内容説明
1990、91年と沖縄水産高校を甲子園準優勝へと導いた名将・栽弘義監督。常識を覆す独自の練習法と、暴力さえ厭わない苛烈な指導で、沖縄野球を全国レベルに押し上げた。大酒飲みで女好き、公私ともに豪放磊落な栽には敵も多かった。それでも、沖縄人の誇りとアイデンティティーを失わないために、生涯を野球に捧げた。成功の裏に隠された命を削るほどの重圧と孤独に迫る傑作ノンフィクション。
目次
プロローグ
第一章 背中の傷と差別
第二章 選手からの報
第三章 狂気に満ちたスパルタ
第四章 女たらしの酒飲み教師
第五章 極貧からの快進撃
第六章 不可解なプロ入り、そして謹慎
第七章 荒くれ者の集まり
第八章 準優勝の行く手には
第九章 悲劇の裏側
エピローグ
文庫版あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゴンゾウ@新潮部
118
豊見城高校、沖縄水産を率いて甲子園を沸かせた栽監督の姿は幼いながらも記憶に残っている。沖縄を野球後進県から先進県に育てあげた功績は大きい。この度この作品を読みとても複雑な思いが重なる。指導者として教育者として賛否両輪あること。常勝チームを作り続けることのプレッシャー、そして生身の人間を率いることの苦悩。確かに功罪あるが、栽さんしかこの偉業はなし得なかったとだけは思う【ナツイチ 2017】2018/04/22
扉のこちら側
61
2018年188冊め。スポーツ界での暴力やパワハラがメディアを騒がせるこの頃。描かれる指導法には頷けないが、戦後復興からの流れや本土復帰、内地との距離感等、沖縄という環境については関心を持って読めた。2018/06/18
NAO
56
甲子園の決勝戦で衝撃的なシーンを見たことから始まった元沖縄水産栽監督の取材。高校野球の指導者としては、旧式すぎてなかなか容認できないことも多いが、野球という誰もが知っている身近なことを描きながらも、戦後長く続いた沖縄に対する差別、現在もなお残る沖縄と内地との距離感が生々しく描かれているという点で、いろいろと考えさせられた。おそらく作者もそういった点に強く心を動かされての執筆だったのだろうが、あまりにも思いばかりが強すぎ、先行しすぎているような気がした。それは、栽監督自身も同じだったのかもしれない。2017/09/01
金吾
22
栽監督と沖縄の高校野球について書いていて話は面白かったです。栽監督が評価が別れる背景がわかりました。ついていく人がいるので名将だとは思いますが、指導はかなり自分本位であるように感じました。2022/03/31
ドリル
18
1980年代、90年代の高校野球の名物監督だった栽弘義監督。栽監督のイメージは大人しくて和やかなイメージがあったけど、それが大間違いやった。厳しさと根性で沖縄の高校野球レベルを上げてきた功労者であった。今や沖縄の代表校は強豪のイメージはあるけど、当時はかなり舐められてたらしい。その後、沖縄の学校が春夏連覇を見届けることも出来ず、この世を去っている。もしこの時、栽監督が生きてたらどう思ったやろうか?喜びより悔しさを爆発させたんでは?栽監督を知っている世代にとっては堪らなく懐かしくて、嬉しい一冊。(★★★)2017/08/15