2月に入り、いよいよチョコレート業界が一層アツくなる今日この頃です。
もうお目当てのチョコは決まりましたか? 前回の「バレンタイン特集(前編〜手作り篇)」でご紹介したように「今年は手作りで!」と考えてみたり、○○の高級チョコレートや、ばらまき用に袋でいっぱい買い込んだりと、このシーズンは何かと浮き足立って楽しくなってしまうもの。プレゼントのチョコを決めた人も、まだ決まっていないという人にも、是非ご一読願いたいのが今回の特集「バレンタインにお薦めの本、あつめました。(後編~文芸篇)」です。
片思いを伝えたい
そう、バレンタインのチョコは「好き」という気持ちを伝えるツールではありますが、それと同時に、センスや金額の差などの「高い」「安い」「手作り」「美味しい」しか伝えられないものでもあります。きちんと相手に「どうして好きなのか」「今後どのような関係を築きたいのか」を手紙なり口頭なりで伝えないと、「本命なのに義理」とか「義理なのに本命」とか誤解されてしまうことも多々あるのです。そして、その思いを伝えることこそが一番難しかったりするのが実情です。それをカバーし、気持ちを伝えるお手伝いをしてくれるのは、もしかして「本」なのかもしれません。
「月が、ずいぶん傾いてきましたね」センセイは首をもたげて言った。
月は朧の中から抜け出て、くっきりと輝いている。
(『センセイの鞄』本文より)
センセイの鞄
川上弘美 / 文藝春秋
2004/09出版
ISBN : 4167631032
価格:¥583(本体¥540)
2001年の谷崎潤一郎賞受賞作品。40歳手前の主人公と30以上も歳の離れたセンセイが共に過ごした歳月を綴った、幸せな気分に浸れる「大人の恋の物語」です。四季折々の過ぎ行く様が、なんともじんわりと心にしみさせます。「こんな風にゆったりと同じ時間を過ごしたい!」って気持ちを伝えるのにはおあつらえ向きではないでしょうか。
水に眠る
北村薫 / 文藝春秋
1997/10出版
ISBN : 4167586010
価格:¥514(本体¥476)
愛について語られた短篇群像劇。人の数だけ、さまざまな愛の形がある。淡々とした何でもない日常の中にも、物語があるのだと教えてくれる一冊です。短篇なので、自分の伝えたい一篇に栞を挟んで贈るのも良し、一冊とおして「私たちなりの愛の形を探しましょう」と贈るのもまた良いかもしれません。
ためらいもイエス
山崎マキコ / 文藝春秋
2007/12出版
ISBN : 4167717530
価格:¥712(本体¥660)
真っ赤な帯にデカデカと書かれた「思春期をとりもどせ!」にグッと来る、恋愛音痴のために書かれたラブストーリーです。28歳、処女、仕事以外は何もなく、親元を離れ、毎日ウナギを食べ続けたにも関わらず病院へ行けば「栄養失調」と診断される主人公の、切なくも可笑しい物語。「心の家」を共有したい相手に贈っても良いかもしれません。
とらドラ!
竹宮ゆゆこ / アスキー・メディアワークス
2006/03出版
ISBN : 4840233535
価格:¥550(本体¥510)
なかなか素直になれずにいるなら、こんな「ツンデレ小説」はいかがでしょう?「憎まれ口ばかりだけど、実は...」って気持ちがあるならば、まさに本書は決定版! 挿絵や表紙がやや子供っぽい気もしますが、ライトノベルと侮るなかれ。本書が売れに売れ、10巻まで続いた所以が判る名著です。物語の展開の疾走感、読みやすさ、抜群です。「とにかく読んでみて欲しいの!」とばかり、チョコと一緒にプレゼントしてみませんか?
私と一緒にこんな青春しませんか!
現在、過去、未来と、「青春」は年齢を選びません。バレンタインだからと言って、まるで白黒付けるように「好き」を形にしなくても良いのではないでしょうか? 「好きだの嫌いだのはまだ判らないけど、とにかく一緒に青春を過ごしたい!」なんて思う人に、こんな本をお薦めしてはいかがでしょう?
全員フォルテシモの大合奏でエンディングを迎えたとき、割れるような大歓声を貰っても、俺はぜんぜんうれしくなかった。もっとずっと、バスドラムをたたいていたかった。
(『ビート・キッズ』本文より)
ビ-ト・キッズ
風野潮 / 講談社
1998/07出版
ISBN : 4062092492
価格:¥1,188(本体¥1,100)
講談社児童文学新人賞、野間児童文芸新人賞、椋鳩十児童文学賞...と数々の児童文学賞を受賞し、2006年に同名で映画化された風野潮の本書は「青春本」のバイブルとも言える作品です。生まれた時から「だんじりビート」を胸に刻んだ主人公英二が、転校先のクラスメイトから吹奏楽部の勧誘を受けることから始まる思春期青春ドラマ。共に、まっすぐ何かに突き進みたいと思える相手にぴったりの一冊です。
青が散る 上
宮本輝 / 文藝春秋
2007/05出版
ISBN : 4167348225
価格:¥637(本体¥590)
オーバー40歳ならピンと来るかもしれません。その昔、石黒賢主演でドラマ化され、主題歌は松田聖子の『蒼いフォトグラフ』といったら、宮本輝の『青が散る』が原作です。新設されてばかりの大学でテニス部の創立に参加する主人公。そこで繰り広げられる友情や軋轢、そして恋愛...。学生時代の甘酸っぱさや戸惑いなどをぎゅっと凝縮したかのような本書は、青春時代に一緒に寄り添いたいたかった人に贈りたいものですね。
恋愛自体に尻込みしちゃう人に送る、女子力を見つめ直す本
世の中はバレンタイン一色。チョコレートカラーがピンクや赤で彩られる中、ちょっとあまのじゃくな気分になったり、「別に、想いを打ち明けるほどの人もいないし!」「しょせんお菓子業界の商戦に乗るだけさ」なんて感じている方もいるのではないでしょうか? 確かにそうかもしれません。しかし、胸の奥から湧き上がるクスクス感やワクワク感は、無いよりも有った方が人生は楽しいような気がします。そう、この浮き足立った気持ちは罪ではないのです!! そこで、そんな「女子力」を高めてくれそうな作品をご用意してみました。
茶封筒のなかみは、N氏に宛てた姉の手紙五通、電報一通、N氏から姉への手紙三通、N氏の日記(大学ノート一冊)、N氏の手帳二冊だった。
(『向田邦子の恋文』本文より)
真珠夫人
菊池寛 / 文藝春秋
2002/08出版
ISBN : 4167410044
価格:¥756(本体¥700)
菊池寛による究極の昼メロ作品です。大正時代に書かれた本書ですが、熱烈にドラマティカルな内容は幾度となく映画化、ドラマ化を繰り返されているんです。実に90年以上も愛され続けているには理由があります。嫁いでも純血を貫き通す、美しく気高い主人公瑠璃子に感情移入して読めば、読後には女子力、妄想力共に2割増になっているに違いない! と思えるハズ。
向田邦子の恋文
向田和子 / 新潮社
2005/08出版
ISBN : 4101190410
価格:¥432(本体¥400)
わざわざいうまでもなく、向田邦子は素敵です。独身女性のバイブルとも言える作品を多く残し、独身のまま夭逝した向田邦子。本書は、彼女の死後20年も経った後、妹の和子さんによって明かされた資料をもとに、ひとりの女性としての向田邦子を妹の視点から描き出した一冊です。作家としてではなく、女性として普段着の向田邦子の世界に身を委ねてみるのも良いかもしれません。
女子をこじらせて
雨宮まみ / ポット出版
2011/12出版
ISBN : 4780801729
価格:¥1,620(本体¥1,500)
本書のタイトルのせいか「○○をこじらせている」といった言い回しが市民権を得たのかもしれません。そのままズバリ、女子をこじらせて非モテからなぜか「職業・AVライター」になった著者、雨宮まみの中・高・大をとおしての回顧録。女子力アップにエンジンがかからぬならいっそ、「押してダメなら引いてみる」的に、色んなことにこじらせまくった本書を読んでみるのも良いでしょう。
二回にわたる「バレンタイン特集」いかがでしたか?
さて、私もそろそろバレンタインに贈る本を決めなくては。そうそう、西洋では、なにも「女性から贈るもの」という前提はなく、バレンタインにはむしろ男性からパートナーに向けて、お花やチョコレート、あるいは物品を贈る習慣なのですよね。それはともかく、これを読んでくださった皆様や、皆様の大事な人たちがハッピーな2月14日を過ごされますように!
(編集部 奥村知花)