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和書源氏と漱石 - 千夜千冊エディション角川ソフィア文庫

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タグ源氏物語、夏目漱石、日本文学

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タグ視覚化、物語、ナイチンゲール

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日本文学の古典も読んでいこうと思いなが…

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日本文学の古典も読んでいこうと思いながら、英米の小説にかまけてなおざりにしてきた。そこで、逆転の発想から「外圧」を利用することにした。とりあえず、英訳本で読むことにしたのだ。
　最初に選んだのは、『枕草子』。平安時代、女性、随筆という要素に魅了されてきた。本書のタイトルから、「草子」が当時の「書物」を意味するのだと、改めて実感できた。
　「翻訳」を選んだつもりだったが、抄訳はいいとしても、読み始めると、『枕草子』の研究書だと分かった。これには、少々、落胆したが（ペンギンで他の訳者の英訳もあるので）、予想外の方向に関心を向けられるようになった。「禍を転じて」ということだ。
　筆者のアーサー・ウェイリーは英国人の東洋学者。『源氏物語』を最初に英訳したとの紹介がある。執筆の記録を比べると、『源氏物語』の翻訳中に、本書をまとめたことが分かった。読んでいくと、随所にこの物語への言及があり、時代的にもほぼ同時期に書かれたこれらの名作を、比較する姿勢が見て取れる。
　ここは、邪推だが、『源氏物語』の英訳中に、手にとった『枕草子』が、作者が女性でありながら、随筆という異なった視点で書かれていることに気をひかれ、差異が顕著な部分を英訳し、そして考察を書き添えたのではないかということだ。　
　創作として書かれた『源氏物語』と比べると、『枕草子』は、一種の日記である。つまり、ウェイリーが目にしたのは、謎めいた平安時代の宮仕えをする日本人女性の赤裸々な告白だったのだろう。季節の移ろいよりも、恋愛事情により強い関心を抱いていたような印象をうける。副題にはcourtesanとある。当時の「女房」のことだろう。
　従って、高校の教科書でも出てくる「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山際・・」の有名な冒頭文を訳した英文は出てこないし、部分訳も点在し、著者の論述と交錯している。
　整理すると、「10世紀の日本」を考察する主要な材料として『枕草子』を利用したということなのだ。結果的に、ここが「福」に転ずる部分になると感じた次第だ。
　随筆という一作品を味わう代わりに、一人の英国人研究者の気まぐれから、平安時代の宮中の女性の生活、恋愛、美意識等を、客観的に見ていく姿勢の重要性を教えられたような気がする。

タグ枕草子、平安時代、女性、恋愛、源氏物語