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薔薇のイコノロジー（新装版）

「イコロジー」とは「アイコン」の学問。…

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「イコロジー」とは「アイコン」の学問。「アイコン」とはＰＣ画面上のアプリの図であり、簡単に言うと絵文字のこと。今ではIT技術用語だが、歴史は古い。もともと欧州ではキリスト教の聖画像を意味していた。本書は、絵画や図などに描かれた「薔薇」に秘められた宗教的な意味を解き明かしていく。ベストセラーThe　Da　Vinci　Codeでも、薔薇は「聖杯のシンボル」として言及されていたことを思い出した。　
　本書はパルミジャニーノ（16世紀のイタリア人画家）の「薔薇の聖母」から始まる。口絵のカラー図で一気に聖なる世界へ引き込まれる。この画家は、マニエリスム作家だが、著者は、本書ではその大きな流れではなく、あくまで、「薔薇」に焦点を当てて論をすすめる。
　巻末に近づくと、ウィリアム・モリス、そして日本の生け花へと論考は拡散する。途中では「グロテスク」の視点から建築物の意匠も取り上げられている。楽しい周遊だ。
　「花と髑髏」の章も興味深く拝読した。「美」の象徴と「死」のシンボルの組み合わせに違和感があるが、「薔薇の花と髑髏の結びつきは決して稀ではなかった。」（ｐ255）とある。冒頭に「古代ローマでは薔薇の花飾りで死者の冥福を願った」（ｐ9）とさりげなく書かかれた文章は、この章への伏線だったのだ。
　書中に引用された数多くの絵画、図版は残念ながら白黒印刷である。（口絵はカラー）描かれた薔薇が白なのか赤なのかが説明がないと分からない。しかし、これは「覗きからくり」なのだ。凝視していると、中には「青いバラ」も混じっているのではないかと想像したくなる。そんな妄想をけしかけるような自由闊達は筆の運びで、心と「視覚」を大いに楽しませることができた。

薔薇、聖、死

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