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内容説明
雑誌『旅』の名編集長として知られた岡田喜秋氏が、全国の有名無名(当時)の山村を訪ね歩いた紀行文32編を収録。
好評のヤマケイ文庫『定本 日本の秘境』『旅に出る日』に次ぐ、文庫化第3弾。
第一部 山村の組曲 秩父、阿武隈山地、栗山郷、足和田、奥只見ほか。
第二部 アルプスの見える村 日本アルプス山麓の各所
第三部 推理する山旅 祖谷渓、秋葉街道筋、白神ほか。
1974年(昭和49)に河出書房新社より刊行した単行本の文庫化です。
底本は、1981年(昭和54)刊行の河出文庫版。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
63
現下の外出自粛の状況に鑑み、敢えて旅の本を書庫から選んできた。歴史や、あるいは歴史にならない人々の生活や足跡が残っているはずの山村の道。時に敢えて道なき道を選ぶ著者の姿勢に共感。紀行文というと、何と言ってもイザベラ・バードである。彼女は往時の日本人の生活の中に深く立ち入っていく。2020/05/26
HANA
48
日本のそこかしこに点在する山里。本書は山里をひたすら歩いた記憶である。主に日本アルプス周辺が主となっているが、それでも東北や四国等その足跡は幅広い。読んでいる最中思ったのは、どんな村にもそこに住んで暮らした人の記憶が沈み込んでいるという事。平家の落人伝説等だけではなく、そこに暮らしていた人の記憶みたいなものが文脈のそこかしこから感じられるようであった。本書が書かれたのは半世紀の昔、今現在山村を歩く本が書かれたらどうなるんだろうなあ。ともあれ晴れた日に野や山をそこはかとなく歩きたくなる、そんな一冊でした。2016/05/27
Akihiro Nishio
22
Amazonのメールで紀行文学の名作と紹介されていたので購入。山村を歩くというタイトルだが、筆者は登山やハイキング畑の人で、宮本常一的な著作を求めていた自分としては期待はずれ。風景の描写に優れ、特に山を語る時には熱がこもる。自分には、どうして山を様々な角度から見て、こうも惚れ惚れできるのかさっぱりわからない。ロマンチックな風景描写に、歴史的な出来事も重ね合わせて、それなりに読ませるが、やはり宮本と比較すると物足りなく感じる。ジャンルが違うとはわかってはいるのだが。登山家がロマンチストだということを知った。2017/09/05
やいっち
9
期せずして、我が母校の先輩の本を相次いで読んできた。一冊は本書であり、もう一冊は藤井一至著の「大地の五億年 せめぎあう土と生き物たち」である。特に藤井氏は富山県の人。それはともかく、母校のある仙台の街に新旧こうした尊敬すべき人がいることに感激。岡田喜秋氏は、東京の下町生まれだが、山に惹かれて高校も旧制の松本高校を選んだとか。山間の忘れられた、あるいは消えていった村々やあるかなきかの山道、峠道を歩いて回った。 2016/05/23
sashi_mono
8
『定本 日本の秘境』の続編ともいうべき、昭和40年代の山村を訪ね歩いた紀行文集。高度経済成長の道路開発と観光化により各地に人波が押し寄せる時世下にあって、著者は往時のすがたを求めて人影少ない山里へと足をむける。家屋の建築様式に平家の落人伝説を嗅ぎ、日本人の心性にふれる唱歌「ふるさと」の実景を突きとめ、馬子が往来した街道の挽歌に耳をそばだてる。本を開くと、旅情にさそわれ、人知れない山里へとふらりと出掛けたくなった。2018/01/24