内容説明
男は罪を隠している。親友の妻と不倫をし、その女を殺したという罪を。普段通りの生活を送る一方で、恐怖と不安、そして罪悪感が膨らんでいく……。よき夫と殺人者とを分かつ“細い線”とは? 犯人と周囲の人々の揺れ動く心理を克明に追う、これぞまさにサスペンス。江戸川乱歩が激賞した名作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ペグ
57
解説によれば、1952年6月3日付「ニューヨークタイムズ.ブックレヴュー」で15冊の推薦作に言及した中から江戸川乱歩が紹介したサスペンスとのこと。でも私はサスペンスとは思いませんでした。何故ならこの殺人を犯した主人公を(犯人では?)などと怪しむ人はいないし(ちょっと疑う人もいるけれど深く追求はしない)警察が捜査する場面もないのですから。最初から主人公が悩み、最後に自首を覚悟するまでが描かれていて、最近のどぎついサイコ物にも慣れている私には生温い感は否めないのに、最後の着地点に納得。面白かったです。2017/05/03
竹園和明
30
友人の妻を殺してしまった男が主人公。愛する妻や子供達との日常生活に戻るものの、罪の意識に苛まれ神経をすり減らす日々。そして徐々に、真実を告白したい気持ちが膨らみ始める。この作品は1951年作という古典だが、古典ゆえのシンプルな心理描写のみで読ませる名作だ。そして主人公の行く末は…。寛容な態度で夫を励まし続ける妻と、友情を理由に彼を責めない友人。この辺りからこの作品の主人公は妻にすり替わる。自分を苛む心理が加速する夫、苦悩する妻。そして行き着く結末。シンプルな奔流一本。一気読み必至です。2016/12/30
小太郎
17
乱歩激賞の謳い文句につられて読みました。親友の妻と不倫なおかつその妻を殺してしまった男が主人公。いつ逮捕されるかわからないハラハラドキドキが縦筋。読んでいていかにも古い感じがしますが心理サスペンスとしては読ませます。2019/07/21
ゆのん
13
ずっと読たかった心理ミステリー。愛人を殺害した男の物語。追い込まれてゆく男の心理の移り変わりがとても興味深い。怯えや恐怖から狂気に近い感情への変化はゾクゾクとした恐怖さえ感じる。男の妻も凄い。精神的に強く、それは自分の子供を守りたい一心なのだろう。いつの時代も母は強し!2017/07/04
🐾ドライ🐾
9
妻や母との会話でギクッ!クリスマスプレゼントのサッカーボールを木の上に引っ掛けて幼い息子に「殺してやる」とキレられ暴れられ汗💦余興で娘が学校で流行っている“人殺し”ゲームをやろうと言い出して動揺。日常の出来事がピーターを試してくる。だって彼は親友の妻と浮気をし、扼殺したのだから。ピーターの悩める内面描写がこの小説を面白くしているが、妻は彼の告白を「妄想かも」と信じない。妻の内面描写は茶番に思えるが最後の最後で…!? それよりも驚いたのは猫の話。オーブン。オーブン!?2020/09/23