内容説明
常に時代を“転形期”として捉え、前近代的なもの、B級の芸術を否定的媒介にして“モダニズム”を超える思考の提出。世界の秀れた前衛の思想をラジカルに踏んだ強力な視座、常にダイナミックな“変革”を志す世界的発信性の獲得。思想の追尋者・花田清輝の代表作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅん
10
具体的世界と抽象的世界のいずれかを追求するのではなく、二界の往復運動にアヴァンギャルド芸術の実践を見る。ここでの「具体」は自然をそのまま写す(花田がいう「チェーホフ式の」)写実的リアリズムだけでなく、内面のありのままを表象しようとする精神分析的リアリズムも含まれているようだ。本書は議論の中で右往左往を何度も繰り返しているが、これは往復運動の実演を意図したものだろう。わずかだが、『東京物語』への批判的言及があり、大家として評価が確立される前の小津安二郎のイメージが垣間見られる。2021/01/12
mstr_kk
2
たいへん読みやすく、軽快で面白い。「リアリズムの公式」を繰り返し教えてくれて、眉唾ではあるけど勉強になる。同じモチーフがちりばめられているので、読んでいて宝探しみたいな楽しみも感じる。2012/08/18
ZANGiBØY
1
ひとまず興味をひかれた論考のみ。内部/外部、科学/政治としての文学、音楽的/絵画的思考、抽象芸術/超現実主義などと、物事の峻別と弁証法を執拗なまでにくりかえす。解説で述べられているとおり、議論はいささか荒削りであるため、これを前衛芸術の正しい「入門書」として読むべきじゃない。だがやはり、淀みなく躍動する文体のおかげで、読みものとしてべらぼうにおもしろい。なぜこうもあざやかなディスクリプション(作品像の記述)が書けるのか!もちろん、戦後日本のアーティストが目指すべき芸術像を提示する、アジビラとしても大事。2024/04/14
ULTRA LUCKY SEVEN
1
どう考えても吉本隆明よりクレバーだと思う。その後を考えても。共産党に入っても、どこか共産党を馬鹿にしてて、インテリであってもインテリを小馬鹿にしてて、こういう大人は大好きだ。2012/03/02
naoya_fujita
1
本編を読んでいて面白さと同時に感じた疑問や違和感について、沼野氏が解説で良い点と悪い点をきちんと論じてくれていて、非常にありがたかった。2011/04/21