内容説明
三田村慎平は転職先の児童養護施設で働き始めて早々、壁にぶつかる。生活態度も成績も良好、職員との関係もいい“問題のない子供”として知られる16歳の谷村奏子が、なぜか慎平にだけ心を固く閉ざしてしまったのだ。想いがつらなり響く時、昨日と違う明日がやってくる。先輩職員らに囲まれて成長する日々を優しい目線で描くドラマティック長篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mae.dat
314
児童養護施設でのお話が5話連作。各話の後にその話に関わる人の、関連するけど別話の回顧録が納めてあるスタイル。文庫版では解説とも繋がって更に良いね。施設で働く人、施設に身を寄せる人の思いや考え、葛藤等が良く描かれていて勉強になります。外野から“理想的な(?)利用者像”を創って仕舞う事が無い様にしたいですね。それは他のセーフティネット利用者についても同じですね。子供が施設に来た理由は詳述は避けられている様でね。重過ぎる事は無い様に思います。「3 昨日を悔やむ」が特に良かったよ。でもそれを記す紙幅が無いね。2024/01/10
カメ吉
260
すごい作品でした。最後の解説までしっかり読んでほしい作品でした。 自分も児童養護施設という施設に無知であって認識が浅かったのですがわかりやすく明るく書かれていて刻まれた感があります。自分と同じく多くの人が誤って理解している認識が覆ると思います。物語は決して重くなく明るく自然に進んで最後は清々しい読後感でした。特に『昨日を悔やむ』の章は感涙モノでした。 実際にモデルがあったのと有川浩氏の取材力、筆力がこの作品の持つメッセージを強くしてる。 ぜひ議員さんや公務員に読んでほしいですね。2018/06/10
mmts(マミタス)
259
☆「児童養護施設」に入所する子ども達がストーリーの主人公達だった。☆「家族や家庭に恵まれずに児童養護施設に保護された子ども達は可哀想だし不憫だ。」の発想からストーリーは始まるのだ。☆果たして児童養護施設に居る子ども達は可哀想な存在なのか。究極の問題提起である。☆あるいは、家族から虐待され家庭に居場所がないほうが当事者の子ども達には辛いかもしれない。それは子ども達にしか分からない。☆中脇初枝さん「きみはいい子」と野島伸司さん「明日、ママがいない」を思い出した。☆子ども達に笑顔が咲くように祈るしかない。2018/05/24
ぱるぷ
168
★★★★☆ 『児童養護施設で暮らすのは可哀想じゃない』って事を知って欲しい女の子の手紙から小説に……施設のイメージがガラリと変わった‼︎ たくさんの人に読んで欲しい‼︎ 解説までがとても良い‼︎2018/04/13
SJW
158
児童養護施設「あしたの家」の新米職員 三田村慎平が失敗や苦労をしながら、子供達や同僚職員から学び成長していくストーリー。児童養護施設を支援したいと興味を持っていたが、実際にはイメージしていたものとかなり違っていたことが分かりとても良かった。可哀想と同情されたくない気持ちも理解できるが、高校卒業後は自立しなければならないという厳しさには同情してしまう。しかしあとがきを読んでストーリーは実話を基にしていることを知り涙腺が緩んでしまった。久々に良い小説を読むことができ感謝!2020/09/10