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内容説明
ある大学で「養老さんじゃないですか、もう死んだと思ってました」と話しかけられた著者。「要するにすでに死亡済み。そう思えば気楽なもの」と嘯き、超越した視点で「意識」が支配する現代社会の諸相を見つめる。人工知能が台頭する時代に「コンピュータは吹けば飛ぶようなもの」と語り、平成においては「万物が煮詰まった」と述べ、人口や実体経済の限界が見えた時代の生き方を考える。現代の問題は「一般論としての人生と、個々の人生の乖離」と述べ、一般化からこぼれ落ちた個々の生へ眼差しを向ける。真理は0と1の間に落ちる。宙ぶらりんの立場で、現代人の盲点を淡々と衝く一冊。 【目次より】●人文学で何を教えるか ●禁煙主義者として ●永遠の杜 ●人工知能の時代に考える ●虫と核弾頭 ●人口が減る社会 ●状況依存 ●米軍の「誤爆」 ●意識をもつことの前提 ●老人が暮らしにくい世の中 ●地味な仕事への対価 ●「平成」を振り返る
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Aya Murakami
99
図書館本 養老さんの別の本で「医学部は理系じゃない」という内容のことが書いてあって「妙に医学部に詳しいな」と思っていたら本書によると医学部は解剖学必須でその関係で解剖学の養老さんが医学部に関わっていたみたいです(謎はとけた) そしてAIの話。コンピュータは人間の意識活動にとってかわるらしいですが人間はとってかわられるわけではないとのこと。意識活動以外メインの仕事は奪われないってこと…かな?それでも意識は便利な仕事ツールなので奪われない仕事がどんなものか見当つかない。2021/04/04
Tsuyoshi
65
月刊「Voice」での時事エッセイをまとめて書籍化したもの。平成に起きた様々な出来事を「すべてが煮詰まった時代」と称して警鐘を鳴らしつつ、どう折り合いをつけて生きていくべきか独自の考えが展開されていた。著者の作品は何冊か読んでいるが、本作でも相変わらずの独創的な着眼点や語り口につい魅了されてしまった。特に印象的なものとして、個人か国家かといった偏重思考の進展による「公的な社会の煮詰まり」EU離脱等から見る「グローバル社会の煮詰まり」宗教テロから見る「一元的な価値観の煮詰まり」等が挙げられる。2018/04/18
ルピナスさん
64
世には色々な子育て本があるが、私が最も共感したのは養老孟司先生の本。直接子育てについて触れていなかったかもしれないが、情報に溢れる現代にあって、子供に必要なのは自然の中で具体的な体験を重ねて行くこと、量に振り回されないこと、自分の感覚を大切にすること。私は養老先生のおかげであるべき論と向き合う勇気をもらい、子供達は早い段階で習い事などを断捨離しその時々で興味のあることに没頭する時間を持てた。今は先生の言葉が自分自身の心に響く。今の世の中は確かに煮詰まっているし自分自身もそう思いがち。五感を大切に過ごしたい2022/03/29
けんとまん1007
42
養老先生ならではの切り口で、今のこの国を憂いていると思える。すべてに同感とは言えないが、基本にあること。人をどう思い、大切にするのかという視点。今は、そこが蔑ろにされているように思えてしかたない。長年の澱んだものが、人のこころをむしばんでいるし、それが、目の前の一瞬のことしか考えないことにもつながっている。いろんなものが劣化している。ただ、希望ももちろんある。タイトルの意味は、とてもひろがりがある。そのためには、自分で見て感じて考えること、そして動くこと。2019/02/05
しん
33
時事エッセイと誰かが書いていたが、当てはまっていると思う。エッセイ集とか、何かの雑誌に連載していた小文を集めたものとか、感想が難しい。話題があれこれ、色々あるからだ。そのため同感するものもあるし、そうでないものもある。一部で本全体は語れない。最初はそんな気がした。読み終えると、一つの主張があったように思える。だからどうするんだ、ということは自分の頭で考えることなのだ。2018/10/11