内容説明
転職二十回。十四歳で留学したアメリカでは奴隷に売られ、日本では相場師から首相までを経験した高橋是清。昭和初期の金融恐慌を鎮めるなど蔵相七回をつとめた不世出の政治家は、後に二・二六事件に倒れる。労苦と挫折を糧に卓越した人間観と金融政策で日本の危機を何度も乗りきった男は何を優先し、どう決断したか。渾身の力作評伝。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まつうら
37
高橋是清の功績を初めて知ったのは、幸田真音「天祐なり」を読んだとき。それ以来久しぶりに、是清の活躍を堪能した。クライマックスは何といっても日露戦争の戦費調達。流暢な英語はもちろん、楽天的で誠実な人柄が欧米の銀行筋や富裕層から信頼を集めたからこそできたことだ。しかしその一方で、日本政府の場当たり的な資金調達がとても目にあまる。講和会議の席に着きながら、もっと戦費が必要だと言ってくるのには呆れてしまった。あと、戦後処理で軍を前線から引き揚げるカネがないとか、ちょっとセンスがないにもほどがある! 恥を知れ!!2022/07/03
西
24
『子供の時から今まで、どんなつまらない仕事をあてがわれた時にも、その仕事を本位として決して自分に重きを置かなかった。だから世間に対し、人に対し、あるいは仕事に対しても、いまだに一度も不平を抱いた事がない』これが自分に一番欠けてるところだなと思い至る。自分本位だから不満が出てしまう。与えられた場所で精一杯頑張ること。自惚れない事。軍部を恐れず日本の為を思って最後まで勤めた凄い人。もっと知られていい人だと思う。ただ、箇条書きの文書を読まされている感じで、小説とかの方が自分にはあったのかなぁとも2021/04/19
hiyu
7
タイトルの通り高橋是清のその生涯を記している。そうとう激動な人生の中で自らそれを切り開いていく様は本当に尊敬する。ただ、なぜそうできたのかの心理面がもう少し明らかになるとより納得が増すような気もする。所々抜けていると感じるところも同様に感じるものではある。2022/07/08
yasu7777
3
★★★☆☆ 渋谷3037-3702021/08/27
海坊主
2
私生児として生まれ、幼少期に米国に渡り奴隷生活を余儀なくされるが、持ち前の楽観と幸運で帰国。 有り余るエネルギーを放蕩で消費するが株屋、翻訳、鉱山経営を経て中央政界に担ぎ出される。 最後は2.26事件で凶弾に倒れるがその生涯、人柄はとても魅力的なものだった。 この物語では余り触れられていないが、同時代の浜口雄幸(総理)、井上準之助(大蔵大臣)もテロリスト に狙われ命を落としている。この3人が軍備縮小、軍事費削減を気魄をもって取り組んでいた事に敬意を表す。良書なり。2023/08/04