岩波文庫<br> 日本の弓術

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岩波文庫
日本の弓術

  • ISBN:9784003366110

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内容説明

的にあてることを考えるな,ただ弓を引き矢が離れるのを待って射あてるのだ,という阿波師範の言葉に当惑しながら著者は六年の歳月を過ごし,その体験をふまえて講演を行なった.ここには西欧の徹底した合理的・論理的な精神がいかに日本の非合理的・直観的な思考に接近し遂に弓術を会得するに至ったかが冷静に分析されている.

目次

目  次

 日本の弓術
   ヘリゲル君と弓……(小町谷操三)
   旧版への訳者後記から
   新版への訳者後記

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

392
私自身は弓術(弓道)には全く心得がない。弓で思い付くのは『平家物語』巻11に登場する那須与一くらいか。彼は孤高の天才だったが、こちらのヘリゲルは努力の人。縁あって東北帝国大学にやって来た折に、5年間弓術の修行に励み、ついに免許皆伝にまで至った経緯を、哲学者らしく思弁しながら回想したもの。そこで至りついた境地が「不射の射」とは、まるで中島敦『名人伝』の世界だ。本書が書かれたのは、1936年と随分昔だが、今、私たちが読んでもきわめて示唆に富む書。彼が抱いた煩悶は、さもありなんと思われる。彼の到達を祝したい。2017/02/25

新地学@児童書病発動中

120
本書で描かれる東西の交流が一番胸に響いた。著者は弓術を通して日本文化の精髄に触れたくて、阿波師範の門を叩く。最初はぎこちない動きしかできないヘリゲルが、修練を積むことによって次第に弓術の核心に近づいていく。阿波師範の指導の仕方は厳しくも、温かい。師がヘリゲルに「仏陀と一体になる」ことを説く場面がある。ここで、聖書の「私ではなく、私の中のイエスが生きる」というパウロの言葉を思い出した。師範の教えは、このパウロの言葉と全く同じだ。西洋の霊性と東洋の霊性が一つになれることを示した内容に、心を打たれた。2017/06/16

Gotoran

96
1924年(大正13年)に東北帝国大学に招聘され、教鞭を取った独の哲学者(著者)が、弓道の阿波研造範士に師事、6年間に亘る苦難の修行の末、弓の極意を体得、その講演録訳書。弓を通して武道の真髄を理解してゆく過程を巧みに表現描写。「的を狙わずに射当てることができる」「あなたは的を狙わずに自分自身を狙いなさい、するとあなたはあなた自身と仏陀と的を同時に的中できます」阿波範士に指導され著者は次第に我の計らいを捨てていき、「それはもはや私の手中にあるのではない」と無我の姿勢を体得していく。まさに諸芸は禅に通ず。2015/12/22

esop

71
日本人は弓を射ることを一種のスポーツと解しているのではないー徹頭徹尾、精神的な経過と考えている/神秘的合一、神性との一致、仏陀の発現/あなたは無心になろうと努めている。つまりあなたは故意に無心なのである/非有の中の有の経験が自己の経験となゆのは無我の境に移された者が自己存在の中へ使者が生成の中へ幾度でも投げ返され、そのようにして自己の存在の軌道を超えたはるか彼方にまで意義を有するものを自己自身について経験する2024/02/06

十川×三(とがわばつぞう)

55
良書。高尚な精神世界を垣間見れる。WWⅡ前、ドイツのカント派哲学者が来日し、弓術を体験。悩み、精神修行を経て弓術を会得する。日本人なら、すんなり理解できる部分も疑問を持ち、西洋哲学者が、その葛藤の経緯を文章化したところに価値がある。▼「体験が全て」の東洋哲学。よって只の一読者である自分は、弓術の本質理解からは程遠い。2022/04/19

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