内容説明
九鬼原の美しき妻・知也の背に浮かび上がった30半ばの脂ぎった男の顔。それはかつて、知也に求愛していた千田君平のものだった。千田は、何者かに襲われ命を落とし、その後、知也の背中にとりついたのである。なんとか千田を成仏させようとする九鬼原だったが――。表題作ほか「鯛の顔」「うるさ方」「覗く」「生ける死者」「夜の番所」「からくり進之丞」「蜃気楼」「僕の世界」「元服宣言」「戦さ人」を収録。藩のため、家のため、剣のためすべてを失った下級武士たちの姿を悲哀とユーモアで綴った時代小説怪異譚。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たーくん
9
市図→→九鬼原の美しき妻・知也の背に浮かび上がった三十半ばの脂肪ぎった男の顔。それはかつて、知也に求愛していた千田君平のものだった。千田は、何者かに襲われ命を落とし、その後、知也の背中にとりついたのである。なんとか千田を成仏させようとする九鬼原だったが―(「妻の背中の男」より)。藩のため、家のため、剣のためすべてを失った下級武士たちの姿を悲哀とユーモアで綴った時代小説怪異譚。 2019/04/13
へいぞー
3
表題作の「妻の背中の男」、そして「うるさ方」が決着しないものの面白く読めました。逆に「僕の世界」、「戦さ人」はモヤモヤが残ってしまい不完全燃焼。今の世の中がベストかどうかは別として、武士の世よりは生きやすいかもしれませんね。2019/03/17
ベック
2
「戦さ人」に登場する90を超えたかつての剣術指南の老人には笑った。歳をとりすぎて、ところかまわず眠ってしまうのだ。これではまるで吉本新喜劇ではないか。「うるさ方」に登場する厳格で口うるさい叔父の幽霊もおもしろい。表題作である「妻の背中の男」も怪異自体は空恐ろしいものだが、そこはかとなく漂うユーモアが秀逸だった。変わって掌編になるとこれはもう独壇場とでもいうべきもので特に「夜の番所」と「蜃気楼」のニ作品は不条理が微妙にズレた論理感でもって描かれおり、これは埋もれさせておくには惜しい作品だと思ってしまった。2008/03/23
kuroro
2
不思議で怪しい時代短編集。ホラーというよりは怪談と言いたい、どこか懐かしい不思議な話。2016/09/19
HARU3
0
怪しげな時代小説がユーモアを添えて語られる。宮部みゆきの解説に釣られて手に取った。★★★☆☆2012/02/06