内容説明
フランス革命以降、政情不安な状態が続いているヨーロッパ。北欧の国で結婚式を挙げたばかりの王子が離宮で殺された。その直後、忽然と姿を消した王子の侍女に疑いの目が向けられるが……。離宮近くに住む少年ハンスは、海の国から来た人魚の姫と出会う。彼は、そのセレナと名乗る少女の願いを聞き、旅の途中だという風変わりな青年グリムとともに、王子殺害の真犯人を追う![解説:辻真先]
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
徒花
156
画家のグリムと少年アンデルセンが人魚姫に出会って王子様殺害の謎を追うファンタジーミステリー……かと思いきや、案外歴史ロマンスだったりする。よくよく考えればディズニーの『リトル・マーメイド』もお姉さんがいっぱいいたなぁなどと思いだしたり。ともかく、ちょっとどこかずれてる人魚のセレナのキャラクターがかわよい。ちなみにトリックは物理で、ちょっと懐かしい感じ。実現可能性を問答するのはナンセンス。ただし、それでも細かい分で甘いところがあるし、ハッピーエンドだけどちょっと物足りなさを感じる一作。2016/02/17
geshi
37
現実のヨーロッパ史とメルヘンとが同居する一風変わった世界観。人魚姫が魔女の力で地上に来ているのに、ミステリにファンタジー要素を入れず、事件の推理に関してはあくまでリアル路線。容疑者の動機を挙げ、アリバイを検証し、犯罪の不可能性をディスカッションするガチガチの本格志向。トリックはさすが物理の北川らしい大掛かりかつ伏線を張ったものではあるが、そこはあくまで前振り。本当の真相が明らかになる瞬間のファンタジーがリアルへと繋がるサプライズにやられた。ラストに語られるとある人物名に、そこへ持っていくかと感心。2017/05/04
るぴん
36
北山猛邦さん初読み。人魚姫が海の泡となって消えた2日後、王子が何者かに殺害された。人魚姫の姉・セレナと偶然出会ったアンデルセン少年と旅の画家・グリムは、王子殺害事件の謎を追う。ファンタジーとミステリーと歴史が上手い具合に融合していて、面白い。最後に明かされるいくつかの真実は、童話の人魚姫と同様に切ないものだったけれど、物理トリックはしっかりと納得できるものだったし、こういう色んなジャンルのミックス作品、結構好きかも。2018/10/11
ヒロユキ
29
幻想的な世界観にこれでもかというくらいコテコテの物理トリックとらしさ満載の北山作品。この作品では物理トリックに目新しさは覚えないが、幕間を上手く挟み童話と史実を絶妙に繋げています。セレナと妹のことを想えばなかなかに残酷な終劇。それだけに最後の二人の表情は読み手側への救いとなっています。2016/02/06
しゅてふぁん
28
デンマークのオーデンセに住むハンス・アンデルセンがドイツ人の旅人で画家のグリムと、自分は人魚だというセレナと共に、王子殺害の真相を追う。これは面白いに違いない!と期待しながら読んだ。人魚姫ってどんな話だっけ?と童話を確認ながら(笑)『人魚姫』と絡めてあるので、殺人事件が解決しても、そこで話が終わらないところがよかった。面白かった!2017/02/17