内容説明
昭和11年、アメリカが月よりも遠かった時代。
少年は英語を好きになった。
戦前に独学で英語を学び、GHQで通訳を務め、夢見た地を目指した青年の真実と奇蹟の物語――可笑しくて、切なくて、やがて涙する、青春小説の傑作!
昭和十一年、山梨の片田舎。少年・義彦は親戚の家で偶然、一冊の英語の雑誌を見付ける。そこに広がっていたのは、見たことのないほど華やかで自由な世界だった。やがて独学で英語の勉強を始めた義彦が、米国へ行くことを夢見るようになった時、日本は米国との全面戦争へ突入しようとしていた。英語は禁止。ドルは違法。徴兵され、体を壊し、無一文で家族を守りながら戦後を生き抜く義彦の手にただひとつ残されたもの――それはかつて覚えた英語だった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんたろー
134
多くの留学生の為に尽力した向山義彦さんの自伝。戦争中に 少年・義彦が、国政と世情に翻弄されつつも大好きな英語と憧れのアメリカを追い求めて苦闘する姿に尊敬の念。戦後も苦境の中で家族と手を携えながらも勉強を怠らず、夢を叶えてゆく姿を応援できる。しかし、知らない人の伝記なので、途中で飽きたのも正直なところ。それでも、結婚式に向けて事件を乗り越えてゆくタイムサスペンスや現地の人々の温かさには感動した。20年以上も前に、アメリカへ留学して素晴らしい経験をした私だが、こういう先人がいたお蔭だと強く感謝したい。 2017/10/10
しん
31
本屋さんで何となく気になっで、この本を手に取った。迷わず買った。内容は何も知らずに。ごく稀に、こういう出会いがある。戦中に英文学を学ぶため、アメリカに行きたいという夢を持ったちゅうちゃんの生涯を描いた小説。「人生は生きるに値するよ。ちゅうちゃんは、そう思うよ。」という言葉が、心に染みた。良い本と出会った喜びを久々に味わった。出会えて良かった。2018/02/12
ちどり
5
戦中戦後、アメリカに行くことを夢見てたゆまぬ努力を重ね 後進の留学や育成に力を尽くした氏の自伝。 自伝であるために ちりばめられる思いのすべてが想像ではなく 本人のほんとの思いなのだと思うと ずしんと重く響いた。 細かな事柄まで描写されていて これは日記をつけていなければ こんな詳細に書けまい と思うと、その長き日々に頭が下がる。 そして 戦中戦後を殺伐とした時代に描く人もいれば 辛苦を辛苦とは描かない人もいて やはりいろんな角度から物事を見なければいけないなと思った。 2017/10/27
おんま
4
自分がやろうと決めたことは、何としてでもやりきろうとすると、その姿を見ている周りの人の心をも動かすことができる。こう生きなければいけないな、と思えた一冊。2017/10/23
こるた
2
『ただ自分の居場所を探して、がむしゃらに足掻いていただけだった。しかしその日々が、私にたくさんのものを与えてくれた。』戦時中を懸命に生き抜き、戦後間もなくアメリカに渡った向山さん。その姿は、夢を抱き続け、それに向かって努力していくことや、出会った人との縁に感謝して生きることの大切さを、素直に感じさせてくれる。『人生は生きるに値するよ。ちゅうちゃんは、そう思うよ。』2018/04/17