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【じんぶんや第72講】ジョン・ホロウェイ選「革命―資本主義に亀裂をいれる」

紀伊國屋書店新宿本店5階の月がわりブックフェア「じんぶんや」、今月選書していただいたのは、初の海外よりの選者となるジョン・ホロウェイさんです。今回は、先日河出書房新社より発売された「革命──資本主義に亀裂を入れる」の翻訳者である高祖岩三郎さんにエッセイをいただきました。

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高祖岩三郎さんエッセイ「ジョン・ホロウェイの亀裂について――3/11以降の東京の女の子のために」

Sabu's Port.jpg 3/11が世界を揺るがせ始めたのは、当書『革命----資本主義に亀裂をいれる』の和訳がおわった直後であった。それ以前においては、当書を貫く、さまざまな意味を含んだ「亀裂」概念は、アラブ世界の諸革命、ヨーロッパ各地の諸蜂起と呼応し、その線で、己を拡張してゆく趨勢を示していた。しかし以後、そこには全く異なった、そして無論、作者ホロウェイも意図していなかった意味性が加味されることとなった。それは「エネルギー至上主義」に駆動された現代資本主義体制の内破と、そこから始まった万人に影響を及ぼす被爆の拡散である。今や亀裂は革命/蜂起から災害へ、そしてさらにアポカリプスとディストピアの様相さえ帯びるようになってしまった。
 そもそもホロウェイもそこここで、留意しているように、彼の本は「亀裂の方法」を自ら発展させてきた闘う民衆が主語であり、かつそれをさらに各々の文脈で実際に発展させてゆく読者に帰属してゆくものである。だからこそ、3/11以降の「亀裂」概念の変容は,日本の読者が担ってゆくべきことなのだ。その意味では、当書の意義は、海の向こうの高尚な思考を遠くから学ぶというよりも、それをわれわれが3/11という前代未聞の危機を出発点として、何処まで使ってゆけるかにかかっている。
 ホロウェイの亀裂とは、何よりも資本主義に、そしてそれが形成する社会性に内包されながらも、それに対する「本性的否定性」としてしか存在しようのない「われわれ」のことである。ホロウェイが強調して憚らないように、その否定性は、方法的な反から感情的な否、そして情緒的な不安定までも含む、幅広い政治,社会、情動の領域を含んでいる。しかしその「否定性」にはーーそれを明らかにしていく過程こそが当書の真骨頂の一つなのだがーー資本主義社会を自ら作りながら、その関与について、機構的に忘却させられている無数のわれわれの主体化の屈折が含まれている。われわれは今や、この方法的過程を3/11以降の資本主義社会に当て嵌めねばならないだろう。それは言うまでもなく、原発とそれに作られ、かつそれを支える大量エネルギー消費社会、エネルギー中心主義に駆動された生産体制を守り抜く為に、原発を止める代わりに、多少の被爆を管理/運営してゆく構えの新しい「世界原子力体制」に絡めとられたわれわれの「否定性」の開示である。この地獄から自らを解放する新しい反資本主義的闘争の本拠は日本以外にはありえない。
 当書の中には、反資本主義的形象の一つとして、仕事を休んで公園で読書する「東京の女の子」が、たびたび現れる。この形象が重要なのは、彼女(ら)こそが、資本主義的管理社会にどこか馴染まない自己の欲動を、最もナイーブに、しかし最もラディカルに肯定する契機として示されているからである。ホロウェイにとっては彼女らこそが世界変革の指標なのである。現在東京では、市民と国家の間で「情報戦争」が闘われている。どこまでも被爆の真実を曖昧化しつづける体制と御用専門家に対して、母親たちを中心とする庶民が、みずからのリサーチ企画を陰に陽に開始した。この闘いは、万人の自己教育であり、科学、医学、テクノロジーを自らの手に捕獲する闘いでもある。そのような民衆による情報と知の獲得にとって、ホロウェイの本と、彼が自ら選んだ読書目録が、一つの思想的土台の役割を担うことを、われわれ訳者は願っている。

ジョン・ホロウェイ(John Holloway)さんプロフィール

John Holloway is a Professor of Sociology at the Instituto de Ciencias Sociales y Humanidades in the Benemérita Universidad Autónoma de Puebla, Mexico. He has published widely on Marxist theory, on the Zapatista movement (especially Zapatista (edited with Eloína Peláez, Pluto Press, London, 1998) and on the new forms of anti-capitalist struggle. His book Change the World without taking Power (Pluto, London, 2002, new edition 2010) was translated into eleven languages and stirred an international debate. His new book, Crack Capitalism, has already been published in four languages and is being translated into a further seven.

メキシコ・プエブラ自律大学社会学科教授。イギリス・リーズ大学地理学科客員教授。
マルクス主義理論、ザパティスタ運動、また反資本主義闘争の新しい形態について、幅広い執筆活動をおこなってきており、前著『権力をとらずに世界を変える』は11ヶ国語に翻訳され、国際的な議論を巻き起こした。
最新刊『革命――資本主義に亀裂をいれる』は、すでに4ヶ国語で出版され、さらに7ヶ国語への翻訳が進行中である。

高祖岩三郎(こうそ・いわさぶろう)さんプロフィール

1954年生まれ。著書に『新しいアナキズムの系譜学』『ニューヨーク列伝』『流体都市を構築せよ!』『死にゆく年、回帰する巷』『資本主義後の世界のために』(共著)、
 訳書にD・グレーバー『アナーキスト人類学のための断章』など。
 


革命資本主義に亀裂をいれる

革命資本主義に亀裂をいれる

ジョン・ホロウェイ、高祖岩三郎 / 河出書房新社
2011/04出版
ISBN : 9784309245461
価格:¥5,076(本体¥4,700)

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 資本主義に亀裂をつくり、誰もがそれをひろげることこそ革命なのだ。ネグリらを超えて世界的な影響力をもつ変革の思想家がはなつ希望の原理。新たな世界のための必読書。

権力を取らずに世界を変える

権力を取らずに世界を変える

ジョン・ホロウェイ、大窪一志 / 同時代社
2009/03出版
ISBN : 9784886836427
価格:¥3,240(本体¥3,000)

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 「私たちが力を得ようとして、党をつくったり、武器を取ったり、選挙に勝ったりしようとするなら、歴史上これまで現れた、さまざまな強者たちと変わらないことになってしまいます」世界の「革命派」に衝撃を与えた話題の書。11ヶ国で翻訳。


ジョン・ホロウェイさん選書・コメント(一部)

Negative Dialectics

Negative Dialectics

Adorno, Theodor W. / Routledge
1990/04出版
ISBN : 9780415052214
価格:¥10,256(本体¥9,497)

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ジョン・ホロウェイさんコメント
Adorno is very difficult to read, but so exciting, because he takes us beyond the critique of political economy to the critique of the most basic philosophical concepts and makes non-identity the driving force in human history.
アドルノは難解だが、たいへん刺激的だ。彼はわれわれを、経済学批判を超えて,最も基本的な哲学概念の批判へと誘い、「否同一性」こそを人類史の動力とする。
※邦訳版はこちら→『否定弁証法

チュ-ビンゲン哲学入門

チュ-ビンゲン哲学入門

エルンスト・ブロッホ、菅谷規矩雄 / 法政大学出版局
1994/03出版
ISBN : 9784588004018
価格:¥4,104(本体¥3,800)

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ジョン・ホロウェイさんコメント
This book was for me the beginning of everything. I read it in the late 1960's and it opened my world and provided me with a very wonderful way into Marxism.
この本は、わたしにとって全ての出発点であった。60年代後半に読んだそれがわたしの世界を開き、大変すばらしいマルクス主義入門となってくれた。
※原書は絶版です

The Principle of Hope (Studies in Contemporary German Social Thought)

The Principle of Hope (Studies in Contemporary German Social Thought)

Bloch, Ernst/ Plaice, Neville (TRN)/ Plaice, Stephen (TRN)/ Knight, Pa / Mit Pr
1995/06出版
ISBN : 9780262522007
価格:¥5,417(本体¥5,016)

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ジョン・ホロウェイさんコメント
Bloch's great work transforms our understanding of history and of every aspect of society by placing the Not Yet in the centre of the present. He teaches us to see and to respect the presence of the thrust towards a different society in so many different aspects of everyday life.
このブロッホの傑作は、「まだない」を現在の中心にすえることによって、われわれの歴史理解、および社会の全ての側面の理解を変容する。彼は、日常生活の実に多くの様相に介在する「異なった社会への趨勢」を,われわれに見ること、尊重することを教えてくれる。
※邦訳版はこちら→『希望の原理

History and Class Consciousness : Studies in Marxist Dialectics -- Paperback

History and Class Consciousness : Studies in Marxist Dialectics -- Paperback

Lukacs, Georg / The Merlin Press Ltd
1975/01出版
ISBN : 9780850361971
価格:¥3,956(本体¥3,663)

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ジョン・ホロウェイさんコメント
Lukács has to be in any list of the most influential books. He raises post-Marx discussion to a new theoretical level, without ever losing the centrality of his political thrust.
ルカーチは、あらゆる影響力のある書籍のリストにも加えられねばならない。彼は自身の政治的推進の中心性を見失うことなく、マルクス以降の議論を新しい次元に押し上げている。
※邦訳版はこちら→『歴史と階級意識

Capital : A Critique of Political Economy (Penguin Classics)

Capital : A Critique of Political Economy (Penguin Classics)

Marx, Karl/ Fowkes, Ben (TRN)/ Mandel, Ernest (INT) / Penguin Classics
1992/05出版
ISBN : 9780140445688
価格:¥2,332(本体¥2,160)

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ジョン・ホロウェイさんコメント
Of course it is still of central importance and must be as long as capitalism exists. But we must read it in a new way, understand it as a theory of struggle.
言うまでもなく、本書は未だに決定的な重要性をもっている。そして資本主義が存続するかぎりそうあらねばならない。だがわれわれはこれを新しい方法で読み、何よりも闘争の理論として理解せねばならない。
※邦訳版はこちら→『資本論

Open Marxism : Dialectics and History

Open Marxism : Dialectics and History

Bonefeld, Werner (EDT)/ Gunn, Richard (EDT)/ Psychopedis, Kosmas (EDT) / Pluto Pr
1992/09出版
ISBN : 9780745305905
価格:¥5,274(本体¥4,884)

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ジョン・ホロウェイさんコメント
This volume edited by my friends (I later joined them in editing volumes 2 and 3 of the same name) begins to develop what we see as our distinctive appoach. We speak of "open Marxism" because we see critique as the opening of categories to reveal them as conceptualisations of struggle.
わたしの友人達が編集したこの1号(そしてわたし自身2号、三号に参加するのだが)は、われわれ独自のアプローチを発展させ始めている。われわれが「開かれたマルクス主義」を語るのは、われわれが「批判」を、諸範疇を闘争の概念化として開いてゆくことと看做すからである。

DISCOURS DE LA SERVITUDE VOLONTAIRE (FOLIOPLUS PHILOSOPHI)

DISCOURS DE LA SERVITUDE VOLONTAIRE (FOLIOPLUS PHILOSOPHI)

LA BOETIE, ETIENNE DE / GALLIMARD
2008/09出版
ISBN : 9782070357710
価格:¥1,162(本体¥1,076)

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ジョン・ホロウェイさんコメント
English translation by Harry Kurz published under the title Anti-Dictator (New York: Columbia University Press 1942), available at
http://www.constitution.org/la_boetie/serv_vol.htm
For me a delightful discovery just a few years ago: La Boétie analyses brilliantly the fragility of power.
英訳は、Harry KurzによってAnti-Dictator (New York: Columbia University Press 1942)として出版された。またそれは http://www.constitution.org/la_boetie/serv_vol.htmでダウンロード可能である。
わたしはこれをつい二三年前に、歓喜の内に発見したのだが、ボエシーの分析は「権力の期弱さ」を見事に分析してくれる。

Eros and Civilization: a Philisophical Inquiry into Freud

Eros and Civilization: a Philisophical Inquiry into Freud

Marcuse, Herbert / Routledge
1998/05出版
ISBN : 9780415186636
価格:¥5,694(本体¥5,273)

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ジョン・ホロウェイさんコメント
Marcuse opens new and exciting perspectives through his critical development of Freud and broadens the horizons of anti-capitalist critique-
マルクーゼは、フロイドを批判的に発展させることで、新しい刺激的な諸視点を開示し、反資本主義的批判の地平を拡張させる。

The General Theory of Law & Marxism (Law and Society Series)

The General Theory of Law & Marxism (Law and Society Series)

Pashukanis, E./ Milovanovic, Dragan (INT) / Transaction Pub
2001/10出版
ISBN : 9780765807441
価格:¥5,267(本体¥4,877)

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ジョン・ホロウェイさんコメント
A wonderfully precise book extending the critique of value to the critique of the state and of law as specifically capitalist forms of social relations. A very brave work, for which Pashukanis eventually lost his life.
価値の批判を、社会関係の特殊資本主義的形態としての、国家と法の批判へと拡張する素晴らしく精巧な仕事である。またパシュカニスがその為に、いずれ命を失うことになった大変勇気ある作品でもある。

Horizontalism : Voices of Popular Power in Argentina

Horizontalism : Voices of Popular Power in Argentina

Sitrin, Marina (EDT) / A K Pr Distribution
2006/12出版
ISBN : 9781904859581
価格:¥2,209(本体¥2,046)

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ジョン・ホロウェイさんコメント
A delightful and engaging book of interviews with participants in the most exciting urban revolt of this century (so far), full of insights into the nature of anti-capitalist struggle today.
これまでの所、21世紀において最も刺激的であった都市蜂起に係わった人々への楽しくかつ情熱的なインタビューを中心に構成された本。今日の反資本主義的闘争の本質について、多くの洞察を含んでいる。

The Revolution of Everyday Life

The Revolution of Everyday Life

Vaneigem, Raoul/ Nicholson-Smith, Donald (TRN) / Rebel Pr
2001/02出版
ISBN : 9780946061013
価格:¥3,103(本体¥2,874)

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ジョン・ホロウェイさんコメント
A book I discovered only in recent years. It combines rigour with passion and imagination. A classic of situationist thought, it is fun to read, just as revolutionary books should be.
わたしは本書をごく最近発見したのだが、それは厳密さを情念と想像力に見事合体させている。シチュアショニストの古典の一つと看做されるこの作品は、革命的な書物が全てそうであるべきように、圧倒的に面白い。

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「じんぶんや」とは?

jinbunya.gifこんにちは。じんぶんやです。
2004年9月、紀伊國屋書店新宿本店5階売場に「じんぶんや」という棚が生まれました。

「じんぶんや」アイデンティティ1
★ 月 が わ り の 選 者
「じんぶんや」に並ぶ本を選ぶのは、編集者、学者、評論家など、その月のテーマに精通したプロの本読みたちです。「世に溢れかえる書物の山から厳選した本を、お客様にお薦めできるようなコーナーを作ろう」と考えて立ち上げました。数多の本を読み込んだ選者たちのおすすめ本は、掛け値なしに「じんぶんや」推薦印つき。
「じんぶんや」アイデンティティ2
★ 月 が わ り の テ ー マ
人文科学およびその周辺の主題をふらふらと巡っています。ここまでのテーマは、子どもが大きくなったら読ませたい本、身体論、詩、女性学...など。人文科学って日々の生活から縁遠いことではなくて、生きていくのに案外役に立ったりするのです。

ご愛顧のほど、どうぞよろしくお願いします。
「じんぶんや」バックナンバー
こちらのページから今までの「じんぶんや」をご覧いただけます。

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【じんぶんや第72講】ジョン・ホロウェイ選『革命──資本主義に亀裂を入れる』
場  所 紀伊國屋書店新宿本店 5Fカウンター前
会  期 2011年7月11日(月)~8月上旬
お問合せ 紀伊國屋書店新宿本店 03-3354-0131

2011.07.11 特集[TOP]  人文 旬な人 東京 関東 じんぶんや 革命