内容説明
犯罪歴のある患者を収容するビーチウェイ重警備精神科医療施設は、不穏な空気に覆われていた。ヴィクトリア朝時代に救貧院だったここには、かつて残忍に患者を支配した寮母の亡霊が出没するという噂があった。そこへある夜、不意の停電とともに、自傷行為の絶えなかった患者が死亡したことから、施設の危うい日常は崩れ去る。患者ばかりか職員までもが亡霊の噂に怯え、何かを目撃したと言い出すものまでが現われたのだ。単なる妄想か、超常現象なのか、あるいは? 上級職員のA・Jは、最近退院したばかりの、ある患者が舞い戻り関与しているのではないかと疑うが、上層部を気にする院長のメラニーは事態への対応を渋る。悩んだ末にA・Jは、独断で警察のキャフェリー警部に相談するが……アメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)最優秀長篇賞に輝いた『喪失』に続き、サスペンスの新女王たる実力を見せつける話題作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
紅はこべ
89
重警備精神科医療施設で起こる謎の事件をメインに、キャフェリー警部の重荷になっているモデル失踪事件をサイドストーリーにして進む。巧みなミスリードでした。早川書房にありがちなシリーズ途中からの紹介なんだけど、どうせなら全作訳してね。フリーは無傷で切り抜けられるのか。ところでA.J.の本名って何?2016/08/15
starbro
87
「喪失」に続いてモー・ヘイダー2作目です。ミステリというよりもホラーに近い感じです。タイトルは人形(ひとがた)というよりも、呪い人形(にんぎょう)の方が的確ではないでしょうか?いずれにしてもこんな精神病院には入院したくないですね(笑)2016/03/04
のぶ
69
とても完成度の高い作品だった。精神科医療施設で幽霊が出没するという噂に加え、発生する殺人事件。日頃、翻訳小説は登場人物を覚えるのに苦労するが、本作はキャラクターが明確に色分けされていて、とても分かりやすい。閉鎖された舞台ながら内容はバリエーションに富んでいて、とても面白い。プロットがよく練られているせいだと思う。最後まで先の読めないミステリーに、サスペンスやホラーの要素も含まれて、エンタメ小説として一級品だった。2016/05/04
ひめ
37
いくつもの物語が同時進行していて、「あなたは誰?」状態。ペニーってもうおばあさんだと思ってた。まだ若かったのね。そうなると、ペイシェンスもおばあさんではないの?ま、いっか。読んでいて、痛く感じる本でした。イタイではなく、痛点が刺激されるというか・・・。どうなるかと悲惨なかんじでしたが、最後はさわやかな気持ちになりました。アイザックが気の毒でした。2016/05/08
わたなべよしお
34
いやぁ、やっぱりさすがですね。モー・ヘイダー。堪能いたしました。「喪失」を読んでから、何年もたってしまったので、もうこの人の作品は邦訳されないのかと半分、あきらめていましたが、やっぱり面白い。今回の話は犯罪を犯した精神障害者たちの施設が舞台。ホラーっぽくて、陰惨で陰鬱だが、最後に人と人のつながり、情愛を感じさせてくれて、悲惨な中にも、ちょっと温かい気持ちにさせてくれる。だから、読後感がいい。もっと、読みたいですね、ヘイダーの作品。2016/02/16