内容説明
澁澤が最後に描いた“偏愛の世界”随筆集。
少女、鉱物、交友、幻想、書物――1987年夏、咽頭癌が原因で惜しまれつつも帰らぬ人となった澁澤龍彦が、その晩年に表題作だけが定められた一冊のエッセイ集刊行を約していた。
晩年の澁澤のエッセイを元に編まれた、文字通り「最後の著作」には、鬼才が偏愛した世界が珠玉のように散りばめられている。
あとがきとして、妻である澁澤龍子が澁澤の闘病生活と、“最期”の場面を克明に描いており、貴重な記録でもある。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うえ
6
「南方熊楠の文業に初めて親しむようになったのは、すでに私が三十歳をすぎたころで、奥付の検印紙に澁澤という判の押してある、乾元社の全集一二巻をようやく手に入れてからのことだった。いうまでもなく、この澁澤というのは私のことではなく、ミナカタ・ソサエティ代表たる澁澤敬三のことであるから念のため。時代的な制約のためか、この全集は印刷がわるくて読みにくく、不備の点も多々あったが、当時としては他に披見すべき南方本もなかなか簡単には手に入らなかったから、むさぼるように読んだことをおぼえている」なかなか珍しい逸話。2019/03/23
rakim
2
エッセイ集だと澁澤龍彦という私の中のイメージが変わるかなと思って古書店で購入したもの。長らく積読本になっていました。病院で幻覚を見るって本当にあるのを体験しているのでちょっと興味も持ちましたし。それでもやっぱり澁澤龍彦だった。ぞわっとする感覚が。2023/10/20
佐倉
2
澁澤龍彦なる人物がいて、様々な妖しい物事について文章を書いていた…ということは知っている、そう言えばうつろ舟は読んだことがあったか…という浅い知識で最晩年のエッセイ集を読むのも奇妙な話かもしれない。PBという形式に惹かれて読み始めたが、面白いエッセイや読んでみたくなった本も出来たので良い読書だった。幻覚、コーラを飲む自称幽霊の少女、自分をモノとして扱う自由、生まれそだった滝野川の話、なんでもかんでも「日本風○○」と付けてた時期の仏料理の話、頻りに推されるメルメの『イールのヴィーナス』という短編も気になる。2022/08/30
ベロニカ
0
澁澤夫人によるあとがきの、浄智寺の山門への細道の美しいイメージに心打たれる。澁澤先生が咽頭癌の病床で執筆したということを踏まえて「高丘親王航海記」を読むと切なさもひとしおである。2019/03/07