講談社文芸文庫<br> みずから我が涙をぬぐいたまう日

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講談社文芸文庫
みずから我が涙をぬぐいたまう日

  • 著者名:大江健三郎【著】
  • 価格 ¥1,562(本体¥1,420)
  • 講談社(2017/01発売)
  • ポイント 14pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784061961142

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内容説明

天皇に殉じて割腹、自死を遂げた作家の死に衝撃を受けた、同じ主題を共有するもう1人の作家が魂の奥底までを支配する〈天皇制〉の枷をうち破って想像力駆使し放つ“狂気を孕む同時代史”の表題作。宇宙船基地より逃走する男が日本の現人神による救済を夢見る「月の男」。──全く異なる2つの文体により、現代人の危機を深刻、ユーモラスに描く中篇小説2篇。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

150
大江自身の前書によれば、本書は『セヴンティーン』第2部(注・「政治少年死す」未刊行)以来のテーマ「純粋天皇」を巡る2つの中編小説ということになる。たしかに、この2篇は相互補完的な要素を持っており、それを繋ぐキー・コードは「あの人」である。「みずから我が涙…」では、それは直接的には主人公の父であり、また同時に抽象化された父なるものである。一方、「月の男」でのそれは、これも抽象化された天皇そのものである。そして、両者に共通するのは「巨大な紫色の背光にかこまれて輝く黄金の菊の花」という実に奇妙な救済イメージだ。2014/09/15

メタボン

28
☆☆☆★ 表題作はきわめて難解だった。しかし冒険とも思える文体が大江の転換点として感じられ、見逃すことができない重要な作品であると思った。ムーン・マンは、「悲劇」が滑稽にも感じられる大江らしい作品。こちらは表題作より読みやすかった。2018/02/06

ステビア

20
超・濃密な大江ワールド。疲れたがいい読書ができた。表題作の閉塞感・ドロドロ感。もう一つの中編「月の男」は最後の陳腐な左翼的メッセージにシラけた。途中までは良かったのだが。2014/06/27

ドン•マルロー

19
数多の大江文学の中でも非常な重量を持つ作品である。大江文学とは、永遠の繰り返し。繰り返しとは、金太郎飴のごときものではなく、微細な差異の連続であることを、ロブグリエとはちがったかたちで体現した巨匠。2018/08/07

相生

14
"純粋天皇"を主題にした中編2作。大江とは「同時代」の人間ではないから、認識にギャップがあるような、あるいはこちらが単に浮かれてるような気がしたのだけれど、そういう時代の人間の理解しえない部分を越えて、特に表題作に込められている物語る力には唸ってしまった。読みづらさ相まって読み止めようとすることがあっても、読み進めてるうちにその世界から抜け出せなくなっている、そういうことが作家には意識的にできることなのか?とか。救済のイメージに憑かれた人間の狂気を描いた、それ故新しい自分を希望させる作品のように思った。2017/01/16

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