| 【「文明の衝突」論時代におけるマックス・ヴェーバー】 (No.169 2007.12.14配信号) |
今回のe-Alert Plus!は、この12月に新刊「マックスヴェーバー ―ある西欧派ドイツ・ナショナリストの生涯」を 東京大学出版会から上梓された愛知県立大学外国語学部准教授・今野元氏がご選定くださった「マックス・ヴェーバー論」に関する書籍のご紹介です。 なお、当該の新刊書に関しては、今野氏からは下記のようなコメントをお寄せいただいています。 『911同時多発テロ以後の世界では、ブッシュ米政権の対テロ戦争が批判され、「文明」の「野蛮」に対する 闘争、デモクラシーや人権の名における「ならず者国家」への内政干渉が問題視されている。 けれどもそこで見逃せないのは、こうした「強者の普遍主義」は、ブッシュ政権やアメリカ合衆国に固有の 営みではなく、むしろ世界史において幾度となく繰り返された現象であり、とりわけヨーロッパ史では日常茶 飯事だったということである。近代ヨーロッパ政治史において、そうした「強者の普遍主義」の標的にされ、 また自ら「強者の普遍主義」の担い手ともなった両義的な国の一つに、ドイツがある。 本書は、社会科学者マックス・ヴェーバー(1864-1920)の政治評論家としての生涯を、公刊・未公刊史料に よって丹念に描写し、「文明」と「野蛮」の間で翻弄されたドイツ帝国の政治史を回顧する試みである。』 ご紹介頂いた関連書7点のいずれも、さまざまな視点からヴェーバー及び関連問題を論じているものです。この機会に、あわせてご購入をご検討いただければ幸いです。 |
1.新刊『マックス・ヴェーバー ある西欧派ドイツ・ナショナリストの生涯』 |
【1】 | マックス・ヴェーバー―ある西欧派ドイツ・ナショナリストの生涯 | |
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今野元【著】 2007/12 (東京大学出版会) 標準価格:税込\9,975 ISBN:9784130362306 |
★ドイツの近代化と歩を同じくして生涯を駆け抜けた知的巨人は如何に格闘したか? 激動の時代、ドイツ存亡のため西方と東方の間で右往左往し、将来を悲観しつつ失意のなかで世を去ったヴェーバー波瀾の生涯を、未公刊史料を踏まえて克明に描き出す。斬新なヴェーバー論にして伝記の決定版。 序章 西欧主義の脱構築 第1章 政治的人格の形成 1864年−1892年 第2章 プロイセン・ユンカーとの対決 1982年−1904年 第3章 ドイツの人間的基礎への批判 1904年−1914年 第4章 第一次世界戦争での奮闘 1914年−1918年 第5章 失意の死 1918年−1920年 終章 知性主義の逆説 |
2.関連書 |
*以下の★印二つから始まるコメントは、今野 元氏のものです。 |
【1】 | マックス・ヴェーバーとポーランド問題―ヴィルヘルム期ドイツ・ナショナリズム研究序説 | |
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今野元【著】 2003/11 (東京大学出版会) 標準価格:税込\7,560 ISBN:9784130362207 |
★★本書の原型となった歴史研究。政治評論家ヴェーバーのポーランド、ロシアとの愛憎渦巻く関係を克明に再現。 ★ドイツ帝国最大の問題のひとつであるポーランド問題にヴェーバーはいかに関わったのか。ポーランド人農業労働者の排除を唱導した前半生と、「ロシアの脅威」への対抗を重視した後半生とに焦点を当て、ヴェーバーにおけるドイツ・ナショナリズムの展開を跡付ける。 |
【2】 | 回想のマックス・ウェ−バ− 同時代人の証言 | |
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安藤英治 / 亀嶋庸一 2005/07 (岩波書店) 標準価格:税込\3,360 ISBN:9784000224529 |
★★ハイデルベルク、ミュンヘン時代の弟子たちが語るマックス・ヴェーバーの素顔。安藤英治の貴重なインタヴュー・テープ(1969年・70年)を初公刊。 |
【3】 | マックス・ヴェーバー入門 (岩波新書) | |
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山之内靖【著】 1997/05 (岩波書店) 標準価格:税込\819 ISBN:9784004305033 |
★★ヴェーバーを「近代批判者」とみなしつつ、「西洋中心主義者ヴェーバー」という解釈を疑問視する、本書とは異なる立場のヴェーバー論。 ★従来無視されてきたニーチェとの親縁性を明らかにし、ヴェーバー社会学の方法を解きほぐしながら、西欧の合理化過程が生みだした近代社会に根本的批判の目をむけ、知の不確実性を正面から見据えたヴェーバーの根本思想を浮き彫りにする。ヴェーバー像のラディカルな書き換えを迫る本格的入門書。 |
【4】 | 近代啓蒙批判とナチズムの病理―カール・シュミットにおける法・国家・ユダヤ人 | |
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佐野誠【著】 2003/12 (創文社) 標準価格:税込\7,140 ISBN:9784423710579 |
★★ナチズムの「桂冠法学者」カール・シュミットと対置することで、ヴェーバーがナチズムから縁遠い人物であることを強調しようとする歴史研究。 ★20世紀を体現した思想家カール・シュミットの近代批判・近代啓蒙批判を、シュミットが影響を受けた、あるいは論敵であった思想家、とりわけマックス・ヴェーバーの学問論や法・政治論との比較を通じて、またナチスの反ユダヤ主義や安楽死計画との関連を通じて浮き彫りにし、近代啓蒙批判とナチズムの病理・野蛮性との思想史的連関性を詳細に描き出す。ナチズムに代表される近代の生態を、未公刊の資料を駆使し複眼的な視角から解明、更に後世への歴史的教訓を引き出した画期的作品。 |
【5】 | ヨーロッパとイスラーム―共生は可能か (岩波新書) | |
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内藤正典【著】 2004/08 (岩波書店) 標準価格:税込\735 ISBN:9784004309055 |
★★トルコ人に熱い共感を懐きつつ、ヨーロッパ諸国のイスラム系移民の置かれた状況を比較し、とりわけドイツの(西欧に対する)後進性、排外性を強調する、時事評論。 ★ヨーロッパ先進諸国に定住するムスリム人口は、二世、三世を含め今や一千万近くといわれている。増加と共に目立つようになってきた受け入れ国社会との摩擦は、何に由来するのだろうか。各国でのフィールドワークを踏まえて、公教育の場でのスカーフ着用をめぐる軋轢などの現状を報告し、異なった文明が共生するための可能性を探る。 |
【6】 | 現代ドイツ―統一後の知的軌跡 (岩波新書) | |
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三島憲一【著】 2006/02 (岩波書店) 標準価格:税込\819 ISBN:9784004309949 |
★★左派知識人の目線で文化的・宗教的・人種的アイデンティティを「知的」に門前払いしつつ、同時に「強者の普遍主義」をも批判し、盟友ハーバーマスが混迷打開の「知的」切り札であることを確信するという、本書とは異なる立場の時事評論。 ★統一から現在まで、ドイツの公共圏を揺るがした議論とは何だったのか。東独の過去の問題、統一にともなう様々な困難、外国人への差別と暴力、ナショナリズムの高揚、さらにはNATOの域外派兵、アフガニスタン出兵とイラク戦争をめぐる激烈な議論など、現代ドイツの政治と社会に関する知識人の議論を紹介する。 |
【7】 | ポスト世俗化時代の哲学と宗教 | |
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ハーバーマス,ユルゲン〈Habermas,J¨urgen〉 / ラッツィンガー,ヨーゼフ【著】〈Ratzinger,Joseph〉 / シュラー,フロリアン【編】 / 三島憲一【訳】 2007/03 (岩波書店) 標準価格:税込\1,890 ISBN:9784000247580 |
★★文化的・宗教的・人種的アイデンティティを門前払いする「社会哲学者」ハーバーマスと、明快な保守路線で知られる現ローマ教皇ベネディクトゥス一六世(当時教理聖省長官)との一騎打ちの記録。ハーバーマスに加勢する三島のラッツィンガー批判も必見。 ★現代を代表する哲学者と当時枢機卿であった現ローマ教皇とが、「自由な国家における、政治以前の道徳的基盤」をめぐって行った初めての討論会の報告。現在ますます切実となる「民主主義国家において宗教的伝統をいかに評価するか」という問題に、それぞれの立場から答える。訳者による解説論文を付す。 |
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