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狂気の歴史 - 古典主義時代における（新装版）

フーコーを知ったのは岩波新書の『術語集…

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フーコーを知ったのは岩波新書の『術語集-気になることば』（中村雄二郎）を読んだ時だった。（1992年10月）「異常」という題目の中で、本書の『狂気の歴史』が紹介されている。「西洋の知のもつ深さは、おそらくこの闇をはらんだものの現前になにかを負っていたはずである。」という個所に線を引いた。その後、他の本でもこの哲学者と有名な著作についての断片的な知識を得ていたが、昨年（2020年３月）に、「フーコーにとっての歴史」という考察を、多木浩二の『雑学者の夢』（岩波書店）で読み、この『狂気の歴史-古典主義時代における』を読まずにいられなくなった次第だ。時期的に、全世界があらたな「狂気」に気づき始めた時である。　
　本書（1961年刊行）は、表題で分かる通り、現代社会の「狂気」の諸相には触れていない。あくまでも歴史的な考察である。重厚な記述であり、文学、文化、精神分析、医療などの分野への言及もあり、21世紀を精神的に穏やかに過ごすための見地が隠されているように思える。
　「狂気」という物騒な単語の定義は一様ではないが、大雑把に言えば「常軌を逸した状態」と言えよう。この「逸脱」が芸術を創造したり、技術革新を助長させたりしてきた事実もある。要するに天才と狂人とは紙一重なのだ。
　しかしながら、「異常」が制御不能になると問題を引き起こす。さらに、この「異常」が、社会制度あるいは政策として、「理性」という仮面をかぶらされて意図的に導入されることだろう。
　本書の英訳版はMadness　and　Civilizationとなっている。フーコーも「文明は狂気の展開に好都合な媒体をかたちづくる。」(p454)と書いている。つまり、我々は、「狂気」という世界で生まれ、育ってきているのである。
　MADという考えがある。動画ではない。Mutual　Assured　Destructionで、「核攻撃をするとすぐに核兵器の報復があるので、双方が短時間に壊滅するから核兵器での戦争はしかけない」という、まさに狂気による戦争回避策だ。大きな心配は、この危険な矛盾が弄ばれそうなことだ。
　ウイルスによる混迷は、スペイン風邪のように時間が解決してくれると期待している。併せて、「狂気」は「歴史」として存在していたと言える日が来ることを「無邪気」に想像することで「正気」を保ちたいと思っている。