内容説明
若い男女とその両親たちの“夫婦交換遊戯”。
大学で知り合い愛し合うようになった一組の若い男女。だが、期せずして自分たちの両親が、夫婦交換遊戯を長年にわたって続けてきたことに気づいてしまう。
結婚を夢見る男女と、一方で両親たちが繰り広げる艶麗な恋愛譚を通じ、生涯“物語文学”を追求し続けた倉橋由美子が、古代神話、源氏物語等の系譜を織り込んだ意欲作。倉橋文学後期を代表する「桂子さんシリーズ」の第一弾である。解説は倉橋文学研究の第一人者である古屋美登里氏。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
63
スワッピングに近親相姦というエグい題材を扱いながらも、文章はあくまで格調高く美しい。登場人物の誰一人として感情移入できないのに、読みたい欲求が喚起される。これが小説の力なのだと思う。ラストの数行で、ヒヤッとさせられて、最初から読み返したくなる。2018/01/07
桜もち 太郎
15
70年安保という騒々しい時代に、登場人物たちは独自の世界観のなかで優雅に生きる。主人公である桂子と恋人である耕一は結婚を前提の付き合いを。しかしそれぞれの両親はスワップの関係。桂子と耕一は兄妹説も。それを理由に二人は別れ別の男女と結婚。しかし面白いことに、目指すは両親たちのようなスワップの関係になることだ。一番積極的なのが桂子であることが面白い。物語的には学生運動や性の遊戯を取り扱っているが、全く生々しい描写はないのは残念。影響を受けたのは同じ題名を持つ谷崎潤一郎だと思う。淫靡な世界が明るく書かれていた。2024/01/05
まこ
13
読んでいて、恐ろしい小説。親世代のやったことが美しい言葉で美談として扱われ、桂子さんの結婚も親から見れば都合がいい。この作品は源氏物語のヒロインが途中で変わらなかったらを描いた話だと思う。桂子さんが最後に選んだ選択は親にとって都合のいいものから離れることだけど、これもまた恐ろしい方法。全共闘の存在が現状を壊そうとしつつもブレない桂子さんを表しているみたい。2020/11/06
ケー
6
読みながら頭の中に浮かんだのは村山由佳さんの『ダブル・ファンタジー』。でもあれほど奔放ではないというか、己の欲望とか背徳感を感じつつもそこに耽美的な匂いや香りが浮かんでくるのが独特。そして全共闘の時代というかなり時代性が強いのも特徴。桂子さんは全共闘の学生をなんとなく下に見ているけれど、本人の行動もそんなに大人ではないと思うぞ。2020/11/05
法水
6
桂子さんシリーズ第1作。大学卒業を控えた桂子は恋人・耕一との結婚を考えるも親たちの反対に遭って断念。実は桂子の両親と耕一の両親は10年間夫婦交換を行っており、耕一は腹違いの兄かも知れなかった――。スワッピングというスキャンダラスな題材を扱っていながら、解説の古屋美登里さんも指摘されている美しい文章のお陰か、抵抗なく読めてしまう(ただ「~ですわ」という語尾はいくら70年代でもいささか古臭い)。スワッピングはいわば上流階級のお遊戯。70年安保闘争に明け暮れる学生たちとは住む世界が違うのよな…。2017/10/15