痛みと感情のイギリス史
伊東剛史、後藤はる美 / 東京外国語大学出版会
2017/03出版
ISBN : 9784904575598
価格:¥2,860(本体¥2,600)
歴史から浮かび上がる〈感情〉の共同体
痛みは普遍的なのか――
生と痛みが絡まり合う感情の諸相を、イギリス史を舞台に描き出す。
17世紀から20世紀のイギリスをフィールドとして、神経医学の発達、貧者の救済、聖職者の処刑、宗教改革期の病、魔女裁判、夫婦間の虐待訴訟、動物の生体解剖などを題材に、6名の研究者が史料に残された〈生きられた痛み〉を照らし出し、感情を歴史学の視点から考えるための視座を開く。
『痛みと感情のイギリス史』刊行によせて 編者・伊東剛史氏からのメッセージ
本書は、痛みという「普遍的」現象と対峙し、その歴史をいかに書くことができるのかに挑戦したものです。 痛みとは、ほぼ誰もが経験したことがあり、誰もが理解しているかのように思われますが、 実際の痛みの在りようは様々です。客観的に観測される現象であると同時に、主観的に意味づけられる経験でもあります。さらに、「痛む」ことは「生きる」ことと対になるという考え方もあります。最近では、他者の痛みに共感できることが、多様な人々との共生にとって重要だと言われます。
しかし、痛みが生の根源に関わるという理解は、歴史を通して一様だったとは限りません。 であるなら、私たちは、痛みに纏わる既成概念を一度棚上げして、人がどのように痛みと向き合ってきたのかの歴史を省みなければなりません。
このような問題意識を共有した6人の執筆者が、近世から現代までのイギリスに6つの舞台を設定し、安楽死、物乞い、殉教、魔女、夫婦間暴力、動物実験といった具体的な事例を通して、痛みの歴史性に迫ったのが、『痛みと感情のイギリス史』です。
伊東剛史(いとう・たかし)氏プロフィール1998年慶應義塾大学文学部史学科卒、2005年ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイにてPh.D.取得。 日本学術振興会特別研究員、金沢学院大学文学部講師を経て、現在、東京外国語大学大学院総合国際学研究院准教授。
主要研究業績:London Zoo and the Victorians, 1828-1859 (Woodbridge: Boydell / Royal Historical Society, 2014);「帝国・科学・アソシエーション----「動物学帝国」という空間」近藤和彦編『ヨーロッパ史講義』第8章(山川出版社、2015年)。
《イギリス史・ヨーロッパ史研究の入門書》フェア
選者:伊東剛史氏(東京外国語大学)、後藤はる美氏(東洋大学)、那須敬氏(国際基督教大学)
『痛みと感情のイギリス史』共著者3氏の選ぶイギリス史・ヨーロッパ史研究の入門書を文化史を中心にご案内します。
※一部品切れのタイトルも含まれております。ご了承ください。
1.歴史学の現在
歴史
ジョン・H.ア-ノルド、新広記 / 岩波書店
2003/06出版
ISBN : 9784000268615
価格:¥1,760(本体¥1,600)
歴史は面白い! 過去の探究は私たち自身を発見させ,さらに未来の新たな可能性をも切り拓いてくれる.新しい歴史学の成果を十二分にふまえ,異端審問の記録に残ったある修道僧殺しの話を皮切りに,古代から現代まで豊富な事例を引きながら,歴史とは何か,それはどう探究するのかを巧みに伝える.新時代の歴史学入門.
文化史とは何か
ピ-タ-・バ-ク、長谷川貴彦 / 法政大学出版局
2010/01出版
ISBN : 9784588350047
価格:¥3,080(本体¥2,800)
19世紀に起源をもつ「文化史」は、社会史、人類学、文学、さらに視覚文化論に加え地理学や考古学などとの関係を変化させつつ、その観点、概念、目標を転換させながら、近年のように多様なかたちをとることになった。文化史の多様性、文化史をめぐる論争と対立、そこで共有されている関心や伝統とはどのようなものなのか。そして、とりわけ「新しい文化史」の時代を経て「言語論的転回」以降の文化史研究は、どこに向かおうとしているのか。本書は、英語圏だけでなく、ヨーロッパ大陸およびアジア、さらに南北アメリカなど世界的規模で展開する研究を網羅しながら、文化史研究に関する"過去・現在・未来"を明晰に論じる。
長年にわたり世界の歴史学を牽引してきた著者の現在を伝える日本語版オリジナル編集の7篇。さまざまな観点から「歴史とは何か」を考える書でもある。
歴史の喩法 ホワイト主要論文集成
ヘイドン・ホワイト、上村忠男 / 作品社
2017/03出版
ISBN : 9784861826351
価格:¥3,520(本体¥3,200)
"メタヒストリー"によって歴史学に革命的転換をもたらしたヘイドン・ホワイト―その全体像を理解するための主要論文を一冊に編纂。
グロ-バル時代の歴史学
リン・ハント、長谷川貴彦 / 岩波書店
2016/10出版
ISBN : 9784000226400
価格:¥2,970(本体¥2,700)
国民国家とともに発展してきた歴史学は、大きく変貌を遂げつつある。「グローバル・ヒストリー」は、新たなパラダイムたりうるのか。歴史における「社会」と「自己」の関係をどう捉え直すべきなのか。アメリカを代表する気鋭の歴史家が、二〇世紀の史学史を通観しながら、認知科学など最先端の周辺諸科学との対話を試み、歴史叙述の"これから"を探求する。
「世界史」の世界史
秋田茂 / ミネルヴァ書房
2016/09出版
ISBN : 9784623071111
価格:¥6,050(本体¥5,500)
新たな世界史像の探究。人類が各地域・時代に描いてきた世界像を点検、19世紀以来の西欧的世界史像を批判的に検証し、新たな世界史の構築をめざす。
1989年に「危機的な曲がり角=批判的転回」特集を組んだ世界的学術誌『アナール』。絶えず自己革新を試みてきたアナール学派とフランス歴史学の試行錯誤の30年を現状理解に不可欠な精選された論考群でたどる!
歴史の歴史
樺山紘一 / 千倉書房
2014/12出版
ISBN : 9784805110348
価格:¥3,300(本体¥3,000)
歴史が歴史として体系化され、人類が知恵を武器に世界を広げていった道行きを、アイデンティティ、自然観、暦や時間、奴隷、地図、倉庫、法と王権、教養、といった具合に、いくつかのテーマを設定しながら、特別講義のかたちで解説します。
現代歴史学の系譜や変遷をわかりやすく解説した、歴史理論や史学史を一望できる格好の論文集。戦後歴史学からのパラダイム・シフト、言語論的転回が社会史研究に与えたインパクト、文化史研究やトランスナショナルな歴史、そしてポスト「転回」といわれる現状について、英米圏と日本の歴史学を中心に振り返り、今後の展望を示す。
礫岩のようなヨ-ロッパ
古谷大輔、近藤和彦 / 山川出版社(千代田区)
2016/07出版
ISBN : 9784634640832
価格:¥4,180(本体¥3,800)
近世ヨーロッパの「国のかたち」が歴史学を動かす。公共善と秩序、絶対主義と帝国を問う試み。
世界史/いま、ここから
小田中直樹、帆刈浩之 / 山川出版社(千代田区)
2017/04出版
ISBN : 9784634640863
価格:¥2,530(本体¥2,300)
歴史を知り、未来に目をこらす。世界史は教養を超える!移動・宗教・環境から、わたしたちの「いま」を考える。
16~19世紀のイギリスを中心に、海に生きる人間の光と影の歴史を描き出す。本書を羅針盤に、海事史研究という大海原に漕ぎだそう
2.イギリス史とヨーロッパ史〜文化史を中心に〜
文化の新しい歴史学
リン・ハント、筒井清忠 / 岩波書店
2015/10出版
ISBN : 9784000288170
価格:¥3,410(本体¥3,100)
文化史はアナール学派と英米の歴史家たちとの理論や方法の融合・葛藤の中で花開いた。本論集では、第一部にフーコー、デーヴィスらの先駆的モデルへの活発な議論を収め、第二部に祭典・書物・身体・視覚芸術などの表象を扱う刺激的なアプローチを盛り込んだ。人類学や文学理論と歴史学の交配が生んだ、絶好の文化史ガイド。
痛みの文化史
デイヴィド・B.モリス、渡辺勉(翻訳) / 紀伊國屋書店
1998/05出版
ISBN : 9784314008235
価格:¥6,380(本体¥5,800)
「痛み」は愛のように神秘にあふれ、自分とは何かを問いなおす、根本的かつ人間的な体験である。本書は、「痛み」をキーワードとする体験のほとんどを網羅し、現代の痛みをめぐる医学知識を援用しながら、古今の文学や哲学、キリストの磔刑やラオコーン像、アリストテレスやカント、ゲーテやサドなどを題材に取り上げつつ、肉体の痛みと精神の痛み、本物の痛みと偽物の痛みという二項対立を超え、「痛み」の歴史的、文化的、心理社会学的構造を探究する。
感性の歴史
リュシアン・フェ-ヴル、小倉孝誠 / 藤原書店
1997/06出版
ISBN : 9784894340701
価格:¥3,960(本体¥3,600)
本書は「感性の歴史」のテーマのもとに、アナール派の三巨人の重要な作品を編集した初の成果である。「感性の歴史」とは、どのような問題意識のもとに、どのような方法をもって、どのような対象を扱いうるのか?この問いに本書は、第1部「感性の歴史の方法」第2部「感性の歴史の諸相」の構成によって答えようとする。フェーヴルによって夙に提唱されていたにもかかわらず、今コルバンによってようやく本格的な展開を見せはじめた「感性の歴史」。その「方法と対象」を示す、望まれながら今までなかった本書は、全体史としての歴史学に関心をもつ全ての人のためのものである。
「では、なにがカオスを動かしているのか」「カオスはそれ自身で動くのです」異端審問記録ほか埋もれた資料を駆使しつつ民衆文化の深層にスリリングに迫った現代歴史学の名著。
西欧近代における人間と動植物とのかかわりの歴史を社会の動態として具体的に描き出し、科学と産業の発展の中で、人間中心=自然破壊の思想がいかにして形成されたかを精細に論証する。厖大な文献を探索しつつ文化の根源におけるエコロジー思想の伝統を発掘する。
古代ギリシャ以来、女性は男性の裏返しとして、ワンセックスモデルで語られていた。ルネサンス・科学革命期を迎え、ペニスの相同器官としてクリトリスが発見されても、このワンセックスモデルは生き延びた。大転換が起こったのは、「自由・平等・友愛」が叫ばれていた十八世紀以降のこと。二つの「セックス」は絶対的なものとされ、攻める男と待つ女の役割モデルが固定されていった。女性の性感をめぐるフロイトのクリトリス性愛からヴァギナ性愛への成熟説は、この傾向の真打ちともいうべき学説だった。
近代人とはいったい何者なのか?居酒屋「毛深い穴」亭で大酒喰らい、「陽気な物質」をまき散らし、淫蕩にふけり、神を罵っていた男や女たちが、いつ、どうして、どのようにして、ヨーロッパ近代人に変貌してしまったのか?中世の終りから大革命までの間にいったい何が起きたのか?フランス人および他の西欧人たちに刻印をしるした、この強烈な"習俗の文明化"の過程を精緻に跡づけ、ブリリアントに描きだす、フランス期待の歴史学者による社会史の大作。
人権を創造する
リン・ハント、松浦義弘 / 岩波書店
2011/10出版
ISBN : 9784000234986
価格:¥3,740(本体¥3,400)
1776年のアメリカ独立宣言と、1789年のフランス人権宣言―人間は生まれながらにして等しく権利を有するという思想が、18世紀に生まれたのはなぜだったのか。『新エロイーズ』『パミラ』『クラリッサ』をはじめとする書簡体小説の流行。カラス事件にたいするヴォルテールらの反応と、ベッカリーア『犯罪と刑罰』の受容。「自然権」をめぐるルソー、ビュルラマキ、ベンサム、バーク、ペイン、ウルストンクラフトらの応酬。そしてアダム・スミスの『道徳感情論』...。膨大なテクスト読解から浮かび上がるのは、当時の人びとの心と身体に起きていた、巨大な変化であった。政治文化やジェンダーの視点からフランス革命研究を刷新してきた歴史家が、西洋近代における人権思想の社会文化史を描く。
フランス革命の政治文化
リン・ハント、松浦義弘 / 平凡社
1989/03出版
ISBN : 9784582744125
価格:¥4,485(本体¥4,078)
革命の主たる成果は資本主義の発展でも近代化の促進でもなく、政治文化の変容、つまり政治的闘争の場で新たな形式と意味を帯びたレトリック、シンボル、儀礼の劇的な創造だった。
猫の大虐殺
ロバ-ト・ダ-ントン、海保真夫 / 岩波書店
2007/10出版
ISBN : 9784006001858
価格:¥1,320(本体¥1,200)
一八世紀初頭のある日、パリの労働者街の猫がのこらず殺された、と記す印刷職人の手記は、何を物語るのか。史料の奥底に隠された大革命以前の人びとの心性に、わずかな手がかりをもとに犯人をつきとめる名探偵のような鮮やかな推理で迫る。社会史研究の先駆的達成と評価される原書から、中核的論文四本を抜粋して収録。著者自身による解説も兼ねた「第三版への序文」を付す。
近代初期のフランスでは、過失や正当防衛によって殺人を犯した者は、国王にたいして刑罰の軽減を乞うことが認められていた。そのために作成されたのが、自分の身の上や殺人のてんまつをしたためた恩赦嘆願書lettres de r´emissionである。歴史家デーヴィスは、殺人者=被告(貴族や職人や農民)、公証人、書記官、裁判官らの協同作業のうえに成立した、複数の〈声〉をふくむ嘆願書のなかに、16世紀フランスの人々がどのように物語を語ったか/語らなかったかを聴き取り、そこから、民衆がことを起こす際のモティーフや現実処理上のストステジー、想像力を発堀する。
イギリス文化史
井野瀬久美恵 / 昭和堂(京都)
2010/10出版
ISBN : 9784812210109
価格:¥2,640(本体¥2,400)
本書は、制度と文化の関係、文化史の方法に配慮しながら、近代以降の「イギリス文化史」を考察する。「文化史とは何か」という問いを念頭におき、「文化史というアプローチを問い直す」からはじまり、第1部では、宗教・政治・労働など問い直す「制度と文化」、第2部でイギリスらしい(と思われる)「なぜ?」を問い直し、第3部では「20世紀イギリスを文化の視点から見直す。
創られた伝統
エリック・ホブズボ-ム、テレンス・レンジャ- / 紀伊國屋書店
1992/06出版
ISBN : 9784314005722
価格:¥5,232(本体¥4,757)
「伝統」という言葉は当然のように、「遠い昔から受け継がれてきたもの」と思われている。だが、「伝統」とされているものの多くは、実はごく最近、それも人工的に創り出されたのだと本書は言う。本書は、おもに英国におけるそうした実例をとりあげ、近代になってから「伝統」が創り出された様子を追う。
スキャンダルと公共圏
ジョン・ブリュア、近藤和彦 / 山川出版社(千代田区)
2006/04出版
ISBN : 9784634475014
価格:¥2,090(本体¥1,900)
長い18世紀のイギリスに出現した消費社会。政治が商売になり、メディア対策が政治家の命運を決する時代。公と私の関係をとおして権力を分析し、民衆と政治を論じる歴史学講義。
リンネの「哺乳類」(ママリア、字義どおりには乳房類)という新しい分類名は、当時定着しはじめた(乳母ではなく母親自身の)母乳による子育ての流行を色濃く反映していた。革命の象徴でもあった乳房は、いつしか中流家庭内のつつましい良妻の象徴へと後退を迫られてゆく。本書は乳房の形や性器の形状を科学の名の下にうんぬんする博物学者の虚妄と、「自由、平等、友愛」をうたった啓蒙の世紀のジェンダーの罠をあばく。
生体解剖反対運動、動物学の普及、狩猟、狂犬病パニックなどヴィクトリア時代の英国の人間と動物の結びつきを描くユニークな社会史。
19世紀から20世紀にかけての知的・思想的激動の時代に、最新の科学的知識と発見は社会と人間にどんな影響をもたらしたのか。自然科学と人文科学の相互関係を豊かな創造性を秘めた異文化間コミュニケーションとしてとらえようとする、英文学・文化研究の泰斗による意欲的な探究。
チャリティとイギリス近代
金澤周作 / 京都大学学術出版会
2008/12出版
ISBN : 9784876987634
価格:¥5,500(本体¥5,000)
知られざる福祉社会の源。公刊史料、そして市民の肉声から、大胆に活写される新しいイギリス像。
あらゆる価値が転倒する異国の地で、敵の手中に落ちた無名のガリヴァーあるいはロビンソン・クルーソーたちの目に、世界はどのように映ったのか。大英帝国の版図をめぐる争いのさなか記された虜囚体験記に光をあてるもうひとつのイギリス史。
現在、日本の精神科病床数は30万床。英国は約2万床、精神医療の脱施設化が進められた結果である。その起源はいかなるものだったのか。近現代英国の精神科医という専門職に注目し、その政治的言説、職階構造、診療実践、病院経営、他専門職との競争のありかたを検討する。精神科医が創った歴史。