内容説明
失業中の学芸員のわたしに、金沢のホテルの仕事が舞い込んだ。伝説的女優にして作家の曾根繭子が最後の時を過ごし、自殺した場所。彼女のパトロンだったホテルの創業者は、繭子にまつわる膨大なコレクションを遺していた。その整理を進めるわたしは、彼の歪んだ情熱に狂気じみたものを感じていく。やがて起こる数々の怪異。繭子の呪い? それとも……。ひたひたと忍び寄る恐怖に次第に侵食されていく日常。絡み合う謎の正体は?! ドラマチックな長編ホラー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ダイ@2019.11.2~一時休止
109
遺品の公開準備作業中に起こる奇妙な出来事。ホラーだからいいのかもしれませんがそのオチでつじつまはあってるのという疑問も・・・。2016/09/24
HANA
62
ホテルの経営者が収集した亡くなった女優のコレクション。学芸員の主人公はそれの整理をするためにホテルに泊まり込むのだが…。派手な怖さは無いものの、深々と恐怖が積み重なり深度を増していくタイプのホラー小説。序盤からあった違和感みたいなものが、遺品の整理を進めるに従って徐々にその怪異が明らかになっていくという構造は非常に好みに合う。そしてラストで明らかになる事実とカタストロフィという形で爆発するのもまた良し。瀟洒なホテルは『シャイニング』を鬱々とした内面は『キャリー』を思い出すなあ。隠れた良き一冊でした。2024/02/27
きりこ
38
この作品は遺品を整理しながら亡くなった人を忍ぶしみじみ切ない小説なのだと思い込んでいました。多分光文社文庫の表紙のイメージからでしょう。図書館で受け取ったのは全く違うおどろおどろしい表紙。所蔵されていたのは角川ホラー文庫の方でした。ホラー苦手!でも予約待ちした本なので、最後まで読みました。学芸員の仕事について詳しく書かれているので興味深く読みました。次々不可解な事件が起こりますが、きっと何かトリックがあるんじゃないかなと心の中でホラーを否定している。でも後半に入ると疑いようのないホラーの世界。続く→ 2013/11/16
あたびー
30
往年の女優にして作家の曽根繭子の遺品の整理と展示室の企画を依頼されて、繭子のパトロンであった大林一郎が設立したレトロな洋館ホテルへ向かった「わたし」。パトロンが集めた繭子関連品のコレクションは常軌を逸するものだった。やがて次々と奇怪な事件が起き始める。ホラーでありミステリーであり、ラストは息をもつかせぬスペクタクルに落ち込んでいく迫力。そして迎えられた静謐なエンディングにホッと一息。2024/02/15
星落秋風五丈原
18
「閉ざされた夏」に登場した美術館に勤めていたという設定の主人公が登場。また舞台は葉崎なので、「ヴィラ・マグノリア」とも通じる。金沢市郊外、銀鱗荘に眠っていた今は亡き女優・曾根繭子にまつわるコレクション。その公開作業が進められる中、明らかになったのは、コレクションを収集した大林一郎の繭子への異様なまでの執着。繭子の使った割箸、下着など。やがてホテルには繭子が書き残した戯曲を実演するかのような奇怪な出来事が次々と起こる。それは確実に終幕に向かってゆく。書き下ろし長編ホラー。2003/10/12