岩波新書<br> 密着最高裁のしごと - 野暮で真摯な事件簿

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岩波新書
密着最高裁のしごと - 野暮で真摯な事件簿

  • 著者名:川名壮志
  • 価格 ¥924(本体¥840)
  • 岩波書店(2017/04発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004316299

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内容説明

司法の顔は見えにくい.でも最高裁は面白い.DNA鑑定が突き付けた育ての父と実父と母娘の関係は? 夫婦別姓はなぜダメなのか? 犯罪に向き合った裁判員の審議は無意味なのか? いずれも下級審で判断が分かれ注目を集めた判決ばかり.情理を尽くした判断をたどり現代の難題を考える.家族の,司法のあり方をデザインするその姿を追う.

目次

目  次
   プロローグ

 第1部 家族のあり方を最高裁がデザインする(民事編)

 第1章 わが子と思いきや赤の他人だった ──親子関係不存在確認訴訟でみる最高裁のしくみ──
   血は水よりも濃いか/民法は科学技術にひざまずくか/法律のすき間を判例が埋める/育ての親より実の親──1、2審の判決/事実よりも理屈を判断 最高裁は法律審/dna型鑑定との矛盾など百も承知/最高裁の裁判官は弁明できる?/合議割れokだからこそ見える裁判官の素顔/最高裁裁判官が見せた人情/血は水より濃いと言われても 父親の思いをたずねて/【コラム】夫の反論は可能か 「嫡出否認」の選択肢
 第2章 夫は「主人」ではない 妻のアイデンティティ ──夫婦別姓にみる大法廷──
   結婚したら夫も妻も同じ姓? 世界は昔は……/法は変われど男性優位は明治のまま/最高裁は「憲法の番人」 最大の武器は「違憲審査権」/法と法がぶつかる?──憲法訴訟の構図/憲法と法律のデリケートな関係/法律は柔軟に、憲法は頑固に/憲法vs.法律 勝つのはどちらか/絵に描いたモチ? 条文では平等のはずが現実は間接差別?/初の憲法判断は全員集合で──大法廷判決/個人の具体的な被害があってこそ──付随的違憲審査制/大法廷は「合憲」判断/最高裁が示した「夫婦」と「家族」のあり方/女性裁判官は口をそろえて「違憲」/長官の意見は──いつか見た景色、かつて踊ったダンス/30年前にお蔵入りしていた夫婦別姓論議──寺田長官のデジャヴ/大胆な意見を残して最高裁を去った無頼派/桜舞う春に 一人の女性をたずねて/【コラム】生まれながらに損をする? 婚外子の相続問題──時代が「正義」をかえていく
 第2部 市民が裁く罪と罰 手綱をにぎる最高裁(刑事編)

 第3章 死刑と無期懲役のわかれみち ──死刑破棄事件にみる裁判員裁判の難しさ──
   最高裁は日替わり裁判長/シロウトによる裁きの庭 裁判員の死刑宣告/反ポピュリズム? 最高裁が「死刑」判決にダメ出し/松戸女子大生殺人事件/強盗殺人は「死刑」か「無期懲役」しかない/被害者が1人でも死刑 市民による極刑選択/最高裁の扉を開くカギ 上告がみとめられる条件/ 「死刑」と「無期懲役」のわかれみち/モノサシの使い方/何のための市民の声か/裁判官が裁判官を叱る 裁判を裁く最高裁/裁判官のトラの巻? 量刑のヒント集/統計でわかる被害者の数と死刑/公平と市民感覚のあいだで 彼女が生きた場所をたずねて/【コラム】最高裁の黒子 調査官
 第4章 求刑超えに「待った」をかけた最高裁 ──アマチュア市民とプロ裁判官をつなぐ最終審──
   発達障害の被告は長く刑務所に収容した方がいい 型破りの裁判員裁判/法定刑と量刑 裁判官のお家芸/裁判員仕様のナビゲーター 最高裁の計らい/暴走か適正評価か 民意による厳罰化/高裁は事後審に徹せよ? 中2階の微妙なスタンス/検察官vs.「健全な社会常識」 求刑超え目立つ子どもの虐待死/【コラム】量刑は何年? 新聞記者のヤマの張りかた/親の児童虐待は殺人か 寝屋川市虐待死事件/殺人と傷害致死の境界線 プロと市民の思いをたずねて/最高裁の奥の手 「著しく正義に反する」場合/裁判官と市民 二元論を超えて/三権分立の一角から
   エピローグ
   参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

おさむ

41
毎日新聞の司法記者が書いた、最高裁の最近のお仕事ぶりを民事刑事双方から分かりやすく説明してくれる新書。子どもの父親を規定する摘出推定の揺らぎ、女性の社会進出で問われる夫婦の同姓規定、そして裁判員裁判における量刑の軽重など、タイムリーな話題が多く、すんなり読了。法学部志望の高校生が読むといいかもしれません。2017/02/17

那由田 忠

15
3年前に読んだときは易しすぎるかと思ったけれど、丁寧に書き込んであると言うべきかな。冒頭の父親をどう決めるべきかという判断も面白いけれど、後半に裁判員裁判をめぐる様々な判決について詳しく紹介されている点がむしろ重要だと思えた。最高裁の失敗例(数々の冤罪事件は結局地裁と高裁の非合理判決の欠陥を是正できなかった)について全く触れていないけれど、ここにあげられた判決で見る限りはそれなりに合理的判断をしていると言うべきなんだろう。最高裁嫌いの人を怒らせる本だとは思うけど、これを理解した上で批判してほしいね。2020/05/18

那由田 忠

15
この本がジュニア新書レベルだとの声もあるように、ちょっと易しすぎるのかもしれない。しかし、判決内容をていねいに示して、合間に裁判官や裁判のあり方を説明していくのはそれなりに成功していると思う。ちょっと分量が多くてジュニアにできなかったかと思った。第1章の親子関係確認訴訟が面白くて、高校生に議論させたいテーマだ。あとは、裁判員裁判の判決のあり方に関しての最高裁の判決が、是正の意図があって、改めて裁判の意味を捉え直すものとして意味がある。2017/04/17

skunk_c

15
最高裁担当新聞記者の著。ジュニア新書並みの平易さであっという間に読了。でも内容は十分。最高裁というとどうしても違憲法令審査が思い浮かぶのは職業柄で、実際夫婦別姓裁判の例が取り上げられてもいるのだが、それ以上に、最高裁の法律審としての役割であるとか、裁判上の少数意見の開陳といった下級審には見られない制度などについて、長年の取材経験に基づいて分かりやすく解説している。副題にあるように、下級審より最高裁の方が判事の人間味が出しやすい仕組みなのかもしれない。裁判員制度にも言及。取材対象への愛着を感じた。2016/12/13

kotte

14
法律を学んだことがない方でも読みやすそうです。最高裁が出す判例の重みがよくわかります。2017/08/10

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