※電子書籍のリストです。冊子体ではありませんので、ご注意ください。
 
ヴァージニア・ウルフ/出淵敬子
三ギニー 戦争と女性
戦争を未然に防ぐために、女性には何ができるか?貴重な三ギニー貨幣をどこに寄付すればよいのか?ヴィクトリア朝の家父長制の偽善とファシズムのイデオロギーを比較・批判し、反戦の基本的な構想を展開する。女性と文学を扱った『自分だけの部屋』と並ぶ、ウルフの代表的長編エッセイ。
2200円(税抜)ヴァージニア・ウルフコレクション

アントアーヌ・ド・サン・テグジュペリ/山崎庸一郎
サン=テグジュペリ・コレクション 2
「わたしは作者にたいして、わたしにとってかなりの心理学的重要性を有するつぎの逆説的真理を明らかにしてくれたことをとくに感謝している。それは、人間の幸福は自由のなかにではなく、義務の受諾のなかにあるということだ。この書物の登場人物のひとりひとりは、おのれがなすべきこと、その危険な任務に、情熱的かつ全面的に身を捧げ、それを遂行したあとにはじめて、幸福の安らぎを見出す……」(アンドレ・ジッド 序文より)冷厳な態度で郵便飛行事業の完成をめざす支配人リヴィエールと、パタゴニアのサイクロンと格闘する飛行士ファビアン、それぞれの一夜を追いながら、緊迫した雰囲気のなかで夜間の郵便飛行開拓時代の叙事詩的神話を描いた本書は『星の王子さま』とならんで、サン=テグジュペリの名を世界中に知らしめた代表作である。南米ブエノス・アイレスの地に、主人公と同様、郵便飛行の支配人として赴任していた時期に執筆され、1931年度のフェミナ賞に輝いた。特別付録 ディディエ・ドーラ「『夜間飛行』に着想を与えた人物から見た」
1200円(税抜)サン=テグジュペリ・コレクション〈2〉

アントアーヌ・ド・サン・テグジュペリ/山崎庸一郎
サン=テグジュペリ・コレクション 5
〈戦時の記録〉全3冊は、ミュンヘン協定(1938)の直後にはじまり、第二次大戦勃発後のサン=テグジュペリの最後の日々をたどる。その第1巻である本書は、33?2飛行大隊の一員として任務に赴いたのち、パリ占拠とヴィシー政府の樹立、独仏休戦を経て、動員解除を受けてアメリカへ渡り、かの地で合衆国参戦を迎えるまでを収める。ニュのこされた覚え書や手紙、また、レオン・ヴェルトやアン・モロウ・リンドバーグをはじめ、彼をめぐる人々による証言が、当時のサン=テグジュペリの面影を生彩豊かに伝える。
2200円(税抜)サン=テグジュペリ・コレクション〈5〉

アントアーヌ・ド・サン・テグジュペリ/山崎庸一郎
サン=テグジュペリ・コレクション 6
『戦時の記録』3分冊の第2冊目にあたる本書は、1942年から1943年までのサン=テグジュペリをめぐる資料、証言を収める。苦渋の選択の結果であった合衆国亡命の日々に、連合軍の北アフリカ上陸の報に接し、歓びのうちに発表された「まずフランスなのだ」。近年になってはじめて完全に公表された「アンドレ・ブルトンへの手紙」を新たに加え、〈戦時の記録〉全3冊は、ミュンヘン協定(1938)の直後にはじまり、第二次大戦勃発後のサン=テグジュペリの最後の日々をたどる。
2200円(税抜)サン=テグジュペリ・コレクション〈6〉

アントアーヌ・ド・サン・テグジュペリ/山崎庸一郎
サン=テグジュペリ・コレクション 7
「ここでは憎しみに浸かりきりというわけではないが、やはりちょっぴり人間的悲惨を感じている。ともに語り合う人間がだれもいない。……なんという精神的孤独だろう。撃墜されたとしても絶対になに一つ後悔しないつもりだ。未来の蟻塚の世界はわたしを恐怖させる。……」『戦時の記録』三分冊の最終巻をなす本書は、1943年11月から1944年7月までを収める。
2200円(税抜)サン=テグジュペリ・コレクション〈7〉

シャルル・ルイ・フィリップ/山田稔
小さな町で
フィリップは早すぎる死の一年あまり前から、パリの大新聞ル・マタン紙に短い物語を書いた。依頼したのはのちに劇作家になるジロドゥーである。小さな町セリイを舞台にした短編集28篇の全訳に『朝のコント』からの5篇を付した改訳決定版。
1900円(税抜)大人の本棚

ジョン・ステュアート・ミル/村井章子
ミル自伝
ジョン・スチュアート・ミルという存在を一言で表すのは難しい。多産のジャーナリスト、才気あふれる論理学者、哲学者、自由主義的な下院議員、最初の夫人参政権論者……「ヴィクトリア時代の火つけ役」とも呼ばれるミルは、父ジェームズの功利主義者のチャンピオンとしての志を継ぐべく父による英才教育を受ける。ベンサム、リカード等と付き合い、同時代の社会思想のみならず、明治以来の日本にも大きな影響を与えた思想家による自伝の古典が、格段に読みやすい新訳で登場。
2200円(税抜)大人の本棚

亀山郁夫
『悪霊』神になりたかった男
ドストエフスキーの全作品でもっとも危険とされる「スタヴローギンの告白」(小説『悪霊』より)。作家の全人格が凝集されているこのテクストには、人間の〈堕落〉をめぐる根源的ともいえるイメージが息づいています。文学のリアリティとは、人間の可能性とは?一人の男がさまよいこんだ精神の闇をともに探究してみましょう。
1000円(税抜)理想の教室

吉永良正
『パンセ』数学的思考
パスカルの言葉は知っているだろう。「人間は考える葦である」とか「この無限の空間の永遠の沈黙がわたしをおびえさせる」とか。ふだんは、モラリストやキリスト者としての面ばかり語られるパスカル。だがその思想は、徹頭徹尾、数学的思考をベースにしている。『パンセ』から最新の宇宙論やフラクタルへ。理科系の哲学入門。
1000円(税抜)理想の教室

三原弟平
カフカ『断食芸人』〈わたし〉のこと
芸人にとって断食はしかたなかった。なぜなら「口にあう食べものを見つけることができなかったから」。『変身』のカフカによるこの短編をよく読んでみれば、そこにはラストメッセージとしての奇譚がくっきり浮かび上がる。不幸であることを書いて寓話になりきれない〈わたし〉の文学に、いまこそ私たちの世界が追いついた。
1000円(税抜)理想の教室

小沼純一
バッハ『ゴルトベルク変奏曲』世界・音楽・メディア
200年以上も前のドイツで書かれたこの曲を、21世紀の日本にいる「わたしたち」はなぜ好きなんだろう? 楽譜というメディアを通して、弾いたり、聴いたり、分析したりしながら、「わたしたち」は何をわかるのだろう? そもそも、わかるって、なに? 男女複数の声による「対話」が、音楽の中へ外へと誘ってくれます。
1200円(税抜)理想の教室

巽孝之
『白鯨』アメリカン・スタディーズ
「世界名作十大小説」に必ず入る『白鯨』。この物語は、魔獣モビイ・ディックへの単なる復讐譚ではない。時空を越えて現れる巨大生物が象徴するものとは何か?ここに19世紀から21世紀へ至るアメリカ文明史を、そしてグローバルな現代史をスリリングに読み解く。新訳相次ぐ現在、アメリカ研究の第一人者が満を持して贈る。
1000円(税抜)理想の教室

名和小太郎
エジソン理系の想像力
なぜ今、エジソンか?現在、どの技術分野でも「モノ離れ」が進み、コンピュータ内実験が全盛です。この流れのなかで、あえて「モノづくり」の魅力を考えてみる、これが今回の講義の狙いです。抜群の知名度に反して、実はよく伝えられていない側面も多いエジソン。その革新性と保守性について、工学の専門家が、まったく新しい切り口で解説します。19世紀のビル・ゲイツとも言えるエジソン、その矛盾をはらんだ仕事と人物像を、当時の資料を駆使して浮彫に。発明誕生の臨場感をリアルに描いた本格的な入門書です。
1200円(税抜)理想の教室

野村喜和夫
ランボー『地獄の季節』詩人になりたいあなたへ
「言葉の意味は一瞬である。だが言葉の実在の輝きは永遠である」天才詩人ランボーの『地獄の季節』は、いまなお最高の「現代詩入門」です。詩人になりたい人へ向けて、この「詩と格闘する詩人の物語」を鮮やかに再現します。詩人の心構え、詩的言語の独自性がまっすぐに伝わる本書で、あなたも実作への扉を開けてください。
1200円(税抜)理想の教室

M.グッドウィン
エコノミックスーマンガで読む経済の歴史
資本主義の誕生から金融危機まで世界の経済350年史。ユーモラスなコマを追えば経済の実態が一目瞭然。世界17ヵ国でロングセラー世界の経済をマンガで語る、初の試み。それが『エコノミックス』。いまだかつて誰も描かなかった経済マンガ、350年にわたる歴史と今を語る『エコノミックス』。ユーモラスなコマを追えば、経済の実態と課題が一目瞭然。
3200円(税抜)

アトゥール・ガワンデ
死すべき定めー死にゆく人に何ができるか
人類史上最も人の寿命が長くなった今、医師やまわりの人は死にゆく人に何ができるか?北米でベストセラーとなった迫真の人間ドラマ。人類史上もっとも人の寿命が長くなった今、医師やまわりの人は死にゆく人に何ができるのだろうか?全米で75万部のベストセラーとなった迫真の人間ドラマ。現役外科医にして「ニューヨーカー」誌のライターでもある著者ガワンデが、圧倒的な取材力と構成力で読む者を引き込んでゆく医療ノンフィクション。
2800円(税抜)

アラン/橋本由美子
小さな哲学史
アランの「哲学史」といっても、均等な時間区分に従って哲学者とその思想を概説し、展覧したものではない。エッセイ風の哲学案内でもない。古代ギリシャから、デカルト、スピノザ、ライプニッツ、ヒューム、カント…アランはそれぞれの哲学者たちから、ひとつの「精神」を抽出してみせる。それらは、みずからの宇宙を完結しているようでいて、つぎの精神へと扉をひらき、道をつける。おのおのの「精神」を珠として、一本の糸で貫いたような趣がある、不思議な、小さな書。
2200円(税抜)

ヴィクトル・エミール・フランクル/霜山徳爾
夜と霧 ドイツ強制収容所の体験記録
精神科医ヴィクトール・フランクルが、ナチス・ドイツの強制収容所に囚われたみずからの体験をつづり、極限状況におかれた人間の尊厳の姿を余すところなく描いた『夜と霧』。世紀をこえ、世代をこえて、読み返され、読みつがれています。霜山徳爾訳は、終戦から11年めだった1956年夏の初版以来、日本でながく読みつがれてきています。当時、ホロコースト(ショアー)やアウシュヴィッツのことはまだよく知られていませんでしたので、ドイツ語版にはない解説や写真資料を日本で独自に加えて編集されました。
1500円(税抜)

ヴィクトル・エミール・フランクル/池田香代子
夜と霧 新版
精神科医ヴィクトール・フランクルが、ナチス・ドイツの強制収容所に囚われたみずからの体験をつづり、極限状況におかれた人間の尊厳の姿を余すところなく描いた『夜と霧』。世紀をこえ、世代をこえて、読み返され、読みつがれています。新版(2002年刊)は、この永遠の名著を21世紀の若い読者にも伝えつづけたいという願いから生まれました。フランクル自身が大幅な改訂をほどこした1977年のドイツ語版にもとづく、真新しい翻訳です。
1200円(税抜)

エドマンド・フェルプス
なぜ近代は繁栄したのかー草の根が生みだすイノベーション
繁栄の個人主義、停滞のコーポラティズム。ノーベル経済学賞受賞者が、近代的繁栄の源泉を価値観/文化の転換に探究する独創的提言。
5600円(税抜)

エドワード・サイデンスティッカー/山口徹三
谷中、花と墓地
「どの国においても、墓地は美しい。東京の墓地も例に漏れない。しかし、私の見た限りでは、ほかの国では見られない特色がいくつかある。東京は湯島に住みなして、三社祭の見世物化を憂い、四季の桜・藤・朝顔を愛でながら、浮世を眺め暮らす。古今の日本文化を味得したアメリカ生まれの文人による極上の随筆34篇。
1900円(税抜)

ディーン・カーラン/ジェイコブ・アペル【著】清川幸美【訳】澤田康幸【解説】
善意で貧困はなくせるのか?ー貧乏人の行動経済学
“社会実験”+“行動経済学”が世界を救う。イェール大学教授と現場のリサーチャーが最前線のフィールド研究から教えてくれる貧困削減のためのアイデアが満載。
3000円(税抜)

ダニエル・L.エヴェレット/屋代通子
ピダハンー「言語本能」を超える文化と世界観
数もなく色名もない、神の概念もない、ピンカーの「言語本能」説にも収まらない! 我々の普遍幻想を揺さぶるピダハン族の世界を探る。
3400円(税抜)

ダン・サヴェージ/大沢章子
キッドー僕と彼氏はいかにして赤ちゃんを授かったか
ゲイのユーモア作家ダン・サヴェージと彼の伴侶テリーが、「開かれた」養子縁組によって息子を迎えた経験を綴る痛快ノンフィクション同性カップルが養子縁組によって子どもを迎えるまでの事の次第を等身大で綴った痛快ノンフィクション。前例のないさまざまなステップを踏破して、ついに愛する息子D・Jの親になるまでの自身の体験を、機知とユーモアたっぷりに語る。
3200円(税抜)

アンガス・ディートン/松本 裕
大脱出ー健康、お金、格差の起原
世界はより良くなっている?より豊かになり、より健康になり、平均寿命は延びている。しかしその反面、貧困という収容所から「大脱出」を果たせずに取り残された国や人々がいる。産業革命以来の経済成長は、大きな格差も生んだのだ。経済発展と貧しさの関係について最先端で研究を続けてきた著者が、250年前から現在までを歴史的にたどりながら、成長と健康の関係を丹念に分析することで、格差の背後にあるメカニズムを解き明かす。
3800円(税抜)

トマ・ピケティ
21世紀の資本
 
4400円(税抜)

ニック・レーン/斉藤隆央
生命、エネルギー、進化
生とは何か?その答えは、プロトン駆動力などの生体内エネルギーの制約から導き出せる……圧倒的なスケールで展開する生命進化論。高い評価を得た『ミトコンドリアが進化を決めた』の著者が、当時の理論を直近十年余の研究に基づいてバージョンアップし、進化史の新たな切り口を問う一冊。最前線の研究者の感じているスリルと興奮を体感できる、圧倒的な読み応えの科学書。
3600円(税抜)

アビジット・V.バナジー/エスター・デュフロ/山形 浩生
貧乏人の経済学ーもういちど貧困問題を根っこから考える
貧困研究は、ここまで進んだ。単純な図式(市場vs政府)を越えて、現場での精緻な実証実験が明かす解決策。
3000円(税抜)

ハンナ・アーレント/山田正行
暴力についてー共和国の危機
ベトナム戦争、プラハの春、学生運動…1960年代後半から70年代初頭にかけて全世界的な広がりをみせた騒然たる動向を、著者は亡命の地・アメリカ合衆国でどのように考えていたか。「国防総省秘密報告書」を手がかりに嘘と現実(リアリティ)とのあり方を論じた「政治における嘘」、暴力と権力との相違をテーマにした「暴力について」、さらに「市民的不服従」など、本書は、情況への鋭い発言のかたちをとりながら、われわれとわれわれを取りまく世界への根本的な問いを投げかけている。
3200円(税抜)

ブランコ・ミラノヴィッチ/立木勝
大不平等ーエレファントカーブが予測する未来
新理論と実証で、所得分布の大変動を描きだす、新しい経済学。2016年『エコノミスト』『フィナンシャル・タイムズ』ベストブック。
3200円(税抜)

フランツ・ファノン【著】鈴木道彦/浦野衣子【訳】
地に呪われたる者
民族とは、国家とは、文化とは。植民地主義に抗し生涯を捧げた著者のメッセージ。ポストコロニアル批評の原点。
3800円(税抜)

ブレイディみかこ
子どもたちの階級闘争ーブロークン・ブリテンの無料託児所から
UKの貧困地区における保育の現場から、子どもたちと親たちの進行形の闘いを通して「上と下」「自己と他者」の分断が進む今を描く。「わたしの政治への関心は、ぜんぶ託児所からはじまった。」英国の地べたを肌感覚で知り、貧困問題や欧州の政治情勢へのユニークな鑑識眼をもつ書き手として注目を集めた著者が、保育の現場から格差と分断の情景をミクロスコピックに描き出す。
2400円(税抜)

外岡秀俊
傍観者からの手紙 From London 2003ー2005
「他人の言葉に対する寛容は時に、自分が言葉に重きを置かない人の怠慢の証です。怒りを忘れない人は、言葉で戦っている人は、日本に住むあなたの周りにいるでしょうか」「ロンドンの事件の前後にも切れ目なく、イスラエルやイラクからは自爆テロや戦闘による死傷の報道が流れています。昨日もまた、イラクでタンクローリーを使った自爆テロが起き、70人以上が亡くなりました。9・11事件後、世界中を覆い始めた社会の砂漠化が、とうとうロンドンにまで来てしまった。残念ですが、それが実感です」2003年3月、イラク戦争前夜。朝日新聞ヨーロッパ総局長としてロンドンにデスクを構えていた著者から、一通の手紙の形式で原稿が送られてきた。「この手紙が届くのは一カ月後です。瞬時に地球の裏側に電子メールが届くいま、なぜそんな悠長なことを、と思われるかもしれません。ただ私は、そんな時代にこそ一月遅れの手紙が新しい意味をもつような気がします。」以来、2005年7月のロンドン同時多発テロ事件まで55通。歴史や文学作品というフィルターを通しながら、現場の取材と困難な時局の分析を記した本書は、ひとつの時代のかたちを定着させようとする試みでもある。
1600円(税抜)

外山健太郎
テクノロジーは貧困を救わない
インドマイクロソフト研究所での実践が生んだ結論は「さよなら技術信仰」。単純な技術導入楽観主義を超えた新たな貧困解決への処方箋マイクロソフト・リサーチ・インドでの実践が生んだ、新たな解は《人そのもののアップグレード》だった。人に焦点を当てた、ガーナのリベラルアーツ教育機関「アシェシ大学」、インド農民に動画教育をおこなう「デジタル・グリーン」、低カーストの人々のための全寮制学校「シャンティ・バヴァン」などを紹介しながら、社会を前進させるのは、テクノロジーではなく、人間の知恵であることを語りつくす。
3500円(税抜)

外山滋比古
忘却の力 創造の再発見
「近代社会は知識信仰が根強い。知識は広ければ広いほどよく、多ければ多いほどよいときめてかかっている…。実際、若いときはすばらしく創造的であった人が、知識がふえ、経験を積むにつれて力を失っていく例はいたましいほど多い…。過ぎたるはなお及ばざるごとし(『論語』)は、知識においても妥当する。肥満は運動によって解消するらしいが、知識メタボリック症候群において、運動に当るものは、忘却であろうが、忘れることは、散歩などに比べて格段に難しいのである」現代の人間にとって、記憶以上に大切なものは忘却である。
2000円(税抜)

外山滋比古
あたまの目ー人生の見かた
遠いひとより身近なひとのほうがよくわかると、われわれは思っているが、はたしてそうか? 召使いが天才を、親が子を、赤の他人よりも理解しているだろうか? また昭和は江戸時代よりも鮮明だろうか? ひとの日常はまことにパラドックスにみちていて、一筋縄ではいかない。人生にはよく見えない死角があるのだ。本書は、ちょっと知的な心の目で、人間生活の核心をとらえた、役に立つ人生へのヒントである。
1400円(税抜)

荒川洋治
世に出ないことば
『夜のある町で』『忘れられる過去』につづくエッセイ集である本書『世に出ないことば』について、あとがきで著者は、こう書いている。「読書が、この本の中心になった。いろんな作品を読み、以下のことを感じた。文章は、どの人のものも、ことばという木の葉をいくつか、ときには、いっぱいつけて出てくる。身がかくれるようないでたちで、登場する。書きたくはなかったこと、そうは思えなかったこと、急だったこと、いまは埋めておきたいこと、このあとで気づくことになることなどが、あるためだろう。そのあたりは光が足りず、なかなか決められないものだ。文章にも、ことばひとつにも、世に出ない世界があるのだ。そのまわりを歩いた。木の葉をつけて、歩いてみた。」
2000円(税抜)

荒川洋治
夜のある町で
詩集『渡世』で高見順賞を受けた現代詩作家による、待望のエッセイ集。明るく繊細な文章で書き留められているのは、ゆっくりと、でも確実に変わっている世相と社会、食べ物、作家や本のことである。それをつらぬく思いはひとつ、この国が失っているのは心である前に、まずは言葉なのだということ。その場その場で人間らしくあるために、言葉はある。あきらめ多き人生にあって、知恵と勇気をあたえてくれる、文学の実用書。
2000円(税抜)

山本義隆
福島の原発事故をめぐって いくつか学び考えたこと
税金をもちいた多額の交付金によって地方議会を切り崩し、地方自治体を財政的に原発に反対できない状態に追いやり、優遇されている電力会社は、他の企業では考えられないような潤沢な宣伝費用を投入することで大マスコミを抱き込み、頻繁に生じている小規模な事故や不具合の発覚を隠蔽して安全宣言を繰りかえし、寄付講座という形でのボス教授の支配の続く大学研究室をまるごと買収し、こうして、地元やマスコミや学界から批判者を排除し翼賛体制を作りあげていったやり方は、原発ファシズムともいうべき様相を呈している。
800円(税抜)

小沢信男
通り過ぎた人々
花田清輝に見いだされ、学生のころより新日本文学会に加わり、2005年3月の解散時まで半世紀にわたって在籍した著者が、そこで出会った人々の思い出を書き残しておきたいと綴った。井上光晴、小野二郎、菅原克己、藤田省三ほか、とりあげられた18名はすべて物故者。新日本文学会とはなんだったのか。軽妙なタッチでペーソス豊かに描かれた追悼録から、戦後日本を代表する文学運動体の盛衰が浮かび上がる。
1900円(税抜)

森まゆみ
森のなかのスタジアムー新国立競技場暴走を考える
日々新聞を賑わせている新国立競技場問題。2020東京オリンピック招致以前から現在まで疑義を呈し続けてきた著者が描く全貌と課題。2011年ラグビー議連の決議に始まり、デザイン・コンクールでのザハ・ハディド案決定、今日に至るまで、あまりに杜撰な経済、建築、環境、景観、住民問題など、国民の多くの反対にもかかわらず突き進んだ新国立競技場建設。安倍首相による白紙撤回以後も事態はまったく見えていない。事の始まりから現在、そして未来まで、この暴挙の全貌と何が大切かを、この問題を最も知る著者が描く。関連年表はじめ資料も収録。
2400円(税抜)

神谷美恵子
生きがいについてー神谷美恵子コレクション
 
1200円(税抜)

青柳いづみこ
水の音楽 オンディーヌとメリザンド
ラヴェルの『夜のガスパール』から第一曲「オンディーヌ」を弾き終わったとたんに、先生から「もっと濃艶に歌って弾くように」と注意された。でも、この曲を高踏的に、人に媚びず、自身の美しさで聴くひとを惹きつけずにはおかないように弾いてみたい。あたかもドビュッシーの『ペレアスとメリザンド』のヒロインのように。この主題をめぐる逍遥はギリシャから中世をへて19世紀末にいたる。水のイメージと「ファム・ファタル(宿命の女)」の観念が結びついたとき、絵画、文学、音楽で続々とあらわれるヒロインたち。
2400円(税抜)

斉藤道雄
悩む力ーべてるの家の人びと
北海道、浦河。襟裳岬に近い過疎の町に「べてるの家」がある。精神障害を抱える人たちがみずから共同住居と作業所をいとなんで、長い年月が過ぎた。特産の昆布からさまざまな商品を作って売る。これがべてるの活動の根幹である。そのユニークな自己表現は全国から注目を浴び、地域社会とともに新しい道をさぐる姿に共感が集まっている。無理はしなくていい。治さなければと焦ることはない。「そのままでいい」のだ。悩みを持つ仲間と語り合い、ともに過ごす。そこには弱さを絆にした豊かな人間関係が息づいている。
1600円(税抜)

斉藤道雄
治りませんようにーべてるの家のいま
精神障害やアルコール依存などを抱える人びとが、北海道浦河の地に共同住居と作業所〈べてるの家〉を営んで30年。べてるの家のベースにあるのは「苦労を取りもどす」こと。保護され代弁される存在としてしか生きることを許されなかった患者としての生を抜けだして、一人ひとりの悩みを、自らの抱える生きづらさを、苦労を語ることばを取りもどしていくこと。べてるの家を世に知らしめるきっかけとなった『悩む力』から8年。 浦河の仲間のなかに身をおき、数かぎりなく重ねられてきた問いかけと答えの中から生まれたドキュメント。
1600円(税抜)

斉藤道雄
手話を生きるー少数言語が多数派日本語と出会うところで
手話という少数言語。手話が存在することによって、聞こえない。ろう児は、ろう児として、そのままの自分で、聞こえる子とおなじように学び、遊び、よろこび、悲しみ、育つことができる。ろう教育の歴史、手話という言語が乗り越えてきた、そして今も向き合っている困難、言語学からみる手話、人工内耳など近年の最新動向……ろう者・ろう児とその親、教育者、日本手話の話者・通訳者、手話言語学の研究者など多方面へのインタビュー、欧米の事例や研究成果、国内外の文献、そして何より「手話を生きる」子どもたちのことばをとおして、過去から未来へ現在進行形で変わりつつある手話の世界を描く。
2600円(税抜)

千田善
オシムの伝言
日本代表通訳として常に傍らにいた著者が、イビツァ・オシム氏の日本での足跡を克明に記した迫真のドキュメント。日本代表監督としての軌跡、闘病の日々、日本サッカー協会アドバイザー就任から離日まで、その全期間923日の活動と発言が時系列で描かれている。
1900円(税抜)

大井玄
いのちをもてなす 環境と医療の現場から
内科医として、保健衛生学徒として、国立環境研究所所長として、長年「いのち」をみつめつづけてきた著者が、人間と環境の生命をトータルにはぐくみ、もてなすための道程を綴る、滋味あふれるエッセイ集。西洋医学のすき間を埋める今日的な統合医療のあり方、認知症(痴呆)老人の不安とケア、人生の終末期に向かう人びとにとっての生きがい、そして地球温暖化問題に現れている、地球という閉鎖系の環境世界。
1400円(税抜)

大竹昭子
随時見学可
「まもなくしてY字路に出た。いま来た道と分かれて住宅街に入っていく道が先に延びていて、二股のあいだには切り分けたケーキのような形のマンションが建っていた。」表題作のほか、「本棚の奥の放浪者」「ハウスシッター」「水のゆくえ」「タイ式マッサージ」「狐塚公園」「ミステリー・ファン」「キリ番ゲット」「木造モルタル」「ごみ入れや浴室マット」を収録。『図鑑少年』刊行から10年、待望の著者2作目の小説集である。
1700円(税抜)

池内紀
あだ名の人生
「あだ名、通称、あるいは身代わりのようにしてつけられた呼び名。それぞれその人の要約にあたるようなもの。いかにしてあだ名がついたか、事情はさまざまだが、世の中にひそんだ悪ガキの智恵にも似ている。それを借用すると、個性ゆたかな肖像が浮かび出るのではなかろうか?」本書は、ただそのあだ名において、みごと人生を一貫した人たちのポートレート集である。
2000円(税抜)

池内紀
ちいさなカフカ
歴史の不条理や官僚制を告発する、きわめて深刻・まじめなカフカ。この定番のカフカ像を手放すと、どんな新しいカフカが立ち現れるか?そのみごとな見本がこの「ちいさなカフカ」である。動いていると風景が変わり、目の位置が変化すると別の景色があらわれるように、いろいろなカフカが見えてきた」女性たちに送った夥しい手紙の数奇な運命、大の映画好きであったカフカと『審判』の関係をはじめ、賢治のクラムボンとオドラデク、『ライ麦畑でつかまえて』と『アメリカ』、さらに多羅尾伴内・長谷川四郎・クンデラに通底するカフカなど。
1600円(税抜)

池内紀
なじみの店
「毎朝、体操している。ラジオ体操をもとにして自分で工夫した。女子高の体育の先生と飲み屋で知り合って、教えてもらったのもつけ加えた。わが名の頭文字をとってIO式と称している。」(あとがき)。人生とは何か?こう正面切って尋ねられたら、たぶん誰でも答えに窮するし、だいいち照れくさい。では、どうするか?論より証拠、実物を示すに如かず。さいわい、ここに〈生きた〉見本が歩いている。居酒屋や旅館・医者とのつきあい方から野宿・金銭・悟り方まで、あちこちをゆったり歩き回り、ふと小さな事件や風景にこだわる。人生百般、IO式の大人の生き方、〈頭の体操〉入門。
1700円(税抜)

池内紀
無口な友人
「“どうだ、どうだ”胸元や腹をくすぐりまわした。男同士だと、ちとややこしい事態になりかねないが、男とオスだと何でもない。それでも多少はここちいいらしく、相手は目を細めたりしている。」。無口な友とは誰か?どんな交流があったのか?さいわい人間ではなかった。「吾輩は犬である。名前はチャンプ」「庭の隅に大きな穴を掘って葬った。いっしょのしるしに、冷たい鼻先にわが使い古しの万年筆をくっつけた。チャンプを失って、私はこの人生、もうそろそろいいかなと考えるときがある」。『遊園地の木馬』『なじみの店』につづく三冊目のエッセー集。
1700円(税抜)

池内了
寺田寅彦と現代 等身大の科学をもとめて
「寺田寅彦について現代から再照射してみたい……といって、これまで多く書かれてきた寺田寅彦論を繰り返そうという意図ではない。彼の死から70年近くも経っており、現代科学は彼の時代から大きく変貌し、また社会における科学の位置づけも異なっている。」(はじめに)。寺田寅彦は「二つの文化」、自然科学と文学という二つの領域において輝かしい業績を遺した。科学にあっては、ゆらぎやアポトーシスなど、複雑系の科学への流れを想定し、映画や連句においてはモンタージュ論によって芸術理論の革新を計った。本書は、科学における多くの先見の明、戦争や地震災害にたいする対応などから、多面的な人間=寅彦の全体像を初めて明らかにし、その遺産を近・現代科学史に位置づけた刺戟的な労作である。
2000円(税抜)

中井久夫
最終講義ー分裂病私見
 
1600円(税抜)

中井久夫
災害がほんとうに襲った時 阪神淡路大震災50日間の記録
災害は突然のごとく襲ってくる。生きることと死ぬことの偶然の分かれ目、今まで自分たちを抱え、守ってくれていた家の消滅。救援がはじまる。被災者は避難所に移り、あるいは病院に搬送される。家族や友人を喪ったなかでの長びく避難所生活、救援にあたる者、救急医療の現場に携わる人の積み重なる疲弊… そこから、こころの病いをはじめさまざまな二次災害も広まる。東日本大震災からひと月余、誰もがはじめて経験する日々がつづくなか、16年前の阪神淡路大震災の経験から学ぶことは少なくないのではないか。小社で刊行した『1995年1月・神戸』より、中井久夫の文章を再編集、併せて新稿も収めて、ここにおくる次第である。歴史に学ぶ・「神戸」から考える。こころのケアを中心に、精神科医が関与観察した震災後50日間の記録。
900円(税抜)

中井久夫
復興の道なかばで 阪神淡路大震災一年の記録
〈あの震災から150日が経った。今神戸はふしぎなほど静かである。神戸を埋めつくしていた救援の人たちはおおむね去った。活動を続けているボランティアは地元の人たちか、敢えて残留した少数である…会う人の多くは疲労をにじませている。〉(「震災後150日」)誰もが被災地に眼をそそいでいた大震災から一年。阪神淡路大震災から一年の記録を収めた『昨日のごとく』(1996年刊)より、中井久夫の文章9篇を中心に編集。歴史に学ぶ・「神戸」から考える。こころのケアを中心に、精神科医が関与観察した震災後一年間の記録。
1200円(税抜)

中井久夫
臨床瑣談
「〈臨床瑣談〉とは、臨床経験で味わったちょっとした物語というほどの意味である。今のところ、主に精神科以外のことを書こうとしている」本書は、精神科医としての長年の経験をとおして、専門非専門にかかわりなく、日本の医学や病院やその周辺について「これだけは伝えておきたい」という姿勢で書かれている。
1400円(税抜)

中井久夫
臨床瑣談 続
「かつては医学の治癒力はきわめて限られていた。したがって、経験を積んだ医師が、〈ぼつぼつ遠方の親戚の方を呼んで下さい〉というタイミングは驚くべきものがあったという。現在の医学はこのような予言が大幅に外れる程度には進歩している。しかし、診断と予後とを〈宣告〉するのは思い上がりであり、科学の名に背くとさえ思う。予後はもちろん、診断も仮説であり、仮説は宣告される種類のものではない」医学の可能性と限界をしるし、生活者と医療とのかかわりを懇切に描いた本書は、精神科医としての長年の経験から生まれた。しかし、そこにあるのは、指南的役割でも医の倫理の類いでもない。医師と生活者のあいだに立とうとする柔らかい姿勢である。
1500円(税抜)

中村圭志
信じない人のための〈宗教〉講義
信じなくても「宗教」はある。伝統として。制度として。習慣として。「宗教」を通じて私たちの時代の足もとに光を当てる、「目からウロコ」の宗教講義。
2000円(税抜)

長田弘
知恵の悲しみの時代
この本に書きとどめたのは、戦争の時代の奔流、増水、氾濫の記録ではなく、戦争の時代の見えない伏流水の記録です。この小さな本の試みが、「われわれの怠惰と無関心」の先に、すでに「跡形もなくわれわれの許から消えて」ゆこうとしている一つの時代の遺した言葉と記憶を、いくらかでも鮮明によびもどすことができれば、望外です。」(本書「あとがき」より)月刊「みすず」好評連載を再編集加筆のうえ一本に。『私の二十世紀書店』の著者ならでは書けぬ名著がここに生まれた。
2000円(税抜)

鳥飼玖美子
通訳者と戦後日米外交
豊富な体験をふまえた通訳論。通訳者の社会・文化史的意義を本格的に研究した、初めての書。経験・知見にもとづく深い洞察が冴える。同時通訳パイオニアー西山千、相馬雪香、村松増美、國弘正雄、小松達也、各氏へのロング・インタビューを収録。外交の内幕や、通訳の仕事をめぐる驚くべきエピソードに満ちた、手応えの大きいオーラル・ヒストリーとなっている。「通訳とは何か」「通訳者の役割とは何か」、現役の通訳者、通訳を志す人、そして、通訳・翻訳の世界を深く知りたい人びとに贈る、本格的通訳研究。また、希有なドキュメントが、日米関係の裏面史を明かしており、国際問題への関心に応える貴重な一冊である。
3000円(税抜)

辻由美
読書教育 フランスの活気ある現場から
本書で紹介される「読書教育」より。■パリ読書センターが小学校からの要請を受けて練り上げる「読書アクション」プログラム。■日本でも話題になってきた「高校生ゴンクール賞」。フランスの芥川賞に当たるゴンクール賞候補作から、高校生が独自に受賞作をえらぶ。■老いをテーマにした「クロノス賞」。幼稚園児から高齢者までのあらゆる世代が参加して6つのセクションで選考。■町の書店が協力して立ち上げた「アンコリュプティブル賞」。パートナーとなる24の出版社が提案する児童書・少年少女ものから、先生・司書・司書教諭・読書アニメーター・書店の児童書担当者などが選考した本から全国の子どもたちが選んで決める。■司書教諭が参加希望して毎年おこなわれる「プレス週間」。多数の新聞が図書室に持ち込まれ、キオスク状態になる。それを教材に国語・歴史・地理・市民教育の先生たちが、それをテーマに授業を繰り広げる。
1900円(税抜)

田中眞澄
ふるほん行脚
「近年、新刊書店にはご無沙汰しがちなのに、古本屋歩きはやむことがない。日々どこか一軒は覗いてみないと、一日の納まりがつかない気がする。」じっとスクリーンに見入っていたかと思いきや、ただひたすら古書との一期一会の出会いを求めて、あの町この町神出鬼没。東京一帯の老舗はもちろん、ニューウェイヴ書店から旅先で立ち寄った店まで、その数、いっさい重複なしのおよそ180軒。さて映画史研究家、いったいどんな本を、どこでいくらで買って読んだのか。雑本哀楽、5年間の記録です。
1900円(税抜)

東アジア出版人会議
東アジア人文書100
20世紀後半の東アジアではどのような本が読まれ、評価を得てきたか。東アジアの出版の共有財産として、相互で翻訳出版すべき人文書100冊を、国を超えた編集者たちが協議して選び今後の世代におくる、人文書ガイドブックの初の試みである。本書は、2005年に発足した民間の団体・東アジア出版人会議から生まれた。日本の経験豊かな3名の出版人の呼びかけで始まったこの会議は、中国・台湾・香港・韓国・日本の編集者が自主的に参加し、総会は現在まで11回におよぶ。本書で紹介されている各冊は、日本の読者にとっては新鮮な驚きであろう。
1900円(税抜)

樋口陽一
「日本国憲法」まっとうに議論するために 改訂新版
 
1800円(税抜)

風丸良彦
村上春樹短篇再読
村上春樹ファンには、とりわけ彼の短篇が好きだという人も多い。この作家の短篇小説には、〈短篇〉という形式において、長篇とはまた異なる、比喩や象徴性に優れた村上ワールド独特の魅力があるからだ。村上春樹と共に同時代を呼吸してきた感覚による読解は、ほかの研究・批評書とは異なる肌理をもち、本書自体が、村上春樹のテイストを有している。村上春樹の小説を、仕掛け共々、隅々まで楽しめる評論である。村上春樹の短篇15作品と、村上訳のアメリカ短篇小説3本(カーヴァー、フィッツジェラルド)を、春樹ファンに向けてディテイルに踏み込んで語る。
2000円(税抜)

風丸良彦
村上春樹〈訳〉短篇再読
村上春樹ファンの多くは、彼が訳したアメリカ短篇小説を、彼自身の作品同等に愛読している。村上テイストあふれる翻訳短篇は、相似形で読者を招き、原作の核心へと誘い込んでいる。村上氏が翻訳紹介する短篇作品は、小説の魅力と共に、アメリカの文化・社会のディテールを繊細に掬い上げており、そこが重要なんだと私たちに気づかせてくれる。本書は、村上春樹作品をデビュー作以来熱心に追ってきた著者の『村上春樹短篇再読』に継ぐ評論集であり、ムラカミ訳経由で原作を味読精読するための格好のガイドとなっている。T.カポーティ「ティファニーで朝食を」、F.S.フィッツジェラルド「カットグラスの鉢」、R.カーヴァー「ダンスしないか?」、U.K.ル=グウィン「空飛び猫」ほか、村上春樹氏が訳した短篇15作品を取りあげる。
2000円(税抜)

片山敏彦
詩心の風光
「戦争は過ぎた。歴史の深刻な動乱は昨日の悪夢のやうである。…われわれは忘れてはならない、われわれの過誤と弱さとを。われわれは絶望してはならない、なぜなら人間性実現の新しい仕事が我々の心と手との営みを待つてゐる。」片山敏彦『詩心の風光』は、みすず書房が世におくった最初の出版物として、1946年7月1日に刊行されました。凸版印刷、一万部、定価は20円。当時の社名「美篶書房」は、本書の序にも、創業者・小尾俊人の名とともに記されています。
2400円(税抜)

北条文緒
ブルームズベリーふたたび
「人生のやりなおしがあり得ないぶん、自分のなかに出来上がっている枠組みは不動で、内なるレンズはすでに透明度を失っている。どれほど対象が新しかろうと、自分に備わった尺度で風景を切り取り、意味を与えがちである。」(夕映えの旅景)過去と重なる現在のなかで、著者は他ではあり得なかった自分を再確認する。まずは軽快に、そしてときに辛辣ときにユーモアを交えて、三つの旅はその意味を深めつつ転調してゆく。旅に重ね合わせて、軽妙にしかし力強く語られた個人史…本書はまぎれもなく第一級の文学的紀行=エッセーである。
1900円(税抜)

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