内容説明
保健室登校をしているナツとサエ。二人の平和な楽園は、サエが“自分のクラスに戻る”と言い出したことで、不意に終焉を迎える――(「ねぇ、卵の殻が付いている」)。学校生活に息苦しさを感じている女子中学生の憂鬱と、かすかな希望を描き出す6つの物語。現役の中高生たちへ、必ずしも輝かしい青春を送って来なかった大人たちへ。あなたは一人きりじゃない、そう心に寄り添う連作短編集。
目次
ねぇ、卵の殻が付いている
好きな人のいない教室
死にたいノート
プリーツ・カースト
放課後のピント合わせ
雨の降る日は学校に行かない
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
寂しがり屋の狼さん
174
スクールカーストを題材にした短編集。制服に身を包み、身体も心も少し大人に近付き背伸びをしたくなる年頃の女子中学生の気持ちをよく描いていると思います。この春、あらたな旅たちをする学生はもとより両親や教育者にも読んで頂きたいと思います。🌸🏫普通とは何か?他人と比べるなんて愚か事だよ。自分が思うより世界は広くて、人は自由に生きられる🍀2021/03/23
へくとぱすかる
167
高校生ほど青春してなくて、でも子どもじゃない中学生の、まだまだ大人になりきれない心。いじめはつらい。でも、物語の中で、一番許せないのはあの先生だ、と思っていたら、解説の人も同じ感想だったらしい。こんな理解のない先生がいたら、中学生活は真っ暗だ。かなわない! 不登校にかかわる話を読むと、何らかの積極的手立てが必要だと思えてならない。みんな生きたいのだから。2017/09/09
K
148
6作品の連作短編集。どの話も交友関係が狭く、集団からポツリと浮いてしまった女子中学生が主人公です。となると必然的にいじめとかの話になりますよねぇ...集団で閉鎖的な空間に押し込められてると、いつの間にかグループごとに優劣の意識が芽生えてカーストが出来上がるんですよね(←怖い)きっと誰もが感じたことのあるモヤモヤを代弁してくれる一作でした。2018/11/02
ミュポトワ@猫mode
124
図書館本。短編集です。読み始めは「青いな・・・」とかって思い、内容が暗いから春じゃないなとか思ってましたが、違う。重すぎる、テーマが。いじめ・疎外感・スクールカーストをテーマにしているから、気分が沈む。いくつかハッピーエンドっぽい話もありますが、最後まで書かずに余韻を残しているので、どうなったかは不明。この辺は男女で感じ方が違うのでしょう。主人公はすべて中学2年生ですが、これは親に読んでほしい本です。教師を当てにしても何も解決しませんよ?あと、珍しく解説がまともです。若い芸能人なのにね。見直しました。2018/09/18
dr2006
107
本当は雨のせいなんかじゃない。わかっていてもクラスに馴染めず、カースト最下位でさえ居場所がないと悩むJCの心情を瑞々しく描く。本当は周りの目を気にせず好きな人と好きなことを共有したい。周波数が違う生き方をしているコと我慢してまで一緒に居たくない。繊細な心を保つ為に彼女たちは必至だ。今思えばもっと出来たのに…。注目されたい未熟な自我が本物を知ることで世界が180度変わる瞬間を描いた「放課後のピント合わせ」が一番好きな話だった。フィルムカメラで撮った写真の力強さを思い出した。作者らしいネガなタッチだが優しい。2020/07/01