Kinokuniya e-Alert Plus!

	【アメリカのソフト・パワーと戦後日本】 (No.221　2008. 9. 9配信号)

	今回のe-Alert Plus!では、スタンフォード大学出版局から2007年に"Soft Power and Its Perils: U.S. Cultural Policy in Early Postwar Japan and Permanent Dependency." を刊行された大阪大学の松田武教授（大阪大学大学院国際公共政策研究科）に、自著とその関連書をご案内頂きました。世界のパワーバランスの変化によりアメリカの地位が揺らぎつつある中、今後の日米関係を考える上でも非常に有益な書籍リストです。ぜひこの機会に購入をご検討下さい。（★以降は、すべて松田教授のコメントです）

洋書・和書

【1】	松田武著／ソフトパワーとその危険性：戦後初期日本におけるアメリカの文化政策と永久的依存性 Soft Power and Its Perils : U.S. Cultural Policy in Early Postwar Japan and Permanent Dependency (Cold War International History Project Series)
		Matsuda, Takeshi 2007/07 (Stanford Univ Pr) カード決済価格：税込\7,623 / 標準価格：税込\10,395 ISBN：9780804700405

★本書は、このたび日本からの一研究者の「発信」として、アメリカ合衆国から出版された戦後日米文化関係史の書である。

著者は、ジョン・W・ダワーの『敗北を抱きしめて』を読んで触発され、ぜひとも日本人研究者として自分もこのような歴史書を書いてみたいという気持ちを抱きながら、これまで40年余りのアメリカ研究を通して日米関係について考えてきたことを一冊の書物にまとめた。

アメリカのソフト・パワーのもつ明と暗の両面を分析した本書は、その書名の示す通り、日本国民にとりきわめて厄介な問題、すなわち、合衆国に対する依存的態度の問題を扱ったものである。

※本書の日本語版は、『戦後日本におけるアメリカのソフト・パワー ― 半永久的依存の起源』の書名で10月末に岩波書店から刊行予定。

【2】	ジョン・ダワー『敗北を抱きしめて―第二次世界大戦後の日本人』（原書） Embracing Defeat : Japan in the Wake of World War II
		Dower, John W. 2000/08 (W W Norton & Co Inc) カード決済価格：税込\1,969 / 標準価格：税込\3,283 ISBN：9780393320275

	敗北を抱きしめて〈上〉第二次大戦後の日本人 (増補版)
		ダワー，ジョン【著】〈Ｄｏｗｅｒ，Ｊｏｈｎ　Ｗ．〉 / 三浦陽一 / 高杉忠明【訳】 2003/11 (岩波書店) 標準価格：税込\2,730 ISBN：9784000244206

	敗北を抱きしめて〈下〉第二次大戦後の日本人 (増補版)
		ダワー，ジョン【著】〈Ｄｏｗｅｒ，Ｊｏｈｎ　Ｗ．〉 / 三浦陽一 / 高杉忠明 / 田代泰子【訳】 2003/11 (岩波書店) 標準価格：税込\2,730 ISBN：9784000244213

★1945年の日本降伏から51年のマッカーサーの離日までの戦後日本の歩みを豊富な資料に基づいて再構成し、占領下の複雑な可能性に満ちた空間をヴィジュアルに蘇らせたアメリカ人歴史家による日本占領史の傑作である。

本書は、日本現代史の歴史書にとどまらず、国家や民族を超えた人類共通のテーマを、歴史家の批判的精神と民衆に対する温かい思いやりのバランスの取れた視点から扱った、スケールの大きい歴史書で、ピューリッツァー賞をはじめ数多くの賞を受賞した。

【3】	America's Half-Century : United States Foreign Policy in the Cold War and after (American Moment) 2ND Edition
		McCormick, Thomas J. 1995/06 (Johns Hopkins Univ Pr) カード決済価格：税込\2,764 / 標準価格：税込\3,456 ISBN：9780801850110

	パクス・アメリカーナの五十年―世界システムの中の現代アメリカ外交　【絶版・入手不可】
		マコーミック，トマス・Ｊ．〈ＭｃＣｏｒｍｉｃｋ，Ｔｈｏｍａｓ　Ｊ．〉 / 松田武 / 高橋章 / 杉田米行【共訳】 1992/07 (東京創元社) 標準価格：税込\3,150 ISBN：9784488007003

★本書は、「世界システム」の視角からアメリカ合衆国史を世界の中に位置づけるとともに、近代から現在までの長い歴史的脈絡において捉えることにより、20世紀のアメリカの対外関係ならびに戦後のアメリカの覇権を理解する上での必読書であり、スケールの大きいアメリカ対外関係史の書。
著者は米国ウィスコンシン大学でアメリカ外交史を担当した名誉教授。

【4】	『理性ある人びと力ある言葉――大内兵衛グループの思想と行動』（原書） Reasonable Men, Powerful Words : Political Culture and Expertise in Twentieth-Century Japan (Twentieth Century Japan the Emergence of a World Power)
		Hein, Laura Elizabeth 2004/12 (Univ of California Pr) カード決済価格：税込\5,775 / 標準価格：税込\8,662 ISBN：9780520243477

	理性ある人びと　力ある言葉―大内兵衛グループの思想と行動
		ハイン，ローラ・Ｅ．【著】〈Ｈｅｉｎ，Ｌａｕｒａ　Ｅ．〉 / 大島かおり【訳】 2007/07 (岩波書店) 標準価格：税込\5,985 ISBN：9784000255639

★1920年代から戦後までの約半世紀の激動の時代に日本の経済・社会問題に取り組み続けた、大内兵衛を中心とする経済学者6名のグループを軸に、彼らの思想と行動を跡付けることにより、20世紀日本の政治文化とその形成に貢献した社会科学の専門知のあり方を考察した日本現代史の力作。

【5】	Ｊ．Ｓ．ナイ『ソフト・パワー―２１世紀国際政治を制する見えざる力』（原書） Soft Power : The Means to Success in World Politics
		Nye, Joseph S. 2005/04 (Public Affairs) カード決済価格：税込\1,455 / 標準価格：税込\2,425 ISBN：9781586483067

	ソフト・パワー―２１世紀国際政治を制する見えざる力
		ナイ，ジョセフ・Ｓ．【著】〈Ｎｙｅ，Ｊｒ．，Ｊｏｓｅｐｈ　Ｓ．〉 / 山岡洋一【訳】 2004/09 (日本経済新聞社) 標準価格：税込\2,100 ISBN：9784532164751

★「ソフト・パワー」という概念は、数年前に国際政治学者ジョセフ・ナイによってアメリカの内外の国際政治学会に紹介され、世界的に普及した概念である。

本書においてナイは、「ソフト・パワー」を「他国を誘惑しひきつける国の能力」と定義するとともに、国際政治における軍事力・経済力の「ハード・パワー」に対して、それに勝るとも劣らない文化の力の「ソフト・パワー」の重要性を強調した。

本書は「ソフト・パワー」の理論とアメリカの「ソフト・パワー」の実態をわかりやすく解説したものである。なお、松田は、キー・コンセプトの一つとして「ソフト・パワー」の概念を英書 "Soft Power and Its Perils"において使用している。

【6】	アメリカン・センター―アメリカの国際文化戦略
		渡辺靖【著】 2008/05 (岩波書店) 標準価格：税込\2,100 ISBN：9784000220439

★2001年9月11日に発生した同時多発テロ事件以来、国際問題の解決法として軍事力を優先する傾向の強いジョージ・ブッシュ大統領の対外政策に対して、アメリカ国民の幻滅感と閉塞感を反映するかのように、近年、軍事力に代わる、あるいはそれを補完する外交的手法として「ソフト・パワー」、「文化外交」、「パブリック・ディプロマシー（広報外交）」への関心が日本を含め世界各国において高まっている。

本書は、合衆国のパブリック・ディプロマシーの主たる担い手である「アメリカン・センター」の創設から、約半世紀にわたるその活動理念や活動実態の変遷を明らかにし、アメリカ文化外交だけでなくアメリカについて分かりやすくていねいに解説した力作。

【7】	もうひとつの日米関係―フルブライト教育交流の四十年
		近藤健【著】 1992/10 (ジャパンタイムズ) 標準価格：税込\1,835 ISBN：9784789006569

★【絶版・入手不可】　フルブライト教育交流計画は、広島・長崎への原爆投下に触発されたフルブライト議員が構想し立案した合衆国政府の文化交流計画である。

本書はそのフルブライト教育交流計画の四十年の軌跡をたどり、人と人との交流による「国際関係の人間化」をめざしたフルブライト議員の確固とした理念や思想を明らかにしている。

また、人と人との接触、出会いがその国を知り文化を知る上でいかに大切であるか、そして世界の人々が平和に暮らしていくには、すべての社会を結びつける共通の人間性を知覚することの重要性を力説している。

長期的な視野に立って人的育成を重視する合衆国の文化外交の成功例である、フルブライト教育交流計画を扱った、一般読者にとっても読みやすい書である。

【8】	日米戦後関係史（パートナーシップ）１９５１‐２００１
		入江昭 / ワンプラー，ロバート・Ａ．【編】〈Ｗａｍｐｌｅｒ，Ｒｏｂｅｒｔ　Ａ．〉 / 細谷千博 / 有賀貞【監訳】 2001/09 (講談社インターナショナル) 標準価格：税込\3,990 ISBN：9784770028457

★本書は、サンフランシスコ講和条約締結五十周年を記念し、日米友好関係の更なる発展への願いを込めて、アメリカにおける日米関係の第一線の研究者によって書かれた。

本書は、第二次世界大戦後の日米関係の諸相 ― 政治、安全保障、経済や文化に関する出来事―を多角的に扱い、戦後五十年にわたる日米関係の歴史的位置づけを試みた、極めて質の高い歴史書となっている。国際関係の研究者をはじめ、一般読者にとっても日米関係史に関する必読の書である。

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