズ B6判/ページ数 173p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784908059087
  • NDC分類 953
  • Cコード C0097

内容説明

一九三三年四月二十四日、若い夫婦が自殺した。その理由はいまも謎のまま―。よみがえる事件の記憶。過去と現在が錯綜するパリの街。著者渾身の自伝的傑作。

著者等紹介

モディアノ,パトリック[モディアノ,パトリック] [Modiano,Patrick]
1945年パリ郊外に生まれ、68年、22歳のときに発表した“La Place de l’´Etoile”で鮮烈なデビューを飾る。3作目の『パリ環状通り』(72)でアカデミー・フランセーズ小説大賞を、6作目の『暗いブティック通り』(78)でゴンクール賞を受賞。時間の錯綜を巧みに操る手法で、独自のミステリアスな作品世界を構築、フランスを代表する作家の一人として高く評価されている。2014年ノーベル文学賞受賞

根岸純[ネギシジュン]
1948年東京新宿生。1977年明治大学大学院博士課程単位取得退学。フランス文学専攻(ヴィクトル・ユゴー研究)。現在、明治大学講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

nobi

65
F.サガンとモディアノは戦中あるいは戦後のフランスに育ったほぼ同世代(10歳差)なのに、あくまで一冊ずつですが文体から受ける印象は随分違う。“ストレートな瑞々しさ”か“しっとりした屈折感”か。物語の主な情景も“南仏の陽光注ぐ海岸”と“セーヌ左岸の廃れゆく界隈”で異なる。その初めてのモディアノ作品に戸惑った。ミステリは解決されない。結局誰であったのか特定されない人物。「ぼく」は時代を行き来する。ただ過剰なほどのパリの地名通り名は廃墟に浮遊する「ぼく」を場所に繋留し、そのモノローグはわたしの記憶を呼び覚ます。2017/05/03

マリリン

34
ふと過去を思い出す時、それは時系列に関係なく気泡のように現れ消えてゆく。やや読みにくかったが、そういう事もあると気付くと面白い作品だ。フランス独特な香りを孕んだ各地が登場する。「ぼく」が知ったT夫妻の死、犯人は誰?  と思わせないのが不思議。生きていく中で人との交錯があり、存在と消滅が繰り返される。多感な少年時代、学校を抜け出し退学になった過去の出来事が回想される。...水族館の前に出た。入場券を買った。まるで地下鉄に乗る時みたいだった。階段を下りて行った館内は暗かったけれど、それがかえってほっとした。⇒2020/09/24

みねたか@

32
断片的な回想という形で語られる物語。青春時代の思い出の残滓と、微妙な影を落とす30年前の失踪事件。謎解きめきながら、謎は解明されず,青春小説の気配を漂わせながら,フェイドアウトするように物語は終わる。おそらくはこの作者との最初の出会いで読むべきものではなかったということか。別の作品を読むことで,本作の良さをより理解できるような気もして,次を考えてみよう。2020/11/30

ドン•マルロー

20
11冊目のモディアノ作品。物語はある若い夫婦の自殺をめぐる不可解な謎を主人公が追求していくというミステリー調で始まるが、それは単なる導入部に過ぎない。彼自身のこれまでの人生の記憶の不明瞭さに対する一種のメタファーなのだ。事件は深い霧に覆われたままだが、彼自身の記憶もまたそうなのだ。舞台はいつも通り花の都「パリ」。だがモディアノ作品に登場するパリは占領下の影を色濃く反映させている為か、まるで廃墟のようだ。表題はそこに取り残されたかのような断片的な記憶や印象のことを「花」として比喩的に表現しているのだろうか。2016/01/09

kthyk

16
五月革命の頃の「ぼく」は、その25年前の事件に関心を持ち当時の新聞を調べていた時、得体のしれない50才の男と知り合いになった。その男は「ぼく」にスーツケースを預け忽然と消えてしまう。彼は25年前の若い夫婦の心中に関与していたらしいことがわかってくる。小説 に描かれる舞台背景は全て実在のパリ市内。モディアノの小説はいつも、Google mapで確認できるから面白い。小説は「ぼく」の青春時代、1950年代後半が主要舞台となっている。例によって時間を錯綜させ、記憶を曖昧にするのがモディアノの方法だ。ー>2020/11/25

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