内容説明
人間誰もが持つ自然に治る力を引き出すこと.著者はこれこそが看護の営みの原点という.美味しく食べて,気持ちよく清潔に過ごし,ぐっすりと眠れるように……人間らしく生きる普通の暮らしを整えるケアとは何か.胃瘻や床ずれ対応のヒントに「下の世話」や代用入浴の心得など.現役看護師として60年,その心と技の真髄.
目次
目 次
はじめに
第一章 看護という営み
1 それは人々の暮らしのなかから生まれた
2 職業としての看護師
3 看護師は今
第二章 看護の意味──ごくありふれた生の営みを見直す
1 生命維持に関わる日常的・習慣的ケア
2 人間らしく生きることを支えるケア
3 医学・医療の現実のなかで
4 死の瞬間までその人らしく
第三章 看護の原点──人間らしく生きる条件を整える
1 美味しく楽しい食の基本
2 ベッド上でもさっぱりと──代用入浴
3 看護次第の「下の世話」
第四章 看護の可能性──治る力を引き出す
1 自然治癒力を高めるケア
2 姿勢が心身の健康を左右する
3 浴(水や湯に身体を浸す)と温熱の効用
4 看護音楽療法──こころとからだを開く音楽とケア
5 認知症緩和ケア──楽しい思い出記憶が手がかりに
6 予防こそ看護の真髄
第五章 看護師六〇年
1 看護師を生きる
2 大震災を契機に──看護が日本の医療を変える
おわりに 手から始まる究極のケア
あとがきに代えて
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ネコタ
41
看護師60年という著者による看護の歴史、看護するということ、看護師の職場の現状の課題、これからの看護についてまとめられたもの。ナイチンゲールによる著書がいくつか引用されていた、やはり偉大な人物なんだな。印象的だったのは手術後は早く離床した方が治りがはやいこと、現代の医学の進歩は治療技術の進歩ではなく診断技術の進歩である、血ガスのデータやモニターでのデータだけでなく手で感じることが重要。「食べること」「体をきれいにすること」「下の世話」が看護の原点であるといえる。感想がまとまらない。2018/08/06
壱萬弐仟縁
10
超高齢社会、昨日の3.11被災者を前に、看護を見直そうと思い借りた。現場の看護師の不満の帯グラフによると、やはり、多忙(33頁)。業務量が多いために離職を考えた人が他要因に比べ最多。あとは糞尿との闘いだろうな。いつかは自分も行く道じゃ、というのはどこかで聞いたが、高齢者看護以外にも、いろいろな介護事例があるので、現場の看護師を支援する仕組みが求められる。3.11の避難所生活でも看護は困難を極めていたことを改めて銘記しておきたい。ケアはお互いに気遣うことから始まる(196頁)との指摘は説得力がある。2013/03/12
けいしゅう
9
看護師が日進月歩の医療を日々学び、一人ひとりの患者に最適な施術を行うことは職業的義務だ。そして、近年は2025年問題を見据えて厚生労働省が地域包括ケアシステムを提示し、現場や教育現場に対して患者の治療のために地域の諸関係機関と調整を行う高度なコミュニケーション力を求めるようになってきている。しかし、このような高度医療への適応や時代の要請に応じ続ける中で、本来の看護の姿が失われてはいないだろうか――随所に印象的なナイチンゲールの言葉を引きながら筆者の豊富な経験を踏まえ、不易流行の看護師の在り方を綴った一冊。2018/10/14
Humbaba
8
人は,気持ち次第で大きく変化する.そして,凝り固まった気持ちをほぐすのは,誰かの優しさしかない.例え最終的には助けられなかったとしても,一時的にでも優しい気持ちになれるのならば,それだけでも看護を行う価値があるといえるだろう.2013/02/25
雪乃
8
高齢者の方など、寝たきりになると、体が退化していく。二足歩行することにより、脳が発達され、記憶が蘇り、体の器官も活発になる。寝たきりにさせるのは体を衰えさせてしまう。二足歩行がたとえ困難な人でも、座らせるなど、足を地へつけることが、生きてく上でこんなに大切で、重要なことなのだと、すごく勉強になった。また、高齢者の方が、同じことを言う事がある。これを責めてはならないらしい。人は嬉しい過去の話を例え同じことを話していたとしても、嬉しい過去などを話すことにより、人は、幸福感が倍増される。脳が活性化される2013/01/03