岩波新書<br> 反貧困 - 「すべり台社会」からの脱出

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岩波新書
反貧困 - 「すべり台社会」からの脱出

  • 著者名:湯浅誠
  • 価格 ¥858(本体¥780)
  • 岩波書店(2016/10発売)
  • ポイント 7pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004311249

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内容説明

うっかり足をすべらせたら,すぐさまどん底の生活にまで転げ落ちてしまう.今の日本は,「すべり台社会」になっているのではないか.そんな社会にはノーを言おう.合言葉は「反貧困」だ.その現場で活動する著者が,貧困を自己責任とする風潮を批判し,誰もが人間らしく生ることのできる社会へ向けて,希望と課題を語る.

目次

目  次
   まえがき

 第Ⅰ部 貧困問題の現場から

 第一章 ある夫婦の暮らし
   ゲストハウスの新田夫妻/貧困の中で/工場派遣で働く/ネットカフェ暮らし/生活相談に〈もやい〉へ/貧困は自己責任なのか
 第二章 すべり台社会・日本
  1 三層のセーフティネット
   雇用のセーフティネット/社会保険のセーフティネット/公的扶助のセーフティネット/すべり台社会/日本社会に広がる貧困
  2 皺寄せを受ける人々
   食うための犯罪/ 「愛する母をあやめた」理由/実家に住みながら飢える/児童虐待の原因/親と引き離される子・子と引き離される親/貧困の世代間連鎖
 第三章 貧困は自己責任なのか
  1 五重の排除
   五重の排除とは/自分自身からの排除と自殺/ 「福祉が人を殺すとき」
  2 自己責任論批判
   奥谷禮子発言/自己責任論の前提/センの貧困論/“溜め”とは何か/貧困は自己責任ではない
  3 見えない“溜め”を見る
   見えない貧困/ 「今のままでいいんスよ」/見えない“溜め”を見る/“溜め”を見ようとしない人たち
  4 貧困問題をスタートラインに
   日本に絶対的貧困はあるか/貧困を認めたがらない政府/貧困問題をスタートラインに
 第Ⅱ部 「反貧困」の現場から

 第四章 「すべり台社会」に歯止めを
  1 「市民活動」「社会領域」の復権を目指す
   セーフティネットの「修繕屋」になる/最初の「ネットカフェ難民」相談/対策が打たれるまで/ホームレスはホームレスではない?/生活保護制度の下方修正?/ 「反貧困」の活動分類
  2 起点としての〈もやい〉
    「パンドラの箱」を開ける/人間関係の貧困/自己責任の内面化/申請同行と「水際作戦」/居場所作り/居場所と「反貧困」
 第五章 つながり始めた「反貧困」
  1 「貧困ビジネス」に抗して──エム・クルーユニオン
   日雇い派遣で働く/低賃金・偽装請負・違法天引き/貧困から脱却させない「貧困ビジネス」/労働運動と「反貧困」/日雇い派遣の構造
  2 互助のしくみを作る──反貧困たすけあいネットワーク
   労働と貧困/自助努力の過剰/社会保険のセーフティネットに対応する試み
  3 動き出した法律家たち
   北九州市への告発状/大阪・浜松・貝塚/法律家と「反貧困」/日弁連人権擁護大会/個別対応と社会的問題提起
  4 ナショナル・ミニマムはどこに?──最低生活費と最低賃金
    「生活扶助基準に関する検討会」/最低賃金と最低生活費/最低生活費としての生活保護基準/知らない・知らされない最低生活費/検討会と「もう一つの検討会」/ 「一年先送り」と今後の課題
 終章 強い社会をめざして──反貧困のネットワークを
   新田さんの願い/炭鉱のカナリア/強い社会を/人々と社会の免疫力/反貧困のネットワークを/貧困問題をスタートラインに
   あとがき
   本書に登場した団体連絡先一覧(順不同)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

kaizen@名古屋de朝活読書会

163
格差社会ではなく、滑り台社会というのが言い得ているような気がする。 昨日まで、大企業で威張っていた人が、企業の選択の誤りによって、失業手当を受けることになる。 そういう滑り台が、世の中のあちこちにある。 運よくすべりおちなかったか、運悪くすべりおちてしまったか、 その差が一番おおきいのかもしれない。 現代社会の一面を、するどく描写しているよう。岩波新書百一覧掲載http://bit.ly/10CJ7MZ2013/06/27

ずっきん

83
貧困問題の可視化と、社会システムでの救済を目指すという主張の論理性とそのわかりやすさ、非常に優れた良書である。十年以上前の著作なため、その後の検証などは必要だが、今でも日本の貧困問題について語る時の土台になるというのも納得。「衣食足りて礼節を知る」「貧すれば鈍する」の言葉の意味を、背景を、読書人ならではの想像力を最大限に駆使して感じ取れ。著者の活動は、頭の片隅でずっと私自身のセーフティネットだ。行政すべてを批判するものではない。だが、私を大きく支えてくれているのは、著者のような人々の存在なのは確かである。2020/11/30

s-kozy

67
日本のセーフティーネットは三段階。①雇用のネット、②社会保険のネット、③公的扶助(生活保護)のネット。雇用状態が不安定だと①から溢れると②にも落とし穴があり、「自助努力の過剰」状態では申請できる当然の権利も行使できなくなり、「最低限度の生活」が営めなくなってしまう。それがこの国の「すべり台社会」。この本の発行は2008年。しかし、非正規雇用の割合の多さはむしろこの10年で悪化している。我々は、私はこの10年で何を選択して来たのだろうか?暗澹たる思いにさせられる。良書。2018/02/19

佐島楓

63
読んでいて無力感ばかり覚えた。このような貧困状態に誰しも簡単に陥る可能性がある国となってしまった日本。状況は改善されるどころか悪化しているように思う。もう自己責任とばかり言えない世の中になっているし、社会システムを何とかしないといけない。でも政治や行政は力になってくれないというジレンマ。2016/02/22

kinkin

58
貧困の背景はなにか、政府の取り組み、人々が貧困問題についてどのように立ち向かうかということを言及した本。現在の日本は一度転んだらどん底まですべり落ちてしまう「すべり台社会」であると書かれている。すべり台の角度も急になり、すべりやすいうえに、上るための階段さえ取り払われる状況になりつつあること。まじめに働いてさえいれば、そこそこ生活出来た時代はなくなって、自己責任という言葉だけが一人歩きしているように思う。貧困を全く無くすことは無理にしても、まずはもうワンランク上の生活が出来ることを目指すべきと感じた。2014/10/14

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