内容説明
火事で家族を失った須崎鷹哉は、伯父・刀根尚都の依頼で、彼が家令を務める屋敷のお嬢様・常磐井文乃の旅に同行することになった。行き先は北の果て、稚内。くわしい事情も知らされないまま辿り着いたのは、希代の霊媒・九条紫姫音の館だった。文乃の目的は、16年前に紫姫音の後継者選びに参加した母・芙美乃に何があったのか知ることで、館には当時の参加者・関係者が呼び集められているというのだが……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
48
家族を突然、喪い、悔悟に暮れながらも泣けない鷹哉は美しくも誰よりも凛々しく、男前なお嬢様、文乃と出逢う。彼女に同行して稚内へ飛んだ彼らを待っていたのは因縁と妄執によって歪んだ惨劇だった。事件が起きるまでが長いのですが、その間に登場人物たちが捲し立てる過去が悪意や自己弁護も入った言葉だと分かってもきつい・・・。そして親だからこその子供への担保は殺意が湧くぐらいに醜い。例え、決められていた未来だとしても彼らは自分で選んで幸せになった。最後に、あなた達の子供は色々、あったけど確かに幸せになったよ、と伝えたい。2013/11/01
らむり
34
稚内の霊媒師の館を舞台に、殺人や心霊現象が起こるホラーミステリーです。重くて長くて黒くて読み応えあります。弱冠15歳のできる女・文乃と大学生・鷹哉はいいコンビだなぁ。2013/08/19
Norico
21
先日建築探偵のその後の話を読んだ勢いで、篠田さんの未読の本を読みました。さいはての地に建てられた洋館で起こる事件、美しく謎に満ちたお嬢様と、それぞれうさんくささに満ちた他の滞在客。館の主人は誰なのか?誰が生きていて、誰が死んでいるのか?耽美な世界って感じで割と好みです。最後のモノローグで、文乃さんの子どもが綾乃さんだと分かり、建築探偵のシリーズを思い出して嬉しくなりました。2015/02/16
とことこ
7
ぶ厚さにちょっと引き気味でしたが、篠田さんは読みだすとそれが苦にならなくなるから不思議。そしてまさか建築探偵と絡んでたとは!すっかり綾乃ちゃんの事忘れてたー!あと、宗教や霊媒師についての自分にスタンスが似てるとあとがきをよんでわかりました。謎より館の雰囲気に圧倒されちゃいました。2014/03/05
めぐみこ
4
強気お嬢様と振り回される大学生という組み合わせがツボ。ミステリ部分より二人のやりとりや鷹哉の心情の変化を楽しんだ。建築探偵シリーズ既読なのでエピローグの文乃の独白に、しんみりしたりニヤリとしたり。義母にまでヘタレ扱いされる深春に合掌。タイトルでもある「わたしはここにいます」というフレーズが、舞台装置もあって最初は不気味な物を感じていた。でも最後まで読むとそこに込められた祈りと祝福に胸がいっぱいになる。輪王寺の業を断ち切った栗山夫妻の未来と子供達に、どうか幸多からん事を。2014/11/03