内容説明
設計技師にして発明家のわが友人ロドリックはある夜、自分は神を殺すことができると語った……。マッド・サイエンティストのあるまじき発明を描いた表題作、死んだ友人の蘇生を奇妙な異星人に託した男たちが目の当たりにした悪夢「ブレイン・レース」、不死の異星人とその秘密を追い求める男との長きにわたる追跡劇「邪悪の種子」など、英国SF界の奇才ベイリーの作品群から、単行本初収録の名品全10篇を収録した傑作選。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
88
最高にエッジとスパイスが効いた奇想SF集。表題作と「死の船」、「災厄の船」はニヒリズムが横溢していて気分が落ち込みます。一方で「大きな音」は全てを造りたもうた神への敬愛が溢れていてなんだかホッとしました。『モロー博士の島』、『孤島の鬼』を連想させる題名が印象的な「ロモー博士の島」はまさかの映画『デッド・プール』の国際女性デー・ネタに笑ってしまいましたw「邪悪な種子」は狼男でもある不死者の不死性の秘密を探る残虐な男が主人公。しかし、目的を達した時に突き当たる不死の真理に憐憫と嘲笑を覚えざるを得なませんでした2016/12/27
sin
78
まさに奇想のサイエンスフィクション:一昔前のSFってこうだったよな~科学という下拵えにアイデアを乗せて打ち上げるほら話の数々に、それでも自分の知識量が増えたような錯覚を楽しんだあの頃!飛びこめるはずもないだろうブラックホールや、飛び越えれるはずもないタイムリープを説明する科学的与太話は現実の世界のアメイジングの数々を想像させて僕の心を満たしてくれた。そうこの本には紛れもなくサイエンスフィクションが詰まっている。2016/12/04
Mumiu
61
今年1冊め、去年からですが結構時間がかかりました。自分の創造力がなかなか追いつかないからなのだろう。彼の描く世界を画像に落とし込もうとバタバタ足掻いてました。永の命は監獄なのだと、「邪悪の種子」にあらためて思う。2017/01/06
みっぴー
55
とにかくぶっ飛んでいるSF短編集。神を殺す『ゴッドガン』や、宇宙まで音を届かせる『大きな音』は、さっぱり理屈が分かりませんでした。それでも並の作家ではないことは、『ブレインレース』を読めば分かります。グロさやエグさの中に、どこか人恋しさや生に対する執着が感じられて、とても深い余韻を残します。『災厄の船』は、エルフが指揮をとる宇宙船という、ファンタジーとSFの組み合わせがナイス。でも、ベストはやっぱり『ブレインレース』です。レースを想像すると、涙出てきます。2017/06/18
ざるこ
48
10短編。ベイリーにかかると神様暗殺する装置なんて発明されるから楽しすぎて困ってしまう。6千人のオーケストラ、地底潜艦、形が判別できない宇宙船などなど、突拍子もないアイディアが次から次へと。それらしい理論がある時もあれば、どうなった?とあっさりスルーしちゃう時もあって、けどそれはそれでまた良し。と、許してしまえる楽しさよ。「蟹はためしてみなきゃいけない」蟹の気持ちになれないんですけど。と言いたいけど、人生の儚さを説いてて驚き。外科手術が得意な宇宙人との攻防「ブレイン・レース」グロい!うける!超シュール!2020/07/03