【富山店】 《サイエンスイベント応援》 インタビュー:地方でサイエンスカフェをやるということ

富山県で初めての本格的なサイエンスカフェグループ・サイエンスカフェとやまが結成されたのは2012年。
神岡宇宙素粒子研究施設から鈴木洋一郎さんをお迎えし、第1回「超新星爆発とニュートリノ」を弊社富山店で開催してから7か月余りがたちます。

この7か月の間に、サイエンスカフェとやまは、主催カフェだけでも6回(9月7日富山店にて第7回開催)、富山県立大学ダ・ヴィンチ祭に出展、また11月にはサイエンスアゴラに出展するなど、積極的な活動を続けています。

積極的な活動の一方、問題や悩みが出てくるようにもなったと代表・吉岡翼さんは仰います。


今回は、同じく兵庫県でユニークな活動を続けるサイエンスカフェはりま世話人・尾崎勝彦さん、サイエンスカフェとやま代表・吉岡翼さんに、「地方でサイエンスカフェをやるということ」というテーマでお話をいただきました。

(記事・インタビュー: 富山店 自然科学担当 野坂美帆)

はりま尾崎.jpg
<写真左: サイエンスカフェはりま世話人・尾崎勝彦さん>

野坂:ようこそ富山県へいらっしゃいました。サイエンスカフェはりま世話人・尾崎勝彦さん、サイエンスカフェとやま代表・吉岡翼さんにお話を伺います。今日はよろしくお願いいたします。


尾崎:よろしくお願いします。

吉岡:サイエンスツアー中、お疲れの所無理をかなえていただき、ありがとうございます。


<サイエンスカフェはりまの運営>

吉岡:参加者というのは、大体いつもこんな層ですか?40代以上の男性が多くて、女性が少しいらっしゃる。

尾崎:半分くらいは初参加の方です。あとの半分は何回か来られたことのある方。

吉岡:最初に始められたのは?

尾崎:2008年の9月です。

野坂:サイエンスカフェはりまの活動報告を拝見していて特徴的だなと思ったのは、ゲストが大体地元の方だということなんです。

尾崎:そうですねえ。交通費が高くつかないというのと(笑)、「はりま」という地域名をつけて活動しているので、やはり地域にちなんだゲストをお呼びしたい、というのがあるんですけどね。

吉岡:活動資金はどうしておられるんですか?

尾崎:最初の3年ほどは、科学技術振興機構からの予算で。地域の科学舎推進事業の地域ネットワーク支援です。神戸大学が事務局になって(神戸大学サイエンスショップ)、地域にサイエンスカフェを興していこうというのがあって、それで僕が姫路でやります、と言いまして。僕はもともと神戸大学サイエンスカフェの一般参加者やったんですよ。姫路が本拠地なんですけど、もう少し広い地域名をということで、「はりま」と名乗ることになったんです。

野坂:企業の協賛も得ていらっしゃいますよね?

尾崎:去年から企業協賛いただいてます。経団連の1%クラブというのがあるんですけども、売り上げの1%相当額以上を社会貢献に使おうという団体なんですけども、三菱重工高砂製作所さんが声をかけてくださいまして。で、その高砂製作所さんの要請で、姫路だけじゃなく高砂でも活動するようになったんです。

吉岡:それを、ゲストの交通費や会場費に充てるということですね。

野坂:どこの地域のサイエンスカフェも、そういった費用面では苦労されていると思うんですけども。

尾崎:と、思います。

野坂:市や県など行政の援助があってもいいのでは。

尾崎:お名前はいただいているんですよ。怪しげな団体じゃないってアピールになってます笑。


<サイエンスカフェはりま主催のカフェあれこれ>

野坂:私は思いっきり文系出身なんですが、サイエンスカフェとやまの活動は楽しませていただいてます。

尾崎:僕も文系出身ですよ。(本職は大学・専門学校非常勤講師。専門は心理学。)

野坂:はりまのイベントで面白いものがありましたよね。「科学を身近なものに~予は如何にして科学大好き文系女子となりし乎~」です。びっくりしました。こんなことをサイエンスカフェでやっちゃうんだと笑。ゲストの木村さんは文系ご出身なのだけど、サイエンスカフェなど科学普及活動に広く携わっていらっしゃる。木村さんがいかにして科学普及活動に興味を持ち、関わっていくようになられたか、というお話だったんだろうと思います。

尾崎:あの回は、すごくサイエンスカフェらしいサイエンスカフェになりました。質疑応答の時間に、皆であーやこーやと意見を出し合って話し合いになったんで。

野坂:面白いですね。実際に普及活動をしている側とそれを受け取る側が話し合う場になったということですよね。

尾崎:サイエンスカフェの目的として、参加者とゲストとのコミュニケーションというのがあります。その目的を考えたときに、とても活発な議論になったのでよかった、という意味ですね。

野坂:はりまはいつも半分くらいが初めての方で、半分くらいが参加経験のある方ということですが、質疑応答はいつも盛り上がる?

尾崎:それはテーマによりますね。たまたまこの「文系女子」の回は盛り上がったというわけです。

野坂:はりまでは、サイエンスカフェだけでなく、サイエンスツアーを組んで、各地の科学施設を見学していらっしゃるんですよね。今回が第3回ツアーで、福井県立恐竜博物館と、岐阜の神岡宇宙素粒子研究施設を回られる。うらやましいです。神岡は中の見学もなさるとか。ついていきたい笑。

尾崎:ツアーは新しく始めたことなので、これからですね。


<活動を発信するということについて>

野坂:はりまは関西圏なので、お客様はきてもらいやすいのではないですか?そんなことはない?

尾崎:そこはサイエンスカフェとやまの感覚とは違うところですね。とやまは、富山市から発信して、富山県全域に広めていくことができるとおっしゃっていましたけど、はりまは違います。

野坂:同じ関西圏に他にもたくさんの科学普及活動をなさっている団体があります。同じサイエンスカフェのグループもいくつかありますね。

尾崎:サイエンスカフェはりまの参加者さんはやはり、姫路や高砂の方が中心ですね。神戸大学の事務局でも広報いただいてますので、そちらでご覧になって、という方もいらっしゃいます。県外からの参加者さんは、特別に興味を持って来てくださる方くらいかな。極少数ですね。近くで同じ活動をしている団体というと、神戸とか岡山(サイエンスカフェ岡山岡大サイエンスカフェなど)になりますが、姫路とは距離がありますので、それほど集客に影響するというわけではないですね。

吉岡:サイエンスカフェとやまの場合は、案外知っている方も多い。知っているけど、イベント参加まではしない、という方にどうやって来ていただくかが課題ですね。なんか難しいことをやってるんだろうというイメージがあるのかも。

野坂:サイエンスカフェなんて知らない、聞いたこともない、という方もまだまだ多くいらっしゃいますよ。これは実感します。文系出身ですし、周りに科学へ興味をもつような人が少ない環境にいるせいかもしれませんけども、それでもまだまだニッチな世界なんじゃないかという気はしていますね。
例えばサイエンスカフェとやまが紀伊國屋書店富山店で開催されたときのテーマを挙げてみると、2013年1月27日第1回「超新星爆発とニュートリノ」ゲスト:鈴木洋一郎さん(神岡宇宙素粒子研究施設)、5月12日第4回「脳の進化」ゲスト:山下晶子さん(日本大学)、今月開催するのが9月7日第7回「北極圏~いま世界のホットスポット~」ゲスト:小島覚さん(北方生態環境研究学坊)。どれも特別科学に興味のある方でなくても、聞いたことがあったり気になったりというテーマだと思うんですよね。そのテーマについて、その道のプロの先生が語ってくださって、更に一緒に話をしようと。サイエンスカフェって、すごく贅沢な場だと思うんですが、まだまだ広報・宣伝が足りてない。もっと気軽に、立ち寄ってもらえる場であってほしいと思います。こんな場を知らずにいるのはもったいない。これは文系出身個人として思います。

吉岡:知ってるけどって方が参加するまでの一歩、背中を押すものって何なんだろうと思いますね。

野坂:敷居を下げたいですね。

尾崎:サイエンスバーとかどうですかね?平日の夜開催。

野坂:それいいですね笑。家族のある方は土日は出にくかったりしますものね。平日の夜なら会社帰りに寄っていただけるかも。

尾崎:金曜の夜8時からとか。仕事終わったし明日は休みだし、なんか面白そうなんやってるやーんって笑。

野坂:時間の敷居を下げるというか、変えてみるというのはいいかもしれません。

吉岡:場所を変えるっていうのも考えてます。サイエンスカフェ露天風呂とか、サイエンスカフェ山小屋とか。

野坂:ええー。

尾崎:ツアーしましょうツアー笑。

野坂:ツアーだったら実物も見られるわけですし、いいですよね。JTBさんとか、どこかの旅行会社さんと組んで笑。

吉岡:パッケージ化しちゃってもいいかもしれません。

尾崎:高齢者の参加者さんが増えていいかもしれませんよ。ものすごい向学心旺盛な方が多いんです。大学で講義してても思います。

吉岡:若い人にも来てほしいですけどね。

野坂:子供さんにももっと参加してもらいたい気持ちがあります。サイエンスカフェに参加するには、子供さんは敷居が高い。でも興味のある子は絶対いる。売れていく本の種類を見ていても思います。

尾崎:科学絵本の読み聞かせはどうです?読み聞かせの後、ちょっと科学の話をする。

野坂:いいですね!時間やカフェの形態などは、もっと幅があっていいと思います。

尾崎:地域の朗読グループと組んでもいいですね。

野坂:時間や携帯の幅を広げることで、活動を認知してくれる方の層にも広がりが出るのではないかと期待できますね。

吉岡:例えば東京の科学イベントに参加するというのはどうですか。サイエンスカフェとやまは、今年サイエンスアゴラに出展するんです。

尾崎:ちょっと東京のイベントに参加する、というのは距離感があるんですよね。

吉岡:むしろ、東京のイベントにもっと地方からも参加してほしいというか。中央の団体ばかりが盛り上がって認知されて活発化していく、という状況にはしたくなくて。出られるのであれば地方の団体ももっと積極的に出たらいいんじゃないかなという風に思っているんです。

野坂:興味のある団体の皆様はぜひ、というところでしょうか。


<ゲストにメリットのある場を目指すには>

吉岡:ゲストには無償で足代のみで来ていただくわけで、ゲストの研究者の皆さんにもメリットのある場にしたいと思っているんですよね。研究者が所属する団体以外で話をするといえば学会ですよね、学会で話をすると要旨集がでて、それが評価の対象になります。サイエンスカフェで話したことも、それが実績として見せられるようにアーカイブする必要がある。研究者のコミュニティも、そういった普及活動を実績として評価するように変わっていく必要がありますよね。サイエンスカフェを運営する側にとってもコンテンツになる。

野坂:最低イベント終了後に、どんな内容だったかサイトなどにアップする必要がありますよね。

尾崎:うちは手間ですけどそれは続けてます。

野坂:後からサイトを見に来る方にとっては、どんな内容のカフェだったか知りたいわけですよね。サイエンスカフェとやまではUstream中継があって、その場に来ることのできない方にとってはとてもいいですよね。でもそのイベント日時を把握していない方をフォローするコンテンツも必須かと思います。アクセスが伸びれば、それはゲストにとってもプラスになりますから。

吉岡:それは今後の課題ですね。


<科学普及活動としてのサイエンスカフェという存在>

野坂:私個人としては、科学に興味の内容な方にも、あれ?なんだか面白そうなことやってるぞ、と思ってもらいたいというのがあって。地元の方をゲストに呼ぶというのはとてもいいですよね。

尾崎:大学院生をゲストに呼んだこともありますよ。

野坂:そういう研究最前線というのもいいですよね。例えば富山大学で何をやっているかということも、知りたい人はいらっしゃる。それを大学で公開するのではなくて、サイエンスカフェなどを利用して外でやる。多くの人の目に触れる場所でやると。

吉岡:民間の研究者の方でもいいですね。

尾崎:興味のない人にも来てもらって、面白いなって思ってもらいたいんですけど、どうしても興味のある人から来てくださるので。裾野を広げるっていうことは課題です。広がってない感じがするんです。

野坂:そこに成功している団体はあるんですかね?

尾崎:できるだけ科学に興味のない人の興味をひくようなテーマを、と僕は考えています。そして今これからなんですけど、サイエンスカフェでやるようなコミュニケーションを大事にする部分をちょっと置いておいて、裾野を広げるということを主眼に、文化講演会を開催しようと思ってます。テーマは「科学って文化なの?」文化振興財団の方に言われた言葉なんですよね笑。でもその認識はテーマに成り得るなと。

野坂:それはすごい!ぜひ成功していただきたいです。コミュニケーションの部分はどうですか?今まで特に気を付けてこられたことは?

尾崎:質問はいつでも、とか、難しいことを言い始めたら弁士注意しますよ、って宣言したり。参加者から質問が上がる前に、ゲストのトークに対して、これはどういう意味ですか?なんて言ったり。ファシリテーションは気を付けますね。

野坂:ファシリテーターの存在ってやはり大事でしょうか。ゲストの方と参加者の橋渡しとしても重要な存在ですよね。

尾崎:トークを円滑に進めるためにというのはありますね。橋渡し役になれればとも思います。


<福島第一原発事故以後の目線>

吉岡:新潟でサイエンスカフェの活動に携わっていた時に、原発事故以後、かなり厳しい見方や意見をいただくこともあって。

野坂:一般の皆さんの科学への信頼が揺らいだことを肌で感じられた?

吉岡:そうですね。その中で、科学普及活動をする、というのが。新潟は事故の影響も強く受けましたし、そのことに対する皆さんの関心ももちろん高いですので。
このいまの状況で科学者がこんなカフェをしていていいのか、なんて言われたり。

野坂:原発事故以前以後というのは、何か感じられることはありますか?

吉岡:地域差がありますね。

尾崎:関西ではあまり感じませんねえ。

野坂:原発事故があって、それでも科学を広めていくということについて、何か意識が変わったりしたということはありましたか?

尾崎:僕は、ある意味いいきっかけやったんやないかと思ってるんです。科学を知らない人に限って、科学は万能だと思ってはったりする。原発の事故をきっかけにして、研究者も専門家も全部を詳しく知ってるわけじゃない、万能なわけじゃないってことが、それは科学を知ってる人間にとっては常識なんだけども、普通の人にも知れ渡ったと。

野坂:科学の限界というか、境界線の部分があるんだということですね。その境界線の部分が研究の最前線なわけですけども。

尾崎:原発怖いけども、専門家に任しとったらなんかええようにしてくれるやん、みたいなね、意識があったんじゃないかと思うんですよ。原発事故以前は。でも結局何もできひんやん、知らんやん、ということも、世間によく知れ渡ったんだと思うんですよね。僕個人の意見ですけどね。

野坂:科学リテラシーですか。

尾崎:科学リテラシーがそんなに高いもんじゃないよということがね。

吉岡:それで終わってしまってはただの科学不信になってしまう。そこからお互いに一歩進んでいかなくちゃならない。

野坂:格差がありますよね。

尾崎:研究者を頂点とした、リテラシーのヒエラルキーは絶対にあるんですよ。それをボトムアップしたいんです。

野坂:そのような格差をなくすための活動として、サイエンスカフェもあるんだってことですね。
ボトムアップができたとしたら、どんな社会になるのでしょうか。

尾崎:もっと冷静になれるんだと思うんですよね。何か事があった時に。知識があるってことは、事態に対して何も対策がなかったとしても、冷静に対処する心構えができたりもする。
また、サイエンスカフェのような科学者が話す場というのは、説明責任を果たす場でもあると思うんですよね。

吉岡:研究費を使っている限り、説明責任はあるんです。科学者のコミュニケーションを促す場になればいいと思いますね。

野坂:尾崎さん、吉岡さんのサイエンスカフェに対する熱い思いを伺って、背筋の伸びる思いです。これからも応援しています。今日は貴重なお時間をいただきありがとうございました。

吉岡:ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。

尾崎:ありがとうございました。

2013.09.04 イベントに行こう  まなび サイエンス テクノロジー 北陸 近畿