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夏目漱石原稿「道草」全3巻   原寸オールカラー・限定版

 

夏目漱石原稿「道草」全3巻本のイメージ


夏目漱石原稿第1回1枚目
 

 夏目漱石原稿 
  
  道 草 

    <全三巻>
  

2004年3月中旬刊行
監修 財団法人日本近代文学館
解説 十川信介
限定 380部
本体価格:95,000円(税別)
  ※分売不可
ISBN4-544-03041-2
出版社 二玄社

 
 <<本書の特色>>

現存889枚の自筆原稿を完全収録
美土路脩一氏から寄贈された日本近代文学館所蔵「道草」新聞連載自筆原稿のうち、現存する全889枚を完全収録。わずかな欠落部(連載全102回のうち第16回・第17回・第38回1枚目・第45回9枚目)は、新聞連載より該当箇所を活字にて挿入補填する。
全原稿を原寸オールカラーで掲載
推敲以前の筆跡読解も容易にし、第一級の資料的価値を最大限に活かすため、各頁に1枚ずつ、全原稿を原寸オールカラーで掲載。
洋装製本で資料としての利便性を図る
研究資料としての取り扱いやすさを重視して、堅牢な上製クロス装にて製本化し、三分冊とする。
愛好家垂涎の台紙貼り複製を付録に
文学展での展示利用や自筆原稿愛好家の求めにも応じるため、付録として連載第1回冒頭の2葉を精緻な原色印刷のうえ各葉台紙貼りにて複製化。
斯界研究の第一人者による精細な解説
十川信介(学習院大学教授)執筆による精細な解説を別冊に付すことで、本書の研究資料としての価値をさらにフォロー・アップする。

 <<構成>>
上巻…… 新聞連載第1回〜第35回
(第16回・第17回=活字)
中巻…… 新聞連載第36回〜第69回
(第38回1枚目・第45回9枚目=活字)
下巻…… 新聞連載第70回〜第102回
別冊…… 解説(十川信介)
複製…… 新聞連載第1回冒頭2葉

 
 <<仕様>>
上〜下巻: 各A4判正寸・上製クロス装・総904頁(上巻296頁・中巻308頁・下巻300頁)
別冊解説: A4判正寸・並製・8頁
以上合冊貼函入り
複製2葉:
 
原寸原色複製を各葉台紙貼り(台紙サイズ=325×225mm)、袋入り

 
第1回1枚目 第22回6枚目 第27回3枚目
第1回1枚目 第22回6枚目 第27回3枚目

第95回8枚目 最終第102回9枚目  
第95回8枚目 最終第102回9枚目  

夏目漱石「道草」原色複刻版
刊行にあたって

 日本近代文学館理事長 中村 稔 

 日本近代文学館は日本近代現代文学の貴重な資料を数多く収蔵している。その質量ともに他の類似施設と比べ卓越していると自負している。これは創立以来四十年を越える間における役員、事務局員の情熱と熱意、これにこたえて下さった学者、文学者、その遺族、また出版社等の理解と厚意の賜物だといってよい。
 とりわけ最近美土路脩一氏から寄贈された夏目漱石「道草」の原稿は、わが国文学史上最高の文化遺産の一ともみるべきものだから、このような貴重な資料が日本近代文学館の収蔵品に加わったことは、私たちの誇りであり、美土路氏に心から感謝している。
 ただ、日本近代文学館の使命は単に収蔵、保存することでは終らない。研究者等の閲覧に供し、研究等に役立つよう利用して頂くことに真の使命がある。そのためには一部だけ保存し、館に足を運んで閲覧して頂くよりは、できれば相当数刊行し、ひろく普及することが社会に貢献する所以であろう。そのため私たちは可能な限り貴重な文学資料の公刊を心がけてきた。 
 今回二玄社から刊行される「道草」の複刻版もこうした方針の一環である。「道草」の原稿にはことに多くの推敲が施されている。推敲の跡は文学者の創作の謎を解く鍵の一である。この複刻版を目にし、推敲の跡をさぐることによって、漱石研究の新局面が展開するものと私たちは信じている。
「道草」執筆の頃の夏目漱石(漱石山房にて)
原稿で読む『道草』
  学習院大学教授 十川 信介

 近年支配的になったワープロ原稿以前には、原稿はほとんどの場合肉筆で書かれた。それは植字工(文選工)の手で活字に転換され、紙に印刷されて市場に出た。現在でも、活版印刷であると写植であるとを問わず、大多数の読者は、整然とした活字を通して著作を読むのが普通である。漱石の作品も例外ではない。
 こういう一般の読書行為に対して、原稿で作品を読むことはどういう意味を持つのだろうか。もちろんこの『道草』の複刻も、漱石のオリジナルではなく、発達した印刷技術が可能にしたコピイの一種に違いはない。だがそこには、活字化される以前の、まぎれもない漱石の筆跡や、執筆中の苦心の跡がそのまま再現されている。
 W・ベンヤミン『複製技術時代の芸術』が説くように、複製技術の開発は、作者のオーラ、その強烈な個性やビッグ・ネームが発する輝きを消したかもしれない。しかしそのさらなる発達は、完全ではないにせよ、ふたたびそれを感じさせることに成功したのである。この複刻版を通じて、すくなくとも漱石が一字一字の文字に託した思いは明瞭に伝わってくる。書いてある内容自体は同じでも、この『道草』は活字本の『道草』とは異質な、別系統のテクストである。読者は漱石山房の十九字詰原稿用紙にインクで記された崩し字を読み、奇妙な図形のように丹念に消された抹消部で立ち止まり、吹き出しで加えられた挿入部を追って、ゆっくりと進まなければならない。
 それは漱石が営々と築いた小説世界の生成を、自分なりに辿ってみる行為である。彼はなぜこの表現を修正し、この語句を挿入したのか、またなぜこの語順を変更したのか。そこには、活字を速読する読書とは別次元の道が開かれる。そしてそれは、当然、彼が好んだ文型や用語、いわば漱石的表現を理解する結果をもたらし、ひいては、当時の日本語が直面していた問題にも及ぶにちがいない。
「道草」の舞台となった千駄木の家(現在、明治村に移築)<推薦の言葉>
 
活字だけでは決して見えないもの
   詩人・文体論研究家 原 子朗
 漱石の肉筆原稿で残っているものは数少ないが、漱石最初の自伝小説といわれる『道草』を、原稿用紙そのままの写真版で読めるという。貴重な企てである。活字だけでは決して見えない、文学発生の原姿である肉筆生原稿の凄い値うち(これから先、いや既に多くの現代の「文学」が消失しつつある)を改めて納得する人も多いと思う。生原稿の筆跡や推敲過程から、書き手の文体を多く論じてきた私など、いい獲物が手もとに来たとばかりに、もはや眠られないほど昂奮している。

『道草』初版本(大正4年10月、岩波書店刊)自筆原稿『道草』礼讃  詩人・批評家 大岡 信
 漱石晩年の作品は、すべてが漱石自身の文学的投影であり告白であったといえるが、中でも最も明瞭に自伝的だったのが『道草』だった。イギリス留学から帰国し、やがて『吾輩は猫である』を書きだすまでの、明治36年から38年ごろまでの期間を、主人公健三の36歳の一年間に圧縮している。健三の生活は、漱石の透徹した批評眼によってみごとに再構成され、坦々たる文体の背後に、じつに濃密な人生が積みあげられてゆく。自筆原稿によって、この息づまるような言葉の建築物を跡づけうるのは、何たる幸せ!

言葉とテクストの端緒から  早稲田大学教授 宗像和重
 原稿は普通、言葉が活字になってしまえば打ち捨てられる、間に合わせの(それゆえ希少な)肉筆テクストとみなされる。だが、そうではないよ、用済みになったのではなく、ちょっと道草を食っていただけだよ、とでもいうように、漱石の原稿が帰ってきた。「遠い所」から帰ってきた健三よりも、もっと遠い、おそらくは言葉とテクストの端緒から。その生成過程を、精美な影印と周密な解説の助けを借りて、遡行できる僥倖を思う。こんなに緊張する、そして心踊る旅の促しはない。

「道草」朝日新聞連載第1回(大正4年6月3日)

 
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