内容説明
愛情など、断じて求めない、はずだった
体外受精で生まれた温は、出生の秘密を自らの手で明かそうと決意するのだが……。近未来を舞台に血脈を超えた人間の絆を描く傑作
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
84
ねっとりとした重い空気が漂っていました。両性具有、ホモセクシャル、性一性障害などが複雑に絡み合って生まれる世界は混沌そのものでした。男が女で女が男という突飛な設定が性別を超えた近未来を感じます。性別の曖昧さや性表現の自由さが強く、透明感のある幻想的な世界観は感じられません。ドロドロしたものを全て閉じ込めた閉塞的な息苦しさがあります。それでもこの空気に何処か清涼感を感じずにはいられません。2015/10/17
巨峰
65
近未来SF的ジェンダー小説。生殖医療の進展により自らの性別意識に混乱を生じる人たち。自分の性に違和感を覚えている人には響くかもしれない。残念ながら?あまり響くところは無かったので、表面上をなぞるように読了してしまった。2016/09/22
coco夏ko10角
29
正直よくわからなかった、相関図は多分描けてる…と思うんだけど…。何が分かってないんだろう…。表面しか見えてないんだろうな。2016/07/21
エドワード
24
親子、夫婦、恋愛、性行為、生殖。それぞれが全く無関係に行われてよいことを自由と呼ぶならば、究極の自由な世界を描いた作品といえよう。そこは私たちの住む日本のパラレルワールド。裕福な医師の家庭に暮らす姉弟、父母、祖母、叔母。謎の獣医師。みな美しく聡明だ。しかし己の欲するがままに行動する自由があることと幸福感ともまた無関係である。壁があるから人は壁を乗り越える喜びを得る。ABITAS-C1という若き新人類たち。萩尾望都や竹宮恵子の漫画を彷彿とさせる懐かしさ。またまたSF漫画の世界に入り込んでしまったよ。2016/01/10
*蜜柑*
23
夏休み真近のある日、ハルはルビという不思議な少年と出逢う。ルビが現れたその日から、ハルの不可思議なサマーキャンプがはじまる…。近未来を舞台に進化した生殖医療、性別から派生する不自由に鋭いメスをいれた物語。舞台は未来だが、何処かノスタルジーな世界。氷が浮かぶメロンネクターに、真夏の雪が舞う処理施設。重いテーマを扱うのに、読後思い浮かぶのは、美しいと感じた瞬間ばかりだ。理不尽な境遇が似合う主人公。あまりに可哀想で手を差し伸べたくなる。ハルと辰の抱える空洞(うろ)が、いつの日か満たされますように。2013/08/13