岩波新書<br> 東電原発裁判 - 福島原発事故の責任を問う

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岩波新書
東電原発裁判 - 福島原発事故の責任を問う

  • 著者名:添田孝史
  • 価格 ¥858(本体¥780)
  • 岩波書店(2018/02発売)
  • ポイント 7pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004316886

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内容説明

二〇一七年春,司法が大きな一歩を踏み出した.福島原発事故における東京電力の刑事責任を問う初公判が開かれたのである.検察が持つ膨大な証拠やデータで明かされる事実とは何か.津波の予見は不可能とする被告の主張は真実なのか.各地で継続中の民事訴訟とともに,未曽有の事故をめぐる一連の裁判をレポートする.

目次

目  次
   はじめに

 第1章 始まった裁判
   初公判/全面否認の東電幹部/冒頭陳述とメールから新たにわかったこと/ 「単なる試算」「職務権限はなかった」被告弁護側の主張/被告三人の横顔/凄腕刑事弁護士vsヤメ検/初公判まで六年 長い道のり/不十分だった事故調の空白を埋められるか
 第2章 2008年の「衝撃」
   刑事裁判の争点/二〇〇二年七月三一日 地震本部の長期評価 日本海溝の巨大津波/二〇〇六年五月一一日 溢水勉強会 津波は全電源喪失を引き起こす/二〇〇六年九月一九日 耐震指針改訂 バックチェック開始/二〇〇七年七月一六日 新潟県中越沖地震 東電の二期連続赤字/二〇〇七年一一月一日 いったんは進み始めた津波対策/二〇〇八年三月一八日 一五・七〇七メートルの衝撃/二〇〇八年八月以降 延期されたバックチェック/二〇一一年三月七日
 第3章 消された報告書
   調査が進んだ津波堆積物/バックチェック中間報告/女川原発で進んでいた津波バックチェック/政府も計算済みだった貞観地震と津波地震/jnes報告書からわかる三つのこと/隠されていた二つの報告書/プルサーマル推進の陰で/どこで情報は滞ったのか/検察は東電をかばったのか
 第4章 前橋地裁判決
   画期的な判決/判決のポイント/時代をさかのぼって責任検証/官僚の証言/国の責任/被害の実態を浮かび上がらせる/救済の線引きを変える 政策転換への動き/民事訴訟の限界
 第5章 科学の「不確実さ」、司法は裁けるか
   トップ科学者三人の応酬/ 「安全側」か「工学的判断」か 不確実さの取り扱いの変遷/ 「不確実さ」を取り扱う難しさ/東北電力と東電 不確実さへの対応の違い/不確実さへの余裕の違い 揺れと津波/不確実さを数値で扱う安全目標/確率論的リスク評価/中央防災会議 不確実さの扱いの差/専門家たちの事実誤認/科学は中立か 利益相反の問題
 第6章 残された課題
   2号機、3号機の炉心溶融は防げた 事故後の対処ミス/甲状腺がんの増加/福島県の検証/企業の罪を問う難しさ/事故調調書の開示/消されていく文書/危うい電子化/教訓をどう伝えるか
   おわりに

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ぐうぐう

39
2017年6月、東電幹部の刑事責任を初めて問う裁判が始まった。福島第一原発事故から、実に6年以上が経過してのことだ。著者は、裁判の経過を詳細にレポートしながらも、裁判の焦点を整理し、ここに至るまでの経緯を震災以前に遡って取材する。そこで明らかになってきたのは、これまで国や東電や専門家達が何度も口を揃えて唱えて来た「想定外」という言葉が、想定外ではなかったという事実だ。2002年の政府地震本部の長期評価で、これまでの想定を超える巨大津波の可能性が公式発表され、(つづく)2018/02/26

skunk_c

31
刑事裁判一審で有罪が出た直後に上梓されたもの。政府サイドには常に原発の経済性や、コスト拡大を抑えようという姿勢が見られるが、それが事故の一因となっている。震災の10年近く前には、すでに防波堤越えの津波の可能性を国も東電も意識していながら、対策を先送りしている。「想定外」の嘘はすでに明らだが、日本の刑事訴訟制度が個人しか訴訟の対象にできない限界を感じる。もし原子力を今後も利用しようとするなら、2度と今回のようなことのないような慎重さが必要と思うが、最近の前がかりな再起動の動きは逆行しているように思える。2017/12/11

coolflat

23
東電は、直下地震や津波を想定していたにもかかわらず、対策を怠っていた。これらが『東電原発裁判』を通じて具体的に語られていく。福島第一原発のような古い原発の安全性を再検討するバックチェック作業は2009年6月に終える予定とされていた。あの保安院や原安委でさえ、2006年時点で「バックチェック期間3年は長い。保安院として対外的にこれが適切として説明することは難しい」と考えていた。ところが東電は、ずるずるとバックチェックを引き延ばし、事故当時は2016年まで勝手に先延ばししていた。これが事故の大きな要因となる。2018/11/05

jamko

16
〈「組織罰を問うことができれば、組織的なミスの構造を解明するため、原発事業に深く広く操作のメスを入れることもできたはずだ。個人の責任を問う捜査では、被告人に近い範囲に捜査が限定されてしまう。また、組織罰で会社の存亡に関わるほどの多額の罰金が科せられるという危機感があれば、JR福知山線事故や東電福島原発事故も防げたかもしれない」。組織罰を実現する会の事務局を務める津久井進弁護士はこう話している。〉もうこれに尽きるかなと思います。今の日本社会を立て直すのに一番必要なものは組織罰。2020/05/09

trazom

13
15.7mという津波予測があったにも拘らず、対応しなかった東京電力の不作為が鋭く追及される。同じ予測で東北電力女川原発は対策を実施したのに…。しかし、問題は、東北電力の対応すら公表させまいとする東電・資源エネルギー庁の姿勢ではないか。人間が、間違った判断や失敗を犯すことは避けられないが、そのことを嘘で塗り固めて隠そうとする姑息さこそ、最も卑しい。結果としての自分たちの過ちを真摯に認めるべきだし、社会自体も、感情的な責任追及ばかりでなく、事実を検証する冷静さを保ちたい。その意味で、著者の姿勢はフェアである。2018/01/25

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