講談社現代新書<br> 日清戦争 「国民」の誕生

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講談社現代新書
日清戦争 「国民」の誕生

  • 著者名:佐谷眞木人【著】
  • 価格 ¥770(本体¥700)
  • 講談社(2018/06発売)
  • ポイント 7pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784062879866

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内容説明

日清戦争は近代日本がはじめて経験した大規模な対外戦争でした。それは国民を熱狂させ、国家全体を狂騒の渦に叩き込みながら政治、社会体制のありかたまで変革させた巨大な祝祭だったといえましょう。その過程においてメディアが果たした役割は大きなものでした。というより、この戦争報道のなかで日本のメディアは今日にいたるプロトタイプを形成していくことになります。

目次

はじめに――歴史の断層
第1章 征韓論ふたたび
第2章 戦争はどう伝えられたか
第3章 死んでもラッパを口から離しませんでした
第4章 川上音二郎の日清戦争
第5章 熱狂する人びと、祝捷の空間
第6章 遊戯・学校・軍隊
第7章 死者のゆくえ、日本の位置
むすびに――ナショナリズムのねじれ

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

nnpusnsn1945

49
国民国家が形作られたイベントとしての日清戦争を、文化的側面から読み解いている。当時の清や朝鮮に対する蔑視は、ストレートな差別のみならず憐れみも絡んでいたようだ。そうした「善意」の視点がより厄介らしい。また、賊軍になった西郷隆盛の意外な人気ぶりや、内村鑑三の賛成論も面白い。反権力であっても今のような反戦とはいかなかった事実がある。旅順虐殺事件を巡る海外と日本国内の報道は、皮肉にも後の南京事件や最近のウクライナ紛争にも類似している。軍歌やオッペケペー節の考察も良い。また、兵士や遺族の戦後、軍神の項目も面白い。2022/06/21

長谷川透

16
イデオロギー操作や無意識化での洗脳は現代でも話題になっている。メディア・政府=強者、視聴者・国民=弱者という図式で以て論が展開され強者が弱者を支配するという結論が出てしまう。近代の戦争もその文脈で語られることが多い。政府が戦争を主導し、戦果による国民の狂乱も敗戦による惨禍も政府の行為の結果による副次的なものだ、という結論である。しかし本書は国民にも戦争を積極的に受け入れる体制が整っていたからこそ政府のキャンペーンは爆発的に浸透したことを指摘している。無意識に弱者に成り下がる大衆こそ、最大の危険因子なのだ。2012/12/01

白義

14
「メディアにおける日清戦争」といった感じの一冊。日清戦争という近代日本が初めて挑む大戦争を発端とし、戦争報道が加熱し、軍人の戦場美談や演劇における国威発揚に合わせた新たなスタイルの登場など、社会史方面から「日本国民」という意識がどう形成されたのかを追っていて、単純な戦史とはちょっと違うアプローチだがなかなか面白い。中でも死んでもラッパを放さなかった水兵の美談が、実は別人だと言われてからどんどん怪しさが発覚しつつも国民には受け入れられちゃうプロセスなどはそれっぽくて笑う。日清戦争に近代日本の深淵を見る一冊だ2019/01/11

AKa

4
日清戦争を「国民国家」形成の総仕上げとし、それを日本国内における報道や文学、演劇などを通して述べている。最初に戦争の重要性の評価について、アジア侵略のスタート地点と捉える東アジア諸国と日本とで大いにギャップがあることを指摘している。出てくる日本の学者たちは普段「アジアからの視点」云々と言ってそうな人が多いので不思議ではあるが、一方で日露戦争の結果である条約改正と国際的地位上昇や、韓国併合、そして近代的なデモクラシーが起こるきっかけとなったことなどと比べると、どうしても評価を落とさざるを得ないのもわかる。2019/07/01

めっかち

3
 ざっと読み。日清戦争の「歴史的事実」でなく「手触り」を書きたかった、らしい。でも、「手触り」の前に、著者の「日本は悪い戦争をした加害者」というイデオロギーが先に立ってなんだかなぁって感じ。戦争が原則として違法化された令和の今日ロシアを批判するが如く、帝国主義全盛期の明治日本を捉えるって、どうよ。まぁ、色々面白いエピソードも紹介されてて、著者の思想的偏向にさえ目を潰れば、国民国家形成史としてそれなりに面白い。でも、司馬史観を叩いた結果、もっと酷い歴史観に陥ってる気がするんだよなぁ……。2023/02/19

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