- ホーム
- > 電子書籍
- > 教養文庫・新書・選書
内容説明
精神の根底には霊性(宗教意識)がある――。念仏や禅の本質を生活と結びつけ、法然、親鸞、そして鎌倉時代の禅宗に、真に日本人らしい宗教的な本質を見出す。日本人がもつべき心の支柱を熱く記した代表作。戦後、大拙自身が長文の「序」を付した第2版を底本とする完全版! 解説・末木文美士
序
第二版に序す
緒 言
日本的霊性につきて
第一篇 鎌倉時代と日本的霊性
一 情性的生活
二 日本的霊性の自覚
第二篇 日本的霊性の顕現
一 日本的霊性の胎動と仏教
二 霊 性
三 日本的霊性の主体性
第三篇 法然上人と念仏称名
一 平家の没落
二 浄土系思想の様相
三 念仏と「文盲」
四 念仏唱名
第四篇 妙好人
一 赤尾の道宗
二 浅原才市
第五篇 金剛経の禅
一 まえがき
二 般若即非の論理
三 「応無所住而生其心」
四 三世心不可得(一)
五 三世心不可得(二)
六 禅概観
付録 新版に序す
注釈
解説 末木文美士
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
to boy
22
難解な内容で、何度も読み返しながら読んだので時間がかかってしまいました。精神と言うと物質の反語となって二元論となってしまうので、それを超越した霊性を考えしかも日本固有のものを考察してますが、難しい。4章の妙好人は面白かった。才一の詠う念仏がなぜか心に沁みてきます。第五章は超難解でほとんど理解できませんでした。2016/04/17
koji
18
コロナ禍の中、「苦から救済する」仏教の教えは、祈りと言葉で日本人の精神的支柱になりうるのではないかという問題意識の下、読み始めました。解を求める浅はかさを大拙先生になじられているように感じながらも、愚直に読み進めた所、第5章で次の言葉にでくわしました。「(他人に迷惑をかけないという前提の下)結果が自分にとってどういうことになるかは気にせず、働くことそのことに意識の全力を傾注するのが大切。」所謂、無功徳無報償の行動です。「大地に根ざす、超個、即非の理」より無功徳が、私の心にピタリときて、勇気を貰いました。2020/04/17
nomak
16
戦時中に執筆した大拙はすごい。止むに止まれぬ想いを感じた。これはすごく遠回しな戦争批判。天皇を神とした国家主義な神道への批判だ。禅と浄土とゆう日本のガラパゴス仏教が生まれたが、日本人に浸透するまでは時間が足らずに、国家主義神道へのアシストになり天皇と英霊を信じて戦争へと突き進んでいった日本人の姿が大拙にはたまらなかったことだろう。良くも悪くも島国ディフェンスによって日本人が長い間外敵とは無縁であったために精神が育ったなかった。大地に叩きつけられて霊性があり、大地性が必要だと繰り返している点に感銘を受けた。2020/09/23
Gokkey
13
第二次大戦前の神道的思想に対するアンチテーゼ、より深い存在論的考察に基づいた「日本人であること」の本質を問う。これを霊性と定義し、様々な角度から考察を進める。大拙によれば、霊性とは精神よりも高次にある無分別智であり、この上に宗教意識が鎮座する事で民族文化が形作られる。大拙は禅こそが日本的霊性顕現のトリガーとし、「ひとえに親鸞一人になりにけり」に換言される一人一人の個の具体即実在性に辿り着く。この主客超越的な存在論から後半部にかけて様々な論考を展開するが、どうも今一つ整理されておらず理解に苦しむ。2023/07/08
roughfractus02
13
宗教は、有限な人間の個々の修行で無限に触れる自覚に導くが、無限を空間としそれを満たす力を信仰と見なすと、宗教は集団の政治に変わる。宗教が集団の政治になる第二次大戦中に、著者は、修行によって内側の無限に触れる宗教を語る。本書は、仏教の起源から日本への伝播のような因果的な語りを採用せず、日本に移植されて独自に形成された禅を語り、「霊性」というテーマを様々なトピックに相関させながら変奏し続ける。そのあるがままの語りは、起源を争う因果の政治性を排し、意味を無意味に向けて、無限の実在へと開く禅問答の技芸を思わせる。2021/02/10