講談社学術文庫<br> 死に至る病

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講談社学術文庫
死に至る病

  • ISBN:9784062924092

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内容説明

「死に至る病とは絶望のことである」。──この鮮烈な主張を打ち出した本書は、キェルケゴールの後期著作活動の集大成として燦然と輝いている。本書は、気鋭の研究者が最新の校訂版全集に基づいてデンマーク語原典から訳出するとともに、簡にして要を得た訳注を加えた、新時代の決定版と呼ぶにふさわしい新訳である。「死に至る病」としての「絶望」が「罪」に変質するさまを見据え、その治癒を目的にして書かれた教えと救いの書。

目次

凡 例
序 言
緒 言
第一編 死に至る病とは絶望のことである
A 絶望が死に至る病であるということ
B この病(絶望)の普遍性
C この病(絶望)の諸形態
第二編 絶望は罪である
A 絶望は罪である
B 罪の継続
訳者解説
訳者あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

たーぼー

56
ケェルケゴールの近代的人間の姿を赤裸々に暴露する語りは痛快なのだが、神への溺愛と拘束から逃れることの出来ない人でもあったようだ。『絶望』というものが死に至る病、との主張の中に通俗的見解の弁証をさほど持ち込まず、キリスト者のみが死に至る病の何を意味するかを知っている、と語って憚らない。もっとも彼の場合、神からの預言を重視したのち、自己なりの弁解を加えるパターンが多く見受けられる。例えばキリスト教が厳格過ぎるがゆえに特異な帰結が生じている、とも指摘している部分が象徴的だ。(続く)2018/08/13

ころこ

45
「死に至る病」という言葉の強度だけは際立っており、第1篇B~Cに掛けて読者を惹きつける力のある文章が続きます。冒頭に辟易せずに粘り強くやり過ごし、Bから読むと良いでしょう。他方で、物足りなさを感じる理由は主に二つあります。ひとつめは、何でも弁証法で解決してしまうことです。死に至る病とは絶望のことですが、絶望とは「死が希望となるほど危険が大きくなるときの、死ぬことすらできないという希望のなさ」といっています。相反することをレトリックで繋いでいるのでいっけん難解ですが、いっていることは単純です。単純に読めてし2019/01/23

うえぽん

30
19世紀半ばのデンマークの宗教哲学者キェルケゴールが自らのキリスト教信仰をめぐる思索と苦闘の中から、絶望=罪という死に至る病を患う病人=読者に信仰に向けた治療を施す意図で書かれた著作。デンマーク語からの独特の言い回しを含めた翻訳を、一神教的世界観の土台無しに読むと難解だが、明解な訳者解説で霧が晴れた。人間を無限性と有限性、時間的なものと永遠なもの、可能性と必然性の間の関係と捉えるが、自己を措定した他者の意志を顧みず、好き勝手に関係する人間は絶望=罪の状態にあり、これを信仰により治療しようとしたものと理解。2023/10/20

春ドーナツ

13
人間とは何か。「関係である」とキルケゴールは言う。以前「存在と時間」を読んだときに人間とは時間であると腑に落ちた。私の勘ではキルケゴールのテーゼとも関係があると思う。印象的だったのは「自己と自己自身」の関係というフレーズである。哲学書に挑戦するとき、自分なりのパラフレーズが閃くとうれしい。「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」の「私」と切り離された「影」に当てはめて、物語の連なりを思い出す。「私」と「影」どっちが自己で自己自身かを判断するのは難しい。それぞれの要素がどちらにも含まれているからだ。2023/12/08

Olive

12
キルケゴールにして人間は無限性と有限性、可能性と必然性の軸の中心にバランスを取りながら生きている。どちらに転んでも絶望が待ち受ける。死にいたる病とは絶望なのだ。 人間はそのバランスを自力ではとれず、破滅を理解する者が神を信じるのである。これはキリスト教への布教の書でもある。絶望の人間の在り方は神の前でそれは罪となる。 真の自己追究には、一切をかけるものを見つけろなんだけれども、確かに現代にあてはまる部分があることは否めないが、今ここで日々の倖せを慈しむ生活を見直してはどうか、そんな気持ちにもなった。2023/02/25

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