山と溪谷社<br> 八甲田山 消された真実

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山と溪谷社
八甲田山 消された真実

  • 著者名:伊藤薫
  • 価格 ¥1,496(本体¥1,360)
  • 山と溪谷社(2018/01発売)
  • ポイント 13pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784635171922

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内容説明

「天は我を見放したか」という映画の著名なフレーズとは大違い、新発見の事実を丹念に積み重ね、青森第5連隊の悲惨な雪行行軍実態の真相に初めて迫った渾身の書、336頁にもわたる圧巻の読み応え。

1902(明治35)年1月、雪中訓練のため、青森の屯営を出発した歩兵第5連隊は、八甲田山中で遭難、将兵199名を失うという、歴史上未曾有の山岳遭難事故を引き起こした。
当時の日本陸軍は、この遭難を、大臣報告、顛末書などで猛烈な寒波と猛吹雪による不慮の事故として葬り去ろうとした。1964年、最後の生き証人だった小原元伍長が62年間の沈黙を破り、当時の様子を語ったが、その内容は5連隊の事故報告書を疑わせるものだった。地元記者が「吹雪の惨劇」として発表、真実の一端が明らかにされたものの、この遭難を題材にした新田次郎の小説『八甲田山死の彷徨』(1971年、新潮社)と、映画『八甲田山』(1977年、東宝、シナノ企画)がともに大ヒット、フィクションでありながら、それが史実として定着した感さえある。

著者は、その小原元伍長の録音を入手、新田次郎の小説とのあまりの乖離に驚き、調査を始めた。
神成大尉の準備不足と指導力の欠如、山口少佐の独断専行と拳銃自殺の真相、福島大尉のたかりの構造、そして遭難事故を矮小化しようとした津川中佐の報告など疑問点はふくらむばかりだった。
そこで生存者の証言、当時の新聞、関連書籍や大量の資料をもとに、現場検証をも行なって事実の解明に努めた。
埋もれていた小原元伍長証言から事実の掘り起こし、さらに、実際の八甲田山の行軍演習、軍隊の編成方法、装備の問題点など、軍隊内部の慣例や習性にも通じているの元自衛官(青森県出身)としての体験を生かしながら執筆に厚みを加えた。

新発見の事実を一つ一つ積み上げながら、「八甲田山雪中行軍」とは何だったのかその真相に迫った渾身の書、336頁にもわたる圧巻の読み応え。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

120
映画『八甲田山』が「小林桂樹が上官へのゴマすりで雪中行軍を考え、北大路欣也が粗雑な計画を策定し、三國連太郎が無能な指揮で行軍を混乱させ、士族出身の加山雄三が平民出の北大路を下に見て勝手に行動し、高倉健が住民に供応を強要したあげく案内人を虐待した」という内容の映画だったらどう受け取られたか。あの大量遭難死事故の真実を知ると、明治陸軍の無能ぶりに恐ろしくなる。しかも都合の悪い部分がすべて隠蔽されたのは、今日まで続く官僚組織の伝統か。大日本帝国とは日本人の命をちりあくたのように使い捨てねば存続できなかったのだ。2021/12/22

s-kozy

84
元自衛官があの八甲田山雪中行軍遭難事件の真実に切り込んだ力作ノンフィクション。著者は「無能な指揮官の命令によって、登山経験のない素人が準備不足のまま知らない山に登山をした」という虚しい結論に辿り着く。「結論ありき」の論理展開は些か乱暴にも感じたが、著者の熱は感じた。もう少し文章が読みやすいと面白い本になりそうだったのに…と惜しまれる点もあり。それにしても驚くのは責任がある者が行った事実の隠蔽や記録文書の改竄。日本では明治時代から行われていたのか。他山の石としなくてはなぁ。2019/01/15

おかむら

50
「八甲田山死の彷徨」を読み直し、映画「八甲田山」を見直して、準備万端でコレを読む。著者は青森の元自衛官。膨大な参考文献の多さに気合が入ってます。そうかー、北大路欣也と高倉健の友情話は創作かー。ってか高倉健(の役)、実際は功名心が強くてしかもたかり屋体質って…。イメージがー…。真実だと映画にならんなー。事件後の報告書を上司が責任回避のため改ざんしてるってのも、さもありなんだけど昔から変わらないなー。雪中行軍から無断で抜け出して助かった兵士(映画の緒形拳)に対してやや苦言を述べてるのはいかにも自衛官らしいわ。2018/03/09

ジンベエ親分

49
新田次郎が「八甲田山死の彷徨」を執筆する際の元ネタとした小笠原弧酒の「吹雪の惨劇」が私家本(未出版)である以上、本書が史実としての八甲田山雪中行軍隊遭難事件を検証するための、最も重要な資料ということにはなるのだろう。ただこの本、生還者である小原元伍長の証言、第五連隊の始末書である「遭難始末」また当時の新聞記事など多数の資料を引用している点は貴重だが、感情的に過ぎ、ドキュメントを書く際の中立で冷静な視点に決定的に欠ける。津川連隊長、福島大尉、山口大佐憎しの解釈が多すぎ、結論は信頼性に乏しいと判断した。2019/02/23

えみ

39
199人は誰の為に死んだのか?真実を追い求め、著者・伊藤薫さんが当時の記録と証言、そして新聞記事など調べ上げて辿り着いた一つの結論。説得力があった。極寒の八甲田山で起こった悲劇「八甲田雪中行軍遭難事件」。この事件を描いた伊東潤さんの『囚われの山』を先日読んで興奮!とてつもなく大きな闇が見えてしまった事に知的好奇心を刺激されて遂にノンフィクションに手を出すことに。小説は読者に遭難した隊員達の絶望や苦しみ、壮絶な現場を見せる。一方で本書は無能、身勝手、文書捏造など上官達の狡猾な嘘の実態を浮かび上がらせていた‼2020/07/25

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