内容説明
学力低下や教養教育の欠如など、高等教育の崩壊状況を徹底検証した「知的亡国論」。
日本の教育制度の欠陥を、東京大学や文部科学省の歴史に求めながら、日本を知的亡国の淵からいかにして救うかを論じた「東大法学部卒は教養がない」など四本の東大論。これらはのちに著者の代表作『天皇と東大』へつながる。
体験にもとづいた「立花臨時講師が見た東大生」。
現代における教養とはなにか、その教養をどのようにして獲得すればいいのかを論じた「現代の教養-エピステーメーとテクネー」。
四部にわたって構成された「知の巨人」による教育・教養論。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
masabi
18
大学教育が教養は軽視した専門バカやその他バカを量産する結果となっているが、それでは知的に破産してしまう。今から破滅を防ぐには学制を少人数教育にすること、大学は卒業を難しくすること、など至って正論である。文系知識と理科系知識を統合したゼネラリストが実社会でも活躍できる。2015/01/02
猫丸
15
旧制高校が廃された後、教養教育は学部前期課程が担うことになった。文理問わずデカンショを論じ代数学に苦しめられたかつての一高生の後裔が現在駒場キャンパスを闊歩する学生である。そこに知の地崩れが起こったことは間違いない。それでも東大教養学部は学部入学者全員が属する建前を堅持しており、総合的知(culture)を標榜する駒場を「東C(とんシー)」と呼ぶ伝統は辛うじて生きている。21世紀を待たずに教養部を解体した多くの大学には無い美点の一つとして数えられるだろう。それがほんとうに機能しているならば。2019/12/20
あび
10
知識を頭に叩き込む作業に特化するのみで、新たに創造したり、自分で考えるということが下手になっているという話。2017/03/31
miyatatsu
9
東京大学にかかわらず、昔に比べて日本人が勉強をしなくなったのは自明の理であるし、ちょっと蛇足だと思える点がちょっと多い印象です。 勉強すればどのようなメリットがあるのかとかその人にとっての明確で達成可能な目標があれば勉強するんでしょうけど・・・2018/09/18
yuji
7
この年になって教養のないことが恥ずかしいとよくわかる。若いときはすぐに役立つ実学に目がいきがちだが、そんなものはすぐに陳腐化する。百科事典の話が出てきたが佐藤優「知の操縦法」でも編纂時点の知識の総合体系を記録する事に価値があり、ロシアでは国家の責務と考えているとある。本来、教育はいつでも受けられるはずだし、知的欲求の需要は尽ない。にもかかわらず、日本の大学はその時代に必要な人材を社会に供給できていない。知の拡大している現在において限られた時間でいかに効率的に水準を高めることが重要にもかかわらず。2019/11/10